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恋を知り、花と咲う《前題:精霊に転生するはずが、なぜかスライムでした ─泉の精霊だってオシャレがしたい─》  作者: ぺぺ
[第二節:とある山の小さな村でのこと]

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70話:風を受けて

 ◆


 わたし、今とっても幸せよ。

 サフィとエフェリアと一緒にお服を編んで、お揃いのそれを着ているの。早くお出かけをして、サフィとエフェリアと新しいお服での思い出をいっぱい作りたい。

 そう考えてしまったら居ても立っても居られなくなってしまって、わたしはお部屋を飛び出したの。


「サフィ! エフェリアも! 早くお出かけに行きましょ!」


「もう! リラったら、せっかちさんなのね?」

「待ってちょうだいな。アタシも一緒に行くンだから!」


「今行くよ」


 エフェリアはわたしのお胸にワザと飛び込んでから、肩に座った。エフェリアもみんなとお揃いの、かわいいお服を着られてとても嬉しそう。

 サフィはわたしたちの元気さに呆れているのか、ちょっぴり疲れたように咲っていたわ。でも、わたしは知ってるもの。実はわたしたちよりもサフィの方が一番、お出かけを楽しみにしてるってこと。


 わたしはふたりとお出かけするのが待ちきれなくって、ステップを踏むように廊下を跳ねて、階段を降りていく。足をつける度に、お家がおかしな声を上げるのがちょっぴり面白いの。

 厨房の裏方へと駆けていって、そのままシャナとおばあちゃんに挨拶をすると、身を翻してお店の方へと抜けていく。

 

「シャナー! おばあちゃん、お出かけしてくるね!」


「えぇ?」「ちょいとお待ち――あぁもう気を付けるんだよ!」


「シャナ、おばあちゃんごめんね! 行ってくる!」


 おばあちゃんは驚いたような声を出して、そのままわたしたちを見送る。サフィもおばあちゃんに挨拶をすると、わたしたちに置いていかれないように後ろをついてくるの。追いかけっこをしてるみたいで、少し楽しくなってきちゃう。


 お店の方では大きな男の子と女の子が店番をしているのが傍目に見えた。わたしは足を止めて器用に回ると、その子たちに挨拶をしてお店を出たの。


「あ、こんにちは! お出かけに行ってくるね!」


「リラちょっと待ってって! あ、お母さんお父さん行ってきます!」


 ドタドタと騒がしくお店を出て、全身に太陽を浴びる。なんだかちょっぴり久しぶり。ずっと香っていたパンの美味しい匂いが遠のいて、涼しくてキレイな空気が身体に満ちていく。

 スカートの裾を持ち上げながら、石でできた硬い路を走っていく。


「ねぇねぇリラ? どこに行くのン? お花畑までお出かけする?」


「んー、うん! そうしよっか」

「ほぅら、サフィ! はやく捕まえて♪」


 サフィは仕方がないといった風に息を吐きながらも、わたしたちのことを追いかけて来てくれる。途中にある広場をぐるりと回ったり、木でできた柵の上を器用に跳ねながら歩いてみたり。

 泉とはまた違ったお出かけができて、とっても楽しいの。

 

 村から外れると道端には小さくて黄色いお花が咲き誇っていて、蝶々たちが楽しそうに踊っていた。エフェリアはその中に交ざって、一緒になって踊っていたわ。お顔を上げて遠くを見ると岩肌が剥き出しになった高いお山が見えて、少し寒そうだなって思ったの。

 視界が開けて野原に出ると、お牛さんやお馬さんが草花を美味しそうに食べていた。その背中では小鳥さんたちがお歌を歌っていて、お牛さんやお馬さんも尻尾を振って楽しんでいたわ。

 その姿を見ていたら、わたしも楽しくなってきてしまって、足元をよく見ていなかったの。

 

「リラ! 危ないよ!」


「サフィ? どうしたの……きゃ!」


 柵の上を跳ぶように歩いていたらサフィに呼ばれてから、振り返ろうとしたの。そうしたら足を踏み外してしまって、地面に向かって落っこちてしまったの。でも、でもね。サフィがわたしのことを捕まえてくれて、痛くならずに済んだの。

 わたしのことを両手で抱えて、大事そうに抱きしめてくれたわ。


「――ふぅ……危なかった」

「急に声をかけてごめんね。でも危ないから、柵の上は歩いちゃダメだよ」


「ふふっ、はぁい。ありがと、サフィ」


「もう、ふたりともおっちょこちょいなのね? 弱っちいリラはしっかり前をみないとダメじゃない。また泣いちゃっても知らないンだから」

 

「でもエフェリアはそう言って心配してくれるじゃない」


「ね。今だって心配で見に来てくれたんだもんね」


「……もう! もう! そんなンじゃないンだからっ!」

「家族なンだから、心配するのは当たり前じゃない。怪我なんてしたらイヤよ?」


 エフェリアはそんなことを言うけれど、わたしは照れ隠しなんだって知っているもの。だって、エフェリアはわたしたちがまだ家族じゃなかったときからあのお花畑の中で泣いていたわたしのことを気にかけてくれた、優しい仔だもの。そうじゃなかったら、わたしのことなんて放っておいたはずでしょう?


「ほら、この先は手を繋いで行こう」

「エフェリアもおいで」


 サフィはわたしのことを優しく降ろして、手を握ってくれた。サフィの手は温かくて、柔らかくて、とっても好きよ。サフィはエフェリアに手を指しだすと、エフェリアも恥ずかしそうにしながらその手を取るの。素直じゃないのね。


 ふたりと一緒にしばらく野原を歩いていると、段々と色とりどりのお花の咲き誇るお花畑になってくる。どうして村の近くにはお花のない草が多いのかしら?

 お牛さんやお馬さんが食べちゃうのかしら。きっとそうね。色々な味がして、美味しいんだと思うの。


 お花たちのいい匂いが風に乗って、わたしたちのことを迎えてくれた。お日さまの日差しがとっても温かくて、眠たくなってきてしまいそう。

 後ろを振り向くと今まで緩やかな坂道を歩いてきていたようで、村全体が下の方に見えていた。


「ねぇ見てサフィ、エフェリア。とってもキレイよ」


「まぁ、ホントね♪」


「――落ち着くね」


 サフィは全身に風を受けて、深呼吸をしていた。わたしも真似して、腕を広げて大きく息を吸ったの。澄んだ空気が身体の中いっぱいに満ちていって、とても気持ちがいい。そうしたら、思わずあくびが出てきてしまって、目尻に涙が浮かんできちゃった。


 穏やかな風がサフィの長いキレイな髪を揺らして、お花の匂いと一緒にわたしのお鼻にサフィの匂いを届けてくれる。お花畑の中に座り込んで、どこまでも広がる景色を眺めていた。

 サフィの肩に頭を預けると、お日さまがサフィの匂いを香り立たせているようだった。その匂いを嗅いでいると落ち着くの。だからかしら。余計に眠たくなって来てしまって、どうしようもなくなってしまったの。

 お膝の上に座っていたエフェリアもわたしと同じ気持ちなのか、頭を揺らして眠たそうなお顔をしていた。


 不意にサフィに抱き寄せられて、お膝の上に寝かされる。頭を撫でられてお腹を優しく叩かれるの。

 温かな日差しのお布団を被って、お日さまと、お花と、サフィのいい匂いに埋もれている。

 とっても幸せで、とっても気持ちよくて……わたしはいつの間にか眠ってしまったの。



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