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ラクガガク  作者: 徳丸
第2章 宗教
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26.ピクニックカンパニー内での出来事

今回は蓼科さん視点!

ここは「ピクニックカンパニー」の1階。食堂や共同で使える銭湯、ランドリー、デスクワークスペースが完備されている。


その食堂の一角に愚痴をこぼす青年がいた。


「くそっ。最悪だ。この1週間ろくなことがなかった。僕の何が悪いんだ?」


蓼科 勘次郎。御年23歳。大手企業の研究員として働いている彼は全体的に見ても勝ち組だ。平凡な顔立ちながら、身だしなみには気を配っており、清潔感のある青年といった感じだ。平均に1センチ届かない身長ながら、平均より座高が1㎝低いことが唯一の自慢である。


「本当にひどかった。特に今日は何だ!?トイレに入れば閉めたはずのカギは締めきれてなくて?掃除のおばちゃんとご対面だよ!!将来の嫁さん以外見せるつもりはなかったのに!!ふざけんなよ。わかんだろ。ドアは閉まってんだからノックしろよ!!!」


平均から1cm低い体を縮こませて、トレーの両脇に拳を叩きつけながらぶつぶつ言う。


同じテーブルに座ろうとしていた人たちは用事を思い出した!といった素振りをして、さり気なくそのテーブルから離れていく。



「しかも?僕のおろしたての新しいkomverceの靴に?”やっちゃった☆”じゃねえよ。酢酸こぼしやがってえ。弁償しろよ!限定ものだぞ!?なんで呆然としてるうちに居なくなってんだよ!”☆”つけてさあ。かわいいと思ってんの?いい年してる時点で可愛くないんだよ!!!」


「で?食堂に向かってルンルンで歩いてたら?ちょっと苦手だなあ。合わなそうだなあと思ってた別の課の同期の奴にぶつかって、”よう!久しぶり!元気だったか?”って言われるしい??わざわざ話しかけんじゃねえよ!元気だよ。って答えてから話す内容なんてないから気まずい空気ができただろうが!しかも行くとこ同じだし。お前も1食500円の日替わりランチ食ってんの(嬉)!?と思ったら、愛妻弁当を友達と食堂で食う?ふざけるなよ!友達いなくて、食うところに困れよ!?一人悲しく便所で食ってろよ!!僕はいつも一人で食堂だけどなあ!!!フハハハハ!!!」



負のオーラ徐々に強くなっているようだ。なぜだろうか。彼のいる空間がゆがんでいるように思える。内容が聞こえた社員は彼に同情の目は送るが、救おうとは、声をかけようとはしなかった。

彼は溜息を吐く。


「というかこの一週間で何が一番つらいかって・・・・。」


「「知り合いが最悪だ」」


自分一人の声ではない。ハッと日替わりランチのプレートから視線をあげる。自分の座るテーブルの3席隣、向かい合わせの席にいる男性と目が合う。


どんよりとした雰囲気だったため気づかなかったが、彼のことはどこかで見たことがある。そう。どこかで・・・・・。


「あ、TV出てる人だ。」


TVで見るのとはあまりにも違う様子から気が付くことができなかった。キラキラしたアイドルでありながら、不幸からねぎを背負ったカモ程度にしか思われていない男、蜂賀 棗。その人である。


「あ、普通な人だ。」


そう、彼に言われたとき、本来であれば怒る部分であるのだろうが、なぜが自分と同じものを感じてしまい、怒るに怒れなかった。


彼の声にはなぜか安堵すら混ざっているように感じた。


そもそもなぜ有名人である彼が騒がれもせず、こんなところで1人ご飯を食べているのか。並々ならぬ理由があるのだろう。



「あの・・・・・。もしかして、あなたも何か悩んでいらっしゃる・・・??」



蓼科が問いかける。

有名人の彼は世間の女の子を虜にする声で返事をした。


「ええ。知り合いに弱みを握られましてね・・・・。本人は悠々自適に過ごしていますよ。それで、給料は彼の半分しかもらえない・・・。屈辱ですよ。」


ウーロン茶水割りをぐびっと呷る。


そうか。彼も。キラキラ輝いて悩みがないと思っていたが、自分と同じものを抱えていると思うと急に親近感が湧いてくる。


イケメンと陽キャ、トイレでたむろする社員は〇ね!と思っていたが彼はそのカテゴリーから外すことにする。


「ははは。そうなんですか。売れっ子のあなたでも、上司に恵まれないことがあるんですね。僕もです。仕事はできるんですが、一言多いんです。しかも自分も思っていたことで、的確な部分をついてくるから言い返せない。向こうは言いたいことは言っているからストレスは溜まらない。僕は溜まる・・・・。いいことなしです。」


「売れっ子であろうがそうでなかろうが、運ってやつは関係ないですよ。俺の場合、彼にあったのが幸運でもあるけど運の尽きでもあった。そういうことです。でも、働いてくれるだけいいじゃないですか。」


売れっ子と普通のため息が被る。


「そんなそんな。元々働けていはいたんです。自由があるっていいじゃないですか。上司が働くから部下はもっと働かされる。・・・・つらいですよ。むしろそっちの上司のほうがうらやましいです。」


またまた売れっ子平凡のため息が被る。お互いに疲れ切った顔してんなアとついつい笑顔がこぼれてしまった。


自分だけじゃない。彼もつらいんだ。そう思うと今日1日はとりあえず頑張ろうと思えた。

もうすぐ昼休憩が終わる。


「棗さんと話せて少し気が楽になった気がします。今日はとりあえず頑張ろうって思えました。ありがとうございました。じゃあ、僕はそろそろ行きますね。」


そういって蓼科は席を立った。3席隣、向かい合わせの距離が僕と彼の存在の距離のようで少し面白かった。


「いえいえ。俺もあなたと話せてよかったです。ありがとうございます。また会えたらいいですね。」



きっと彼が有名人でなければ僕たちは親友になれる。そんな気がした。

今日は悪くない日かもしれない。



**********



「ご・・・・ごめんね☆た・・・・蓼科君が午前中に作ってくれた研究の資料のパソコンデータ・・・・消しちゃった☆」

「ふぁああああ!?」


個人的に蓼科さんみたいな人と酒を酌み交わしたい(´・v・`)b。

徳丸の推しキャラ。


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