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恋を知り、花と咲う《前題:精霊に転生するはずが、なぜかスライムでした ─泉の精霊だってオシャレがしたい─》  作者: ぺぺ
[第二節:とある山の小さな村でのこと]

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72話:花の仔に並ぶ者

 ◆


 お日さまのぽかぽかした暖かさに包まれて、アタシたちはお花畑の中で寝ちゃってたの。アタシが目を覚ました頃にはもうお日さまはお山の向こうにお顔を隠しちゃってたわ。

 ケド、まだお空は青くって、夕方になるのはもう少し先ねって思ったの。


 アタシは伸びをしてから目を擦って周りを見てみたら、サフィの後ろにオオカミの仔が一緒に寝ていたの。もう、びっくりしちゃったわ? いつの間に来たのかしら。

 きっと、シャナに会いに来たのね。

 アタシはその仔の前まで飛んでお顔を覗き込んでいたら、お耳が立って真っ赤なお目々を開いたの。


「アラ、起こしちゃった? おはよっ♪」


 鼻先に座って少し撫でてあげると、この仔はまたお目々を閉じて眠ってしまった。ケド、まだお耳や尻尾が動いているから、起きてはいると思う。きっと、まだサフィとリラがお眠りさんだから、起こさないように見守ってくれてるのね?


 サフィのお顔にイタズラをしようと思って飛んでいくと、オオカミの仔のお腹で気持ちよさそうに眠っちゃって……なんだかイタズラしちゃうのはよくないかなって思っちゃった。

 弱っちいリラも、まだサフィのお膝の上で気持ちよさそうにしていて、ちょっぴりつまらないなって思ったの。


 アタシはもう一度オオカミの仔のところに戻ってくると、頭の上に寝転がった。お耳がアタシを見つけようと動いているのがかわいかったわ。


 優しい風がずっと吹いていて、お花たちのいい匂いを運んできてくれている。遠くのお空では薄い雲がゆっくりと流れていて、あのコたちもお空の中で眠っているのかな。なんてことを思ったの。

 あんまり高く飛んじゃうと怖いから飛んでみたことはないけれど、あの雲のコたちみたいにお空まで飛んでいったらなにが見えるのかしら。

 ここからでもアタシたちのいた泉や森も見えるのかな。もっともっと遠くの街まで見えるのかな。

 そんなことを想像していたら、遠くで鳥さんがお空をぐるぐる回っているのが見えた。

 自分で飛ぶのは怖いケド、鳥さんの背中に乗せてもらったらお空を飛べるかしら。でも、同じ場所をぐるぐる回るのは飽きちゃいそう。

 それに、知らない所まで飛んで行ってしまったら、もう帰ってこられないかもしれないわ?

 サフィやリラは鳥さんに一緒に乗られないし、やっぱりダメね。


 乗るならやっぱり一緒がいいの。ひとりだけだなんてつまらないもの。


 ……そういえば、ここにもアタシのような仔はいないのかしら。ひとりくらい、居たっていいのに。どこのお花畑の中にも、アタシみたいな妖精は見えやしないの。どうしてかしら。

 精霊の仔(スレイ・ベガ)は見えるのに、アタシのような仔はどこにもいないの。

 まったくもう、みんなまだまだお仔さまね? お姉さんであるアタシがしっかり見ていてあげないと。

 とは言っても、アタシができることはなにもない。お花が傷つかないように、元気に育ってくれるように見守ることくらい。魔法で癒やしてあげることもあるけれど、そんなことは必要ないくらい、お花たちは強いコばかりだもの。


 ここのお花畑のコたちも、みんな元気にお花を咲かせて、力強く生きている。アタシも負けていられないわね? この前だってサフィとリラに慰めてもらったンだから、アタシはもう大丈夫。もしかしたらまた不安になっちゃうときがあるかもしれないケド、ふたりが一緒にいてくれるなら大丈夫だなって思うの。

 だって、アタシたちは家族なンだもの。


「アナタもそう思うでしょ?」


 アタシはオオカミの仔に声を掛けてみた。すると、オオカミの仔は鼻を鳴らして、ワケがわからないと言いたそうにお耳を動かすの。もう、失礼しちゃうわね。


「アナタもシャナが一緒なら、何があっても大丈夫だって。思うでしょ?」


 そう言うと、オオカミの仔は同意を示すように一鳴きして、尻尾を振っていた。アタシは同じ考えだと示してくれたお友だちのこの仔に、お礼に全身を使って頭の上を撫でてあげた。

 とってもふわふわしていて気持ち良かったわ。


 今日はシャナを置いてけぼりにしてきてしまったケド、シャナはひとりで寂しくしていないかしら。あのお家にはニンゲンがいるから大丈夫かしら。

 でも、家族と会えないのはやっぱり寂しいわよね。

 だから、今度はシャナも一緒にお出かけへ誘おうって思ったの。そしたらシャナは家族と会えるし、アタシたちは家族と一緒、お友だちも一緒でもっともっと幸せなはずだもの。


 今日は遊ぶことなくお昼寝しちゃったケド、今度はみんなで追いかけっこもしてみたい。それか、この仔の背中にみんなで乗って、またもっともっと遠くまでお出かけするのも良いかもしれない。この仔に連れて行ってもらえば、街へも早く着けるんじゃないかしら。

 そんなことを思ったの。


「じゃあ、そろそろお寝坊さんたちを起こさないとイケないかしら」

「ねぇねぇ、アナタはどう思う?」


 オオカミの仔に訊いてみると「くぅーん」なんて、寂しそうな声を出すものだからつい口元が綻んでしまったわ。そうよね。ホントはもっと一緒にいたいし、遊びたいわよね。

 でも、暗くなる前にお家へ帰らないとシャナも、あの子たちもアタシたちのことを心配しちゃうと思うから、帰らないとイケないの。

 アタシはサフィのほっぺたを両手でもちもちして、夢の世界から起こしてあげる。


「ほぉら! サフィ! そろそろ起きなきゃダメよ!」

「アナタたちってば、いっつもお寝坊さんなんだから! このままじゃ夜になっちゃうわよ!」


「んぅににににに……」

「起きる……起きるってばぁ……」

「ふあぁ……エフェリア……おはよう……」


 サフィはまだ寝ぼけたお顔でアタシを見つけて咲ったの。アタシはサフィのほっぺたにおはようの口付けをした。


「起きた? もう、ちゃんとしなさいよね?」

「次はリラね? ほぉら、リラも早く起きなさいな」


 アタシはサフィに続いてリラのほっぺたももちもちしてあげた。ふたりともほっぺたが柔らかくて、ついつい手を伸ばしちゃいたくなるの。


「んぅ……エフェリア……?」

「ふああ……おはよ……?」


 リラも起きたけれど、まだちょっぴりおねむなお顔ではにかんだ。まったくもう、アタシがいないとサフィも、リラもダメなンだから。いえ、ふたり揃ってダメダメね。困っちゃうわ?


 ◆


 サフィとリラも起きて、オオカミの仔もお昼寝は終わりにしたみたい。

 ケド、アタシたちはすぐにお家に帰ったワケでもなくて。


 小さな色とりどりのお花たちが一面に咲いているお花畑でサフィにリラ、オオカミの仔、それからアタシ。みんなで少し、少しだけよ? 追いかけっこをして一緒に遊んでから帰ったの。

 いつもと変わらないような、なんでもない追いかけっこだったけれど、とっても楽しかったの。だから、今度はシャナも一緒にお出かけに連れて行って上げなきゃね? だって、置いてけぼりは哀しいもの。やっぱり楽しむなら、大切なお友だちのシャナも一緒じゃないとね。そしたらオオカミの仔は大切な家族と一緒に遊べてもっともっと幸せだし、アタシたちだってもっともっと幸せになれるわ。


 そんなことを思いながら、シャナの髪の毛みたいにキレイな金色になっていくお空をサフィの頭に乗って見ていたの。

 

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