滅亡へのカウントダウン
「何が起こっているの?」
揺れは激しくなり、空は暗雲と雷鳴の光が交互に辺りを染めていた。
「とりあえず、しばらく出ない方がいいよ。」
ルルは、額に汗をかき、息が短くなっている。
「悪い。俺、いってくるわ。」
俺は立ち上がり、出口の階段へと進む。
「ちょ、ちょっと!!」
「素空、待ちなさい!!!」
青白い光の残滓が、見える。
まるで助けを求めるような、涙のあと。悲しい気持ちが伝わってくる。きっと、行かなきゃダメだ。
「これは…………」
階段を上がった先、
この世の終わりを予感させるような、大気を、いや、この地球全体を震わせているんじゃないかと思うほどの、絶望的な怪物の咆哮が、大地を割り、海に穴を開けていた。
全長数km。
いやそれよりもさらに、圧倒的に大きい。
言うまでもない、絶望。
俺は予感した。
これは、神の類だ。
「素空!!!」
肩に手が置かれる。
ルルだ。
ヤテンさんも、階段を上がってきた。
「ど、どうなってるの、これ?」
「とりあえず、中に入りましょう!」
ルルに肩を引っ張られる。
その時だった。
ガシャンッと、騎士が目の前の地面に叩きつけられた。血塗れだ。
ヤテンさんと、ルルが警戒して構える。
騎士は、後ろを振り返り、そしてまた、
歩もうとする。
しかし、片膝をついた。
青白い女性が騎士を止めるように、肩に手を置き、悲しんで泣いている。
騎士はそれでも、震える体を押して、
前に進もうとした。
俺は、彼らの前に出る。
「あとは、任せろ。」
俺が、おおきく屈み、地面を蹴り上げた。
「神だか、何だか知らねぇが、人を悲しませるような神を俺は知らねぇ。」
俺は、怪物の上で拳を構える。
「泣いてる奴がいるならよ、その涙を晴らさせるまでだ。」
俺はその頭に、一撃を叩き込んだ。
ズガァンッ!!!!!!!!!!!!!
海に叩きつけられる、その巨体は、
大きな波を引き起こした。
「ギガイシュバルト!!!!!」
「土炎壁!!!!!!」
沖の方向を見ると、ルルとヤテンさんが波からみんなを守ってくれたようだった。
「わ、悪い!!!」
「いいから、あんたは集中して!!!!!」
「目の前、来てるわよ!!!!!」
「へっ?」
目の前に口を開けた、巨獣がいた。
飲み込もうと、その体が唸り、俺を襲う。
俺は体を斜め下に捻り、上段蹴りを、
叩き込んだ。
「あ、危ねぇ。」
ギリギリ届いたけど、口の真ん中空洞部分で、飲み込まれたら危なかった。
恐らく、牙を先に俺に当てようとしたことが幸いしたか。
『聞こえますか。』
何処からか声が聞こえる。
アルテミス様?
『とんでもない敵と、戦っていますね。その者は、リヴァイアサン。恐らく、古のものの願いが封印を解いたのでしょう。この世界は神の力が干渉しているせいか、次元の歪みが大きい。イデロスには反省していただかねばなりませんね。』
アルテミス様は、声音が恐ろしく、
怒っている様子で、俺は思わず身震いした。
『今、手が離せないので、あなたにお願いしたいのですが………』
「はい、いけます。」
『頼もしいですね。それでは、せめて足場を作りましょう。』
響き渡るような心地の良い声が辺りを包む。
『深緑の大地よ。』
そう言うと、地響きが起こり、
目の前に5つの緑に覆われた大地が海の底から出現した。
『これで、大丈夫でしょうか?』
「えぇ、十分です。」
『ふふっ、それでは任せましたよ。』
俺は、下を見る。
島より大きい怪物の目が、
俺を睨んでいる。
俺はひとつの、アルテミス様が出現させてくれた島に降り立つ。
「でかいな。」
あらためて、空を覆うほどの巨体と、身が裂かれるほどの恐怖を与える威圧感。それでも、
「それでも、助けを求める誰かを、泣いている誰かを、そして、俺の大切な人達を、傷つけるって言うんなら、絶対に負けねぇ。」
巨獣は俺を島ごと喰らおうとする。
「大切な足場なんだ。やらせねぇぜ。」
俺は顎に蹴りを入れる。
すると、体は斜めに打ち上げられたが、
すぐにこちらを睨み返し、そして、
なんとそのまま体を唸らせて、空に
駆け昇っていった。
「な、、なんだ、、、???」
雲の上。
途端、雲はリヴァイアサンを中心として割れ、
その身を現した。
口には光線が溜められている。
「や、やべぇ!!!」
俺は咄嗟に、遠くの島に跳んだ。
放たれた。
辺りがまるで鏡に照らされ、反射するような真っ白な強烈な光に包まれ、、
「なっ!!?」
島は大きな風穴を開けて、
大きなマグマ溜まりを作った。
「危ねぇ。」
そう思ったのもつかの間、
「素空!!!!!!上だ!!!!!!!」
ヤテンさんの声が聞こえた。
見ると、
リヴァイアサンが再び、
灼熱の光線を溜めている。
「このまま足場を潰され続けたんじゃ、負けちまう。一か八かだ!!!!!」
俺は、島にある岩盤を持ち上げ、空に投げる。
そして、その後ろを跳んだ。
キーーーーーンッという音と共に、
再び灼熱の光線が放たれる。
俺は、途端岩盤に追いついて、
それを足場にしてさらに跳んだ。
そして、光線をかわし、リヴァイアサンの上に出た。
「これで終わりだぁ!!!!!!」
リヴァイアサンの頭上に、
全体重を、乗せた本気のパンチを入れる。
ズガァン、と頭を打ち、
リヴァイアサンはヒュルルルと音を立て、
地上に激しく落ちた。
晴れた空に、素空は拳を構える。
「いけぇー!!!!!!!!!!!!」
私は大きな声で、空に、素空少しでも想いが届くように、
声を出した。
途端、とてつもない轟音が響き、
怪物が落ちてくる。
ズゥゥゥゥーン…………と、
音を立てて、怪物は沈黙した。
「やっ…………」
「やっ…………」
「「やったぁーーーーーー!!!!!」」
ルルと私は2人で手を合わせて、抱き合って、喜んだ。本当に良かった。本当に………
「まだ…………」
何処からか、声が聞こえる。
目の前の倒れる騎士の横に、
青白い女性の姿が見えた。
「まだ、終わっていません。」
俺は沈む怪物に、安堵した。
「ふぅ、何とかなったな。」
頭から真っ逆さまに落ちていく。
「さて、どうするか………」
怖い。めちゃくちゃ怖い。
万が一大丈夫だとしても、こえぇ。
ちゃんと、着地できるかな。
大丈夫だよな?いや、俺高いところ怖いんだよ。
本当、助けてくれ。
「ん?」
なんか、島がなくなってる???
純然たる水の脅威。
都は、沈んだ。
おおくの神々の力を借り、精鋭たちを集め、
リヴァイアサン、怪物を退けたはずだった。
その、はずだったのだ。
「風の魔法、苦手なのよ!!!!」
ヤテンは、私たちを浮かび上がらせて、
助けてくれた。危なかった。
急に水位が上昇して、
全てが水の中に沈んだ。
一面、全てが海。全てが飲まれた。
「こんな、こんなことって………」
私は、初めて感じたことのない恐怖を覚えた。
「ははっ、困ったな。」
俺は全てが飲まれた地上……いや、海を見る。
ルル、ヤテンさんは何とか大丈夫みたいだ。
あっちに気が向かないように、何とか引きつけないとな。
巨大な目がこちらを睨みつける。
「どうやら、、大丈夫みたいだな。」
巨大な何かが迫ってくる。
リヴァイアサンの尾だろうか?
俺は手を前に重ねて、防御の態勢を取る。
感じたことのない衝撃が、全身をはしる。
バシャアァァァァン!!!!!!!!!
「「素空っ!!!!!!!!!!!」」
ゴボボッ………海の中、、
どれくらい深くまで落とされただろうか?
空中から差し込む微かな光、
目の前には、巨大な顔が見える。
「こりゃ、、とんだホラーだな。」
俺は全力で泳いで、上を目指した。
水流がとんでもない勢いで、逆方向に吸い込まれる。俺はそれに逆らうようになおも全力で上に向かって泳いだ。
途端、急激に体が引き上げられる。
「イシュバルト!!!!!」
空に浮かぶルルの元に引き寄せられて、抱き寄せられた。
「あわわわわわ……………」
島ほどの大きさのある顔が、目の前に迫る。
ガキィンッ!!!!!!!
鋼を弾くような音が響き渡る。
白銀の騎士、ティマイオスが
立ち上がり、その怪物の頬を打った。
青白い女性が俺の前に現れる。
「ありがとうございます。そして、数々の無礼をはたらき、申し訳ありません。我々は都を滅ぼしたリヴァイアサンを、完全に消滅させるべく、封印を解きました。………いえ、体よく言っているだけで、本当は復讐したかったのかも知れません。何より、都の人々の魂が浮かばれるように。」
青白い女性は、白銀の騎士の元に行く。
「あとは、お任せください。迷惑をおかけして、大変申し訳ありませんでした。そして、ありがとうございます。我々が、決着を付けます。」
雷鳴が轟く。
暗い雲に覆われ、雷がその刀身に落ちる。
いや、ティマイオス自身に雷が纏われ、その身から大きな煙が上がる。
「ティマイオス。」
女性はティマイオスの手に重ね、彼と共に、剣を振るう。
「行きましょう。」
その刀身が振り下ろされる。
しかし、なおもリヴァイアサンは怯まずに、
唸り続ける。
「くっ…………」
女性は苦しそうに声を上げる。
「………ナターリア。」
鎧から声が聞こえる。
「愛している。」
雷はより一層、激しさを増し、
リヴァイアサンがようやく押され始める。
その時だった。
雲間に一筋のあたたかな光が照らされる。
(ぬくもり。懐かしい仲間のぬくもりだ。)
騎士は剣に力を込める。
その光と共に、剣はその巨身を貫いた。
水面が干上がる。
それと共に、騎士が降り立つその地には、
都が姿を現していた。
そして、煙と共に騎士の体は崩れていく。
周りにはかつての仲間が騎士を取り囲んだ。
そして、ナターリアが彼の鎧を取り、
その顔に優しいキスをした。




