偏差値39 過去の精算─1
朝になった。
ソ(おい)
ケ(はい)
ソ(昨日何回した?)
ケ(5回です)
ソ(なるほど。寝ろ)
ケ(すいません)
ソ(ほどほどにって言っただろ!)
ケ(ほどほどのつもりなんですが)
ソ(疲れるんだよ!特に腰が!魔法で治せるからいいんだけど、それはあまり体に良くないからさ)
ケ(……確かに。すいませんでした。)
ソ(やるなとは言わない。むしろやりたい、俺も。だが夜はちゃんと寝ろ)
ケ(気をつけます)
マ「何話してるの?」
ソ「いや何でもないさ。それよりすみません、朝食までご馳走になってしまって」
シャルさん「いえいえ父さんを治してくれたんですから。これくらいの礼はさせてもらわないと」
ラ「で外に置いてある樽は何なんですか?」
ラコンはもぐもぐ食べながら窓の外を差した。木の蓋が見える。
シャ「お礼のお酒です。ビールと、とうもろこしから作ったお酒。美味しいですよ?」
ラ「その、主がしたことはわかっておりますが、量が多いのでは?私には4樽ほどあるのが目に見えるのですが……」
確かにな……気持ちはわかる。
シャ「父さんの飲み残し……いえ、病で臥せっていたので余ったのですよ。結構父さんは飲むのでかなり蓄えてあるんですよ。熟成されているからさらに美味しくなってるはずですよ、どうぞ!」
ソ「………まあパンドラボックスに入れたらいいからいいけど。ありがとうございます。お父さんの体調はどうですか?」
シャ「さらに具合が良くなったようで村を歩いてます。安静にって言ったんですがね…」
困っているようだ。そりゃあな。
ソ「ハハハ。もう歩けるら大丈夫ですよ。これからも小麦と肉を食べるようにしてくださいね」
シャ「はい。父も懲りたようで酒は控えると。春小麦ができるようになったら私たちも食べられますし、こちらこそありがとうございます!!」
ソ「喜んでいただけて良かったです」
家族全員に見送られながら出発した。やっぱり人助けはいいな。気持ちがいい。
竜車の中でラコンだけ不満そうだった。前にマインとクレーネにはしたのに、ラコンとだけしていないからだ。
ラ「主は我のことが嫌いなのですか?」
ソ「嫌いなわけないだろ。たまたまできなかっただけだ。そういじけるなって」
俺が言ってもふん!と、そっぽをむかれた。マインとクレーネは黙ってニヤニヤしている。
ラ「いじけてなどおりません!」
ソ「ふぅ、頑固なんだから」
ラ「主?……ッツ!ふむっ………んっ…!」
トロンとした顔になった。
ソ「………今日の夜は一番にしてあげるから。ね?」
ラコンは顔を真っ赤にしながら呟いた。
ラ「…約束でございますよ」
ソ「ああ約束だ」
ク「あぁ~~!ず~る~い~!」
と、まぁいちゃこらしながら3日過ぎた。これといったことは起こらず、王都から二つ前の、インゲルの関所に着いた。
ケ「うわー、並んでますね」
関所は二つに分かれていて人用と馬車用。
俺たちは馬車用の入り口から入る。
しかし10台ほどの列ができていて詰まっている。待っていて暇な商人達がざわざわと話したり、休んだりしている。
ラ「どうしたのでございますかね。今までこんなに混んでいたことはなかったのに」
今まで2つほど関所を越えた。領主が違うのだ。
バ「ここは何回も通ったことがありやすが、こんなに混んでなかったはず」ソ「バンクさんが言うなら…なんでだろう?」
ラ「…何か立て札がございますよ?」
ソ「なになに……ただいま検問強化中。金髪の男と赤髪の女と青髪の竜人の女を見つけ次第捕縛する。情報を求む」
サッと静かになった。
ソ「これ俺たちじゃ…」
マ「わわわば、ばか!大声出すな!」これって……
ク「ケイトマインとラコンのことよね。でも何で?ここに来たのは初めてなんでしょう?」
バ「ははぁ」
バンクさんは何か納得したようだ。
ソ「何ですか?バンクさん」
バ「おそらく、湖での貴族ですよ。ここの領主の息子の特徴が若旦那から聞いたのと同じで。今思い出しやした。でもあの湖からはここはかなり遠いので、もしかしたら間違ってるかもしれやせん」
ソ「イヤ、合ってます。神眼で見たのと同じだ。グルガンベルク伯爵・領主の息子、ナイト・ミランダ・ゼエルベン・ベル・グルガンベルク」
マ「あいつってそんな名前なの?」
ソ「ああ。成人済みだがまだ爵位を受け継いでおらず、領主である父の補佐をしているらしい」
ク「………!!!」
クレーネが何かに驚いたように身震いした。
ラ「? どうしたのですか?クレーネ」
ク「いや何でもないわ。それでどうするの?このままだと捕えられちゃうわ」
俺はチッチッチッと指をふった。
ソ「まあ大丈夫さ。精神魔法で見た目はごまかせば、関所ぐらい行けるさ」
バ「あー、スキエンティアで問題視されてるやつ。まぁここならいいでしょう」
ソ「バンクさん?」
バ「ま、関所はそれでOKでやすが問題がありやす。この領地が広すぎてどんなに飛ばしても、一泊はしなければなりやせん」
マ「あ~~、それは確かに問題ね」
ソ「村人全員分のごまかしを二日間か。ちょっときついが、大丈夫だろ」
ラ「すいません、主」
ラコンたちは見た目のごまかしの精神魔法はできない。
精神魔法に対する耐性や誘惑をすることはできる。が、見た目を完全にごまかせるのは俺だけだ。術式が少し複雑なのだ。
ソ「気にするな。それに元々はクレーネを助けるためにしたこと。悪いのはあっちの方だし」
クレーネが申し訳無さそうに呟く。
ク「本当、私のためにごめん」
ソ「…………。大丈夫だ。心配するな」
ク「うん」
クレーネの不安は最もだ。
そして、クレーネはなぜ襲われたのか、思い出している。
バ「おっと、そろそろあっし達の番です。若旦那、ごまかすなら今のうちに」
無事関所は抜けた。強化中といっても役人自体は普通の人間、精神魔法に対する耐性は0だった。
それにやる気があまりないように見えた。最低限の業務しかしていないという感じだ。
ひどく疲れていたように見えたし、忙しかったのかな。
バ「まずは中央都市のギルカルに向かいやす。そこで一泊し、出発という流れでございやす」
グルガンベルク伯爵領、中央都市ギルカル。
森に囲まれた都市で、川が貫いているそこそこ大きな都市だ。中央の山の上に城があり、そこに領主の館がある。
バ「森に囲まれてるのは自衛のためでやす。モンスターが来ても都市の中に入らないよう、外側の家はかなり丈夫に作られておりやす」
マ「前泊まった町もそうだったわね」
バンクさんがうなづく。
ソ「城郭都市っていうんだ。周りを壁や丈夫なつくりの家で守る街。夜になるとモンスターや盗賊が来る。それを防ぐためのものだ。
ラ「いっやー、これがなかなかキツいんでございますよね~~。襲おうにも壁がめっちゃ分厚いし、武器も備えてあるしでなかなか金や宝石を盗めなかっ………」
シーン。
ラ「……という話を聞きましてね!えぇ!友達の竜がそう言っておりました!」
絶対お前の体験談だろ。
……クレーネの元気がない。
俺に寄りかかって休んでいるが息が荒く、苦しそうだ。
ソ「クレーネ、大丈夫か?」
ク「うぅん。少ししんどいだけ。そんなに気にするほどじゃないわ」
ソ「そうか、何かあったら言ってくれよ」
ク「うん」
神眼でみてもわからないな。
たぶん気分的なものだろう。
あいにく宿がいっぱいで、泊まったのは、主人が外出中(行商中)で留守の家だった。
隣人に鍵を渡してもらい、泊まらせてもらった自分たちで自炊するタイプだ。
マ「まさか宿がどこもいっぱいとはね~~」
ケ「こんな事もあるもんですね」
荷物をほどきながら言う。
ク「何があるのかな?いっぱいになるって事はあまりないでしょ?」
バ「今特別忙しい時期でもないでやすからなぁ」
ソ「いいじゃん!これでマインとラコンの手料理が食べられるわけだし!」
バ「ほぉ!お二人は料理ができますので?」
マインは少し照れた。
マ「そんな上手じゃないけど…ほどほどには作れるわ!」
ラ「我はコックパッドで習いましたからな!村にいた時主にも食べてもらいましたし!」
バ(コックパッド……メンデルめ)
ソ「二人とも上手だからな~。楽しみだよ」
マ「そういえばクレーネは?料理できるの?」
クレーネは驚くと
ク「私!? 私はノーコメントで」
ラコンはその反応を見て、
ラ「ハハーン、できないのでございますか~?」
クレーネは慌てて返す。
ク「で、できるわよ!って言い返したけど、今日は無理。なんかしんどくてそれどころじゃないわ」
マ「大丈夫?さっきまで元気だったのに…」
ク「この街に来てからなんかね手伝えなくてごめん」
ラコンはちょっと考えると
ラ「もしかして、あの貴族野郎でございますか?」
ク「あいつ?あいつは多分関係ないわ」
……………。
ク「だから、悪いけど2階で休ませてもらうわ。」
マ「そう?じゃ、お休みなさい~~」
マインは階段をのぼりかけているクレーネに手を振った。
ク「まだ寝ないわよ?朝まで寝ないからね?起こしてよ?絶対よ!」
クレーネは元気じゃん!と突っ込みをしたくなるほど勢い良く言った。
続く。
明日続き投稿します。





