25.仕事仲間は大切に
「ん・・・・・???」
携帯の振動で春は目を覚ます。携帯を開くとそこには大量の不在着信。
「あ、そういえば仕事中でした・・・・・。」
なかなかに書類の寝心地は悪くなかった。新しい紙のにおいというか、囲まれている安心感というか。
ベットで寝ているのとはまた違った良さがある。新しい発見に満足げに頷く春だった。
「さあて、仕事しましょうかね(させましょうかね)。」
どうやら数時間寝てしまっているようだ。このままでは給金分働けないため、春は自分の仕事に着手し始めた。
折り返しで不在着信の相手に掛ける。
プルルルル・・・・・プルr
「春さんっすか!?何すか!?あのメールは!?」
キーン。
出たと思ったら突然のハウリング。あまりのうるささに耳がやられてしまった。耳を押さえてしばらく耳の機能が回復するのを待つ。春の顔は苦い状態でキープされていた。
「・・・うるさいですよ。蜂賀。あと、あまり電話は好きじゃないのでかけてこないでください。」
「ちょちょちょ!!そんなのひどくないすか!?連絡してきたのそっちしょ!!しかもいきなり来いだなんて!!!俺だって仕事あるんすけど!?」
電話の相手は蜂賀 柚子。彼氏にしたいでしょう!ランキングでここ数年5位以内にランクインし続けている。内容としては、テレビで見るように毎日笑かしてくれそう。気遣いができる。顔がいい。などである。
かつて春のところで世話になった経験がある。栗毛に色素の薄い灰色の瞳をもつ23歳である。
「仕事といっても、目黒区でしょ??あがるのは・・・・まあ15時といったところでしょうか?」
「え!?なんで知ってるんすか!?どこに行くか決まったのは今日なんすけど??しかもあがる時間あってるし!!」
「逆に何で知らないと思ったんですか?私が来いと言っているのに。」
そう。実は春は、毎日人の流れは把握している。今日はたまたま彼の動きを把握していたので選出されてしまったが、探せば他にも適任はいただろう。有名であればあるほど、幸か不幸かSNSを用いればすぐにわかるので春に呼ばれやすいのだ。
といってもSNSで拾いきれない情報もあるのでそこは独自の情報網を構築している彼の恐ろしいところ。
「うううう!!!無駄にできる人ってこれだから困るんすよね!!!もう!!脅し付きできましたけど!俺行きませんっすよ?いくら恩があるとはいえ、良い予感がしねえですし、これを許してしまったらこれからもこき使われる運命が目に見えてるっすから!!これで俺が悪いとかしないでくださいっすよ?まあ、とにかく、絶対に行きま「鶴飼。」せっ・・・・・」
「呼んでるんで、まあ、蜂賀がいなくても大丈夫ですけどね。・・・しかし、そんなことを言う大人になってしまったのはちょっと残念です。」
春は蜂賀の言葉を遮るように発言をした。信頼していたのに・・・・。悲しいです。そんな感情を前面にのせて。
「私もさすがに傷つきました。まあ、私もそんな嫌がる人を呼ぶほど非人道的な人にはなりたくないのでいいですけど。では今回は縁がなかったということで・・・。」
鶴飼 棗。彼女は春の神社でアルバイトしている18歳だ。学校を卒業し、自分の夢のためにお金をためている真っ最中である。それゆえにお金をあげれば働いてくれる。
・・・・ここまでくると春経由ではなく、直接雇ったほうがよいのでは?と思うのが、まあ、一般の人が急に大手企業に勤めることの難しさがあるということで。
そしてここで何より大切なのが、
「あ、あの?春さん???あの??棗さんくるんすか?え??ほんとすか??」
「はいそうですけど・・・・??どうかしましたか??」
「・・・・わかっていってますっすね・・・・。」
「え?何か言いましたか?」
「・・・・ああああもう!!!行きます!!・・・・行かせてください!!!」
鶴飼が蜂賀の初恋の相手であるということだ。
メールでこの場所の詳細を彼に送り、受付に2人ほどこの後来ますと伝え、春はもう一度眠りにつくことにする。
「ふわあああ。はあ。彼ももう抵抗をやめてくれると助かるんですけどねえ。」
今までで、春が招集をかけて、彼が断われたことなどないというのに。しかも今回に限っては彼の恋路の支援も行っている。彼女はお金がもらえてウハウハだし。ほんとにお互いにいいことしかない。
「こんなに優しいなんて、私は仏様でしょうか。いい仕事をしました。こんなに働いたのですから自分に1つご褒美をあげても文句は言われないでしょう。」
そういってもう一度、資料の山に身を預けるのであった。
実際の仕事は1mmも進んでいない。
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ジェリーの両親が経営する「ピクニックカンパニー」初日の勤務は無事に終了した。
春はほとんど働かず、呼んだ2人によって部屋にあった資料のうち10分の1くらいが終了した。
ロロのほうは彼の慧眼により大体の方向性が決まり、5種類くらいに絞ることができたそうだ。
彼らのおかげでだいぶ仕事は進んだ。
だが新しい人員を育てるには人もお金も全然足りない。この期間中にできる限りの仕事は進めてもらいたい。そういってこの日の勤務は終了した。
ロロや春の周囲の人の心を代償に効率を得ることができたのだ。
「でさあ。ぼくちんすごく頑張っちゃったよお~(*ノω・*)テヘ。皆終わったときにはうれし泣き?しててさあ。ぼくちん才能がありすぎるのかなあ。」
ロロは地下室で2人相手に報告会を行っていた。報告会に出席しているメンバーはパール君とみけさんです。
『・・・・お前・・・都合のいいところしか話してねえだろ。ほんとにそれは嬉し泣きだったか???』
「うまい・・・・・!!これ・・・他の・・・あるのぜ???」
嬉しそうに自分の武勇伝を語るロロとその背景に何かがあったのだと察知するパール。
ロロの膝の上に寝そべって、今日の報酬としてもらってきたトマトにむしゃぶりつく三角耳の獣。
新たな住人も馴染んできたようで、住処一帯が力を持ち始めていることに気づくものはまだいない。
羅劫が住み着くという希少性を知っているのは住人とその数人の友達のみである。




