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偏差値70は最強じゃない!  作者: 鮫の歯
第一章 華炎の国
54/56

偏差値40.5 サブ サン・マニウェル

ソウタたちが悪魔を捕まえようと戦っている一方、スキエンティアにて。



ネモト「よぉ、サン。久しぶりだな、元気かい?」

シワシワの白衣を着た男が小さな居酒屋ののれんをくぐった。

ボサボサの髪の男が答える。


サン「───ネモト、か。久しぶり。こんなとこに来るなんて珍しいな。どうしたんだ?」


ネモト「珍しい、ふむ。最近この店に通うようになったんだ。いい店だろう?大将、いつもの酒とつまみ。多目に頼む」

店主はあいよー!と元気よく答える。

サン、はフフっと笑うと酒をぐいと飲んで言う。


サン「はは、研究一辺倒のお前も丸くなったもんだ。何かいいことがあったか?お前ならこのような居酒屋、毛嫌いするはずだ」

ネモト「さすがだ。さすが作家をやっているだけある。記憶力がいい」

サンは頭をかくと薄笑いを浮かべて言った。


サン「ははは、はぐらかさないでくれ。俺がいくら誘っても断っていたお前が、人嫌いのお前がこんなうるさいところに来るはずがない。なにせ、人が嫌いなあまり()()()()()ロボットを作るほどなんだからな。ええ?所長さんよ?」


白衣の男は苦笑いすると酒を受け取り、一口飲むと

ネモト「ははは、やはりお前にはかなわない。どこまで知っているんだか。」

また一口飲む。

ネモト「そうさ、お前のにらむ通り、ロボットを作っている。しかも順調でね。転生者、知ってるだろう? が協力してくれてね、一回中断した研究が再開できたんだ」


サン「ほほう。転生者、確か日本から、だろう?」

ネモト「そうとも。しかもパンドラ様直々の、だ。よほどの幸運者でな、魔晶石をたくさん見つけて………」

ネモトは酒に弱く、ペラペラと話す。

サンは、それを黙って聞いた。




サン「そりゃあよかったな。プロメテウス様の加護なのだろう」

ネモト「まさに()()()にいたからこそ、だ。お陰で完成間近だ」


一瞬暗い顔をしたのをサンは見逃さなかった。

サン「しかし、だろう?人が酒を飲むとき、良いことが起きた時、悪いことが起きた時の2つがあるが、お前は一人で居酒屋に来た。何か嫌なことがあって来ているのだろう?」


ネモトは酒を置いてサンの方を向いた。

サン「訂正しよう。俺は最近帰ってきたばかりで正しくはないかもしれないが、お前は一人で、ここ一週間はこの居酒屋に通っている。それは何か悩んでいる、ということだ。しかもその間俺が奥にいたのにも関わらず気付かなかった。それほど、ということだ」


ネモト「………ふぅ。」

サン「さらに、だ。人は同じ酒を飲むにしろ、つまみまで毎回同じにしない。お前の事だ。どうでも良いことは気にしない。つまみなんてどうでもいい、と思うほど悩んでいた、ということだ。」


ネモトは酒を一口飲んだ。

ネモト「はは。探偵をした方がいいんじゃないか?──おっとそんな怖い顔をするな。当たりだとも。悔しいが当たりだ」


サンはくくっと笑った。

ネモト「実は()()()()、なんだ。文字通り」


サン「? どういうことだ?」

ネモト「間近、なんだよ。完成しない。ちゃんと反応もするし、動いてもくれる。健康そのものだし、故障もしていない」


サン「…………?ならいいんじゃないか?完成、ではないか?」

ネモト「フフ。だが足りない。これではロボット、なのだよ。H/Mは人間ではない」

サンは、少し考えたあと笑いだした。


サン「ははははははは!なるほど!ははははははは!わかったよ。なるほど。それは悩ましい!実に深刻だ。大変な事態だ」


ネモト「さすが、だ。サン。君ならわかってくれるか」

サンは酒をぐいっと飲み干した。

サン「わかるとも。僕は作家だ。それが仕事だからね。君は運がいい。いや、違うな。その転生者()運がいい。」


ネモト「? ソウタくんが?」

サン「ソウタ君と言うのか。そうだとも。まぁ、ネモトが僕に会えたのも幸運ではあるのだが」


ネモトはつまみのアジの南蛮漬けを食べた。この、南蛮渡来でもないのに南蛮の名が付いているこの料理のように、一を聞いて百を理解するこの男を不思議に思った。


ネモト「勿体ぶらずに教えてくれ。何が幸運なのだ?彼は私に魔晶石を譲ってくれただけだ。この問題には関係ないだろう?」

サン「まぁ、そうだろう。しかし、考えてみろ。………………………」


サンはネモトに耳打ちをした。

ネモト「………!! なるほど!」

サン「な!こういうことだ。実に君は運がいい。どうだ?これで晴れただろう」


ネモトは酒を飲み干した。

ネモト「ああ。これで安心してこの店に来なくてすむ。」


サン「ははは。相変わらずだ。よくもまぁ、その性格でやっていられるな。嫌がられないのか?」

ネモト「お互い様だ。それより、お前は何故ここにいる?またか?」


サン「ああ。()()()()()()()

ネモト「──ふん。」


ネモトはグラスを置いた。

ネモト「羨ましい限りだね。うちには私含めモテない輩ばかりで困ってるんだが。分けてもらいたいほどだ」


サン「………変わっているだろうね。だが僕にとってはこれほど嫌なことはない。作家なのだからこういうことは御免だ。それに、どうせからかいさ。僕がモテるのかどうかはさておき、告白されるたびにアレがよぎる。吐くほどだ。」

サンは酒を一口飲んだ。


ネモト「はぁ。全く。私が言えたものではないが君は顔がいいんだから。それに理由が童貞を貫くなんて。」

サン「………………占ってあげようか?」


ネモトはビクッと驚く。


ネモト「やめてくれ。お前に占ってもらうなんて恐ろしい。謝るよ。すまなかった」

サン「顔がいいだなんて困る。これに一番苦しんでいるんだ。顔の価値など、中身に比べればガムの包み紙ほどもないのに」


ネモト(事実なのになぁ)

サン「まぁ、僕は女に惚れられるのは嫌だ。道端に落ちている犬のフンを踏む方がましだ。惚れることもしないし、愛することもない。いくらむこうが愛してきたとしても」

ネモト「理解できないなぁ。ずっと機械いじりをしてきたせいか私ならそもそも愛されることすらない。なぁ、どうやったらそんなにモテるんだ?」


サン「特に意識はしていない。いや、意識していないのが悪いのか??」

ネモト「はぁ、全く。これで男も好きではない。あのアンデルセンはモテなさすぎて苦しんだと言うのに、同じ作家でもお前はモテすぎて苦しむ、か。全世界の男を敵に回しているよ」


サンは酒を飲みながら寂しげに笑った。

サン「はは、光栄だ。それならそれでいい。」


すると。サンの前に酒が入った瓶がおかれた。サンのお気に入りの酒だ。

店の主人と瓶を見比べてサンは聞いた。

サン「………?大将?頼んでいないが?」

店の主人はニヤニヤしながら

大将「あちらのお客さんからで」


ネモト「ブフォッ!」

ネモトは思わず吹き出した。


サン「………帰る。」

ネモト「バーでもないのにwwwくっそwww」


サンはずっと笑っているネモトを引きずって店を出た。


声も出ないほど根本は笑う。

ネモト「wwwwwwwwwwwwwwwっwwww」

サン「いつまで笑っているんだ。そんなにおかしいか」

ネモト「だってwwwお前の驚いた顔とwwwクククッ」


サン「はぁ。まさか僕もこんなことがあるとは思わなかった。いや、()()()()()()。」


ネモト「あー、久しぶりにこんなに笑ったよ」

サン「………………」

サンは黙ってさっさと歩いていく。


ネモト「悪かった悪かった。お前のお陰で助かったとも。感謝する」

サン「……フン。まぁいい。僕はこっちだから。いつ会えるかわからないが、研究が成功することを祈るよ」


ネモト「……ああ。私もお前の本が売れることを祈るさ。実際売れてるし」

サン「僕としては売れてほしくないんだがね。では、さようなら」


ネモト「さようなら。」


二人は別れてそれぞれ家に向かった。


ネモト(また会おう。プロメテウスの目を継ぐ者よ)



冷たい、酔ったものには気持ちの良い風が吹いた。

何かの包み紙が風に吹かれてどこかへ飛んでいった。



続く。  

お久しぶりです。


サン・マニウェル。作家です。どうでしたか?彼はすごく後に本編に出てきます。


ネモトさん、覚えてましたか?

H/Mというロボットを開発している研究所の所長さんです。


スキエンティアはソウタ達の世界にある、唯一の科学文明です。文明レベルは現代とほとんど同じ。


そのうち本編の続きを投稿するのでお待ちください。ごめんなさい。

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