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バーチャル無双  作者: ヤマト
33/40

孤島の迷宮



「な、なな、、」


ヤテンさんは口をアワアワさせる。


「も、もう、歩け……ない。」


パタッ


ルルは白目をむいてゆっくりと倒れてしまった。


「な、なな、何周目だここぉーー!!!!!!!」


俺の絶叫が迷宮に響き渡る。

迷宮の探索は始まったばかりだ。

















俺たちは気づけば、人っこひとりいそうにない、孤島にいた。


「誰かいませんかー?」


なんて声をかけて見ても、やまびこが返ってくるだけである。


「とりあえず、木の実や、何か食料になるもの、探しましょう。」


ヤテンさんの提案で、まずは食糧を探すことになった。木の実は案外とすぐに見つかって、俺たちはそれを割って身を食べ、中に入っていたミルクをごくごくと飲んだ。









「ここ、何かしら?」



しばらく歩いて探索していると、

明らかな人工物の跡を見つけた。

意匠の彫られた壁、ただの洞窟ではない。

山の麓である。


「周りに何もなかったし、とりあえず入ってみるしかないわね。」


俺たちは中に入った。











「こんにちはー、誰かいませんかー?」


「ルル!!敵が潜んでいるかも知れない。静かに。」


「はい。ごめんなさい。」


「まぁ、ともかく何か手掛かりになるものを見つけないとね。」


「手掛かり?」


「まだ確かではないけど、いきなりこんな孤島に飛ばされたってことは何か意味があるはず。条件をクリアできれば、ここを抜けて次の場所に進める。本当に不思議だわ。何ものかが意思を持って、私たちを試している気がする。何の目的かは知らないけど。」


「うーん、っていうかこれ本当に進んでる?」


「えぇ、確かに魔界へは近づいているはずよ。魔族のエネルギーが少しずつ大きく感じられているから………」


「いや、そうじゃなくってここ、さっき通らなかった?」


「へっ?」


ヤテンさんは、拍子の抜けた声を出す。


そういえば、ここさっきも見たな。


「た、確かに………」


ヤテンさんは、顎に手をあてて考え込む。


「まぁ、とりあえず進もうぜ。似てる場所ってだけで、ちゃんと前に進んでるかも知れないしな。」


「そうね。そうしましょう。」











「3周目ね。」


「まぁ、まだ分からないし。」


「そうね、もうしばらく歩いてみてから判断してもいいかも。」










「4周目…………」


「さ、流石に他の道なんてなかったし、ちゃんと進んでるわよね?」


「これ、迷ってね?」


「…………一旦戻りましょう。ちゃんと印はつけて置いたから。」


「さっすが、ヤテン!!助かったわぁ。」


「さすが、ヤテンさんだ!!!ありがとう!!!」


「えへへ、どういたしまして。」


ヤテンさんは少し照れくさそうにする。


「えーっと、確かここら辺に………」


しばらく歩いていると、ヤテンさんが冷や汗をかき出した。


「や、ヤテンさん?」


「ヤテン?」


「あ、あのー…………」


ヤテンさんは冷や汗ダラダラで振り返る。


「し、印が、と、途切れてる。」


「「え、えぇーーーーーー!!!!????」」













「おかしいわ。残しておいた魔力の残滓がここで、完全に途切れている。ここで、道が完全に来る前とは切り替わってる。やっぱりただの洞窟じゃない。」


「こ、ここ、これどうするの?」


「ちょっと、ヤテンさんとルル、ここで待っててくれ。俺は一回走って行ってくるわ。」


「ダメよ。万が一逸れたらこういう迷宮では、二度と会えなくなって、後に白骨死体で発見されることなんて、山ほどある。こういう場所では、絶対に逸れたらダメ。」


「わ、わかった。」


「とりあえず、ヤテン。これは、何か仕掛けがあるってことよね?」


「きっとそうね。」


「とはいっても、何もなくねぇか。仕掛けって言ったって、ただ何もない洞窟が続いてるだけだし。」


「そう、ね。本当に、どうすればいいのかしら?」


「壁とか壊してみる?」


ルルが好奇心を持った目で、尋ねる。


「それもダメ。崩れたら連鎖的に、それが重なって全員生き埋めなんて、シャレにならないから。とにかく、歩きながら考えましょう。」


「「はーい!」」











それからというもの、結局何も見つけることができず、俺たちは絶望していた。



「な、なな、、」


「も、もう、歩け………ない。」


パタッ


「な、なな、何周目だここぉーーー!!!!」


絶叫が孤島に響き渡る。








「ん?」


その時だった。


ヤテンさんが上を見上げる。


「ど、どうしたんですか?ヤテンさん?」


「いま、この上から音が響いていた気がする。」


「えっ!?本当!?」


ルルは目を輝かせて聞いてくる。


ヤテンさんが、杖でトントンと上の壁を叩く。


「あっ、ここだ。ちょっと、素空。悪いけど、ここ叩いて。慎重にね。」


「おりゃ。」


ドン!!ガラガラガラ


「慎重にって言ったでしょ!!!」


「だって、そんな力加減、難いんだもん。」


「でも、やっぱり、ちゃんと続いてたよ。」


上には、道があった。


よいしょ、うんとこしょと、

俺と、ヤテンさん、ルルは上っていく。



「あっ!!宝箱だ!!」


ルルは目の前に宝箱を見つけた。


「ルル!!罠かも知れないから、近づいちゃダメよ!!」


「わかってるよー。」


すこしふてくされた顔でルルは言う。


「何かここらへんの地図とか入ってるかも知れないから。俺がとってくるよ。」


「ちょっと待って、私が行くわ。」


ヤテンさんが前に出て、杖の先でひょいっと、

宝箱の中を開ける。


「何も、入ってないわね。」


「え〜、ざんねん……。」


「ちょっとワクワクしたのにな。」


「ねー。」


「まぁ、とにかくあたらしい道は見つかったんだし、先に進みましょう。」








「きゃあ!!!」


最後尾、ルルの悲鳴が聞こえた。


「「ルル!!!」」


俺とヤテンさんはすぐさま振り返る。


しかし、そこにルルの姿はなかった。


ヤテンさんは顔を青くして言う。


「ルルの気配を、どこにも感じない。」


俺は冷や汗を浮かべて、なるべく大きな声でルルを呼んだ。


「ルルー!!!!!ルルーーーー!!!!!聞こえたら返事をしてくれーー!!!!!!!」


しかし、ルルから返事は返ってこなかった。


「これは不味いわね。」


「ヤテンさん、戻ろう。ルルを探しに。」


「えぇ、そうね。戻りましょう。急いでね。」



















「いててててっ。」


私は、おしりをさすりながら、目を開ける。

歩いていると突然目の前が真っ暗になって、

意識が途切れた。


そして、ふたたび目を開けると全く違う場所に来ていた。


「な、何ここ?」


そこには、古びたアトリエのようだった。


絵画が敷き詰められ、木の床がギシギシと音を鳴らし、火のランプによって辺りが揺らめいて光っている。


「おや………?」


声が聞こえた。


私は、冷や汗をかき、すぐさま振り返る。


そこには、優しそうなお爺さんがいた。


「ごめんよ。驚かせたね。いやぁ、ここに人が来るなんて。」


おじいさんは手で敵意がないことを示しつつ、

そっと壁を這って絵画を描く椅子のところまで移動した。


「さて、」


おじいさんは絵画を描き始める。


「あ、あの………」


「なんだい?」


「ここは?」


「ここはね、迷宮の狭間。人が来ることが滅多にないから、私はこうして絵を描いているのさ。」


おじいさんは優しく応えてくれた。


「あ、あなたは?」


「私はこの迷宮の案内人だよ。おめでとう、よく辿り着いたね。」


私はほんの少しの喜びと、少し考えてから、私1人がここにきてしまった焦りで、おじいさんに尋ねた。


「あの!私1人じゃなくて!仲間もいるんです!!!大切な!!お願いします!!助けてくれませんか!?」


「おや、お嬢さん1人じゃないのかい?」


「はい!そうなんです!」


すると、お爺さんは一冊の本を棚から取り出した。


「ふむふむ、なるほど。」


おじいさんは、帽子を被り、杖を手に取って、出口まで歩いていく。


「ついてきなさい。」


「は、はい!!」


私は、おじいさんについていく。


アトリエを出た先は、変わらず何もない洞窟だった。


「ここはね、地下なんだよ。」


「えっ!?地下……ですか?」


「そう。この試練はね、人を見る。様々な苦難を乗り越えて、登っていった先には、ゴールなんてなくて、答え(ゴール)は最初から足元にあったのさ。」


「そ、そんな………」


「でもね、ここに君が辿り着いたということは、きっと神様が見てくれていたんだね。大丈夫。みんな私がここから出してあげよう。」


「えっ!あ、ありがとうございます!!!!」


「あぁ。どういたしまして。」


おじいさんは優しい笑顔で、そう応えた。
















「ルルーー!!!おーーーーい!!!!ルルーーー!!!!」


「ルルーー!!!返事をしてーー!!ルルー!!」


俺とヤテンさんはルルの名前を呼びながら、洞窟を行ったり来たりした。


「ダメね。このままじゃ、私たちが持たないわ。先に進まなきゃいけない。」


「いや、ダメだ。ルルを見つけてからだ。」


「食料も限られてる。ここの攻略の糸口を見つけるのが、先でも問題ないはずよ。」


「でも!!!!」


「大丈夫。ルルはルルできっと何とかするわ。」


「ヤテンさん!!」


「…………ごめん。そうね。ルルを先に探さないと。」


冷や汗が浮かぶ。顔色も優れないように見える。


「なんか、ここやっぱりおかしいよ。」


酸素が薄いのか?

呼吸も浅いし、思考がまとまらない。

精神的にかなり追い詰められている感じがする。


「ハァ……ハァ……」


俺が無理やりここを突破しようにも、どこにいるかも分からないルルを巻き添えにしてしまうかも知れない。

このままでは、本当にまずい気がする。


「ヤテンさん………、ヤテンさん?…….ヤテンさん!!!」


振り返ると、ヤテンさんが倒れていた。

肩で息をして苦しそうにしている。


「どうすれば、どうすればいいんだ。」


俺は精一杯頭を回転させる。


とにかく最初の入り口を見つけて外に出なければ。


「ヤテンさん、待っていてください。」


俺はヤテンさんをおぶって、来た道を元に戻る。

















アトリエから出て10分は経った、気がつけば、

足はもつれ、息は途切れ、不思議なほど体が熱くなっている。


「す、すいません。あと、どれくらいで上にでれますか?」


「もう少しかな?」


段々とフラフラして、意識が朦朧としてきた。


何かが、おかしい。


「おや、辛そうだね。」


アトリエのおじいさんは振り返り、私を見る。


「一旦、戻って休むかい?」


「いいえ、早く仲間のところに。」


「………そうかい。」


おじいさんはそれ以上、何も言わずに、歩いていく。


私は、気づけば意識を失っていた。






















冷たい。


頭が、冷たい。


「う、うぅん。」


ぼやける目を開けると、

そこはアトリエのような場所だった。


「おや?おはよう。」


声がした方に目をやると、

そこには見たことのないおじいさんがいて、

絵を描いていた。


「あ、えっと……あなたは?」


「私はこの迷宮の案内人だよ。倒れていた君たちを運んで、ここまで来たんだ。」


おじいさんは、腰を抑えつつ、

立ち上がり、起き上がった俺の布団をもう一度、

俺のからだにかけた。


「ゆっくりと休みなさい。」


おじいさんは優しい声で話しかける。

しかし、俺は仲間と一緒に洞窟を探検していたことを思い出した。


「あ、あの、俺に仲間がいるんですけど、エルフの女性と、少し身長の小さい女の子で………」


「あぁ、そこに寝てるよ。」


よくみると反対側のベットの上に2人はいた。


「君は、勇者だろう?」


「えっと、は、はい。」


おじいさんはふたたび、椅子に座り直し、

絵を描き始める。


「いきなり何の準備もなしに、知らない洞窟を探検してはいけないね。」


おじいさんは俺を少しはばかり諌めるように、そう言った。


「あ、す、すいません。」


俺はおじいさんに謝る。


「よろしい。気をつけなさい。」


おじいさんはそう言って、また絵を描き進めた。





「イデロスに会ったかい?」


俺はその言葉に驚く。

一体、何故知っているのだろうか?


「は、はい。」


「そうか。元気に、してたかい?」


「げ、元気そうだったと思います。」


た、多分。人間の俺には、元気そうに見えたけど。


「そうか……そりゃ、よかった。」


おじいさんは少し物思いに耽るような表情で、

下を俯いた。


しばらくすると、ヤテンさんが起き上がった。


「う、うぅん。こ、ここは?」


「おはよう。」


おじいさんは、ヤテンさんにも俺と同じように少し諌めるような言葉を言った。












「君たちは、どこに向かいたいのかな?」


おじいさんは俺たちにそう問いかけた。


「えっと、、実は魔界を目指していて………」


「どうして?」


「魔王を倒さなきゃならないんです。」


「そうか、そうか。では、魔王を倒した後は?」


「魔王を倒した後?え、えーっと、それは………」


俺は言葉に詰まる。


すると、ヤテンさんは応えた。


「民の平和を実現します。私たちはそのために今すぐにでも魔界に向かわなければならない。急いでは事をし損じますが、あまりゆっくりしている時間もないんです。」


「そうかもしれないね。しかし、急ぐがあまり、もし魔界でさっきと同じような事態に直面してしまえば、君たちは死んでいるね?」


「そ、それは………」


「目の前を見なさい。」


私が前に目を向けると、そこには素空。

そして、横に目を向けるとルルがすやすやと眠っていた。


「君が守りたいものは何かね?」


「そ、それは、もちろん………」


私は言葉に詰まる。


「………しばらくここに留まりなさい。」


おじいさんは言う。


「大切なものを見失えば、何を得ようとも前には進めない。たまには、しばらくの休養を取ることも大切だ。」


俺はおじいさんに尋ねた。


「おじいさんは何者なんですか?」


おじいさんは答える。


「クロノス。時の旅人さ。」
















俺たちは、後日、孤島にある畑を耕していた。


「そうそう、たすかるよ。ありがとう。」


クロノスさんは、嬉しそうにしていた。


俺たちは、汗を流して、2時間ほど頑張った。


「よし、じゃあ、帰ろうか。」


クロノスさんは俺たちを連れて、

巨大な木の前に歩いていく。


すると、彼は言った。


「ここでね、こうすると………」


クロノスさんは木をコンコンと、

2回叩いて、地面の土をトントンと3回、踏んだ。


すると、木はみるみると形を変えて、俺たちを飲み込み、地面の土が柔らかくなり、下に落ちていくような感覚を味わいながら、あのアトリエの部屋の前、地下に到着した。


「ついたよ。」


俺たちはそれぞれ手にかごを抱え、

その中には畑で採れた野菜がたくさん入っている。


アトリエの奥、小さな台所で、

クロノスさんは包丁を握る。


トントントンと、小気味のよい音が、

部屋に響き渡る。


俺たちはその間、机に皿を並べ、

準備をして、少し緊張した面持ちで待ったいた。


クロノスさんは料理を運んでくる。


「さぁ、お待たせ。」


そこには彩どり鮮やかな野菜たちが、

湯気を立てて、美味しそうにならんでいた。


「「「いただきます!!!」」」


俺たちは野菜を頬張る。


「おいしいねぇ。」


クロノスさんはとても嬉しそうに、

俺たちを見ながら、ニコニコとしていた。


「クロノスさんは、食べないんですか?」


俺はクロノスさんに尋ねた。


「いつも食べてるからね、大丈夫だよ。」


「ダメです。ちゃんと食べないと。」


俺は自分の野菜を、戸棚の皿を借りて、

のせた。


「食べてください。」


「あぁ、そうだね。ありがとう。」


クロノスさんは美味しそうに、ご飯を食べる。


俺たちは、お腹いっぱいと言った様子で、

満足そうに天井を見上げていた。


「何か欲しいものはあるかい?」


クロノスさんはそう尋ねた。


「欲しいもの、ですか?」


「そう、何でも一つ叶えてあげよう。」


クロノスさんは言った。


「君たちのことを気に入ったからね。」


「私は、ヨーグルト!」


「わ、わたしは、グミ!」


「お、俺は、えーっと、いちご!」


すると、クロノスさんは目を見開いて言う。


「ちがう、ちがう。願いを叶えてあげようと、

言ったんだ。食後のフルーツのことじゃないよ。」


「えっ?私、ヨーグルトがいいです。」


「わたしも、グミが………」


「い、いちご………」


「そ、そうかい。わかったよ。」


すると、クロノスさんは

手を空に掲げ、そこは宇宙のような星々が、

並ぶ綺麗な空間になっていて、

そこからヨーグルト、グミ、いちごを、

取り出した。


「はい。どうぞ。」


「「「ありがとうございます!!!」」」


俺たちは、むしゃむしゃと頬張る。

クロノスさんは、何だかあたたかい目で、

こちらを見ている。


「私はね、神様なんだよ。」


「何となく、そんな気がしてました。」


「私も!」


「知ってます。」


「そ、そうかい。」


クロノスさんは、少し驚いたようにして、

そして腰を上げて、絵画の前の椅子に座った。


「ここはね、私を閉じ込める監獄なんだよ。」


「か、監獄ですか?」


「そう、悪いことをしてしまってね。」


「全然そんな風に見えないです!」


「そう言ってもらえると、少し嬉しいよ。」


クロノスさんはペンを取り、

絵画を描き始める。


少女と竜の絵。


夕日に照らされたそれはどこか儚げで、

美しさを感じさせた。


「綺麗な絵ですね。」


俺はキャンパスにまで歩み寄り、

まじまじとその絵画を見つめた。


「……友達がね、もうすぐ旅立ってしまうんだ。」


「友達が、ですか?」


「あぁ、だからその供養にと。」


クロノスさんは筆を進める。

しばらくすると、俺たちは眠気が襲ってきて、

それぞれのベッドで就寝した。


キャンパスを叩く筆の静かな音が、

かすかな火の灯る部屋に響いていた。












夢の中だろうか?


朧げな景色のなかで、クロノスさんは俺たちに問うている。


「主たちが、本当に望むものは何だ?」


ヤテンさんが首を傾げて、人差し指を頬に当てながら答える。


「うーん………私は特に何もないかな。今で満足しているから。………うん、そうね。この3人での旅がずっと続けばいいかなって。」


ルルは顔を俯けて少し恥ずかしそうにして、答える。


「その、3人でずっと一緒に旅がしたいな。」



「君はどうだい?」


クロノスさんは、俺の方を見て言った。


「俺は、そうですね。みんなが幸せでいられればそれで。」


「みんなとは、今ここにいる君の仲間2人と、幸せでいたいということかな?」


「は、はい。俺、これまでずっと心に何処か焦りのようなものを感じていて。……でも、ヤテンさんとルルと一緒にいると、なんだか落ち着くんです。」


「ふむ、よろしい。」


クロノスさんは嬉しそうに頷いた。


気づけば、ここで生活して1週間が経とうとしていた。








「もう、よいか?」


海辺、クロノスさんは見送りに来てくれた。


「おじいちゃん、ありがとう!!!」


ルルは手を振って、笑顔で応える。


「ありがとうございました。」


ヤテンさんは深々と頭を下げて、礼を言う。


クロノスさんは、俺を見て最後に尋ねた。


「勇者よ。君の望むものは?」


「俺の望むものは………」


俺は前を向いて答える。


「ヤテンさんと、ルルの幸せです。」


ヤテンさんとルルは、顔を赤くして、

もう!と俺の肩を叩いた。


クロノスさんは嬉しそうに頷いて、杖を地面に2度叩く。


クロノスさんは俺たちに手を振った。


辺りが白い光に包まれる。








次の瞬間、俺たちは激しい風に包まれていた。


「な、なにこれぇ!?」


ルルが慌てて、手と足をジタバタする。


「大丈夫!落ち着いて!私が何とかするわ!!」


ヤテンさんが、魔法を唱え始める。


「た、高すぎる………」


カクンッ、と俺は意識が途絶えそうになったが、

なんとか堪える。


太陽に照らされた透き通る青い空、


そして、目の前には、空に浮かぶ大地と巨城、


まさに、天空城が目に映った。











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