第9話 くすぐり図書館にて
エレナの意識がゆっくりと戻ってきた。まぶたが重く、頭がぼんやりとする。体中がだるく、肌に残るローションのべっとりした感触とともにくすぐったさが襲う。
「う……ここは……」
彼女は呟き、目を細めて周囲を見回した。そこは広々とした部屋で、古い木製の本棚が壁一面を覆い、埃っぽい空気が漂っている。
くすぐり図書館……本棚の一番上に看板がかかっていた。中央に置かれた処刑台のようなベッドの上に、彼女は横たわっていた。手足を動かしてみると、自由に動く。拘束はされていないようだ。だが、立ち上がって部屋の扉に近づくと、そこは固く施錠されていた。鍵穴はなく、外からロックされているようだ。
「開かない……」
エレナはドアノブを何度も回したが、無駄だった。自分をくすぐってきた女性たちは何をしているのだろうか。今も侵入者をくすぐり回すのに忙しいのかもしれない。くすぐられないのはありがたいが、何もしないのも、もどかしい。彼女は仕方なく部屋の中を歩き回った。
図書館の棚には、古い革装丁の本がずらりと並んでいた。魔女の時代から伝わるものかもしれない。埃を払いながら、エレナはその一冊を引き抜いた。ページをめくると、内容はほとんどがくすぐりに関するものだった。魔女の拷問術、くすぐりの刑の詳細描写が、細かな挿絵とともに記されている。エレナの心臓が早鐘のように鳴った。元々くすぐりに弱い彼女からすれば、挿絵を見るだけで体がモゾモゾしてくるのだ。こんな本を読むのは自殺行為だが、使命感が勝った。座ってページをめくり始める。
最初の本は、『くすぐりの拷問術:精神崩壊の秘技』というタイトルだった。数百年前の魔女が、村人たちをくすぐりで拷問した記録だ。魔女は羽根を主な道具に使い、被害者の脇の下を軽く撫で回すことから始めたと書かれている。最初こそ、被害者は耐えられるが、徐々に羽根の動きを速め、肌にオイルを塗って感度を高める。挿絵では、若い村娘が縄で縛られ、魔女の羽根攻撃に笑い転げている様子が描かれていた。ページをめくるごとに、羽根の本数は増え、村娘の笑いも爆笑に変わる。
次の章では、効果的なくすぐり方が詳述されていた。まずは羽や撫でるようなフェザータッチから始める。こうすることで、被害者の肌は感度が上昇するのだ。次に、くすぐりローションやくすぐりオイルを塗る。特別な薬草を配合したくすぐりローションは、感度を何倍にも増幅させる。くすぐりオイルも合わせれば、10分以上精神が持つものはほとんどいない。それでも精神崩壊しない場合には、くすぐり手袋を使用する。これは、特殊な革で作られた手袋で、表面には小さな突起が無数についている。この突起が皮膚を刺激し、まるで無数の指でくすぐられているような感覚を生み出すという。
挿絵の村人は、目が虚ろで口元に笑みを浮かべたまま描かれている。「これが……廃人になるってことね……」エレナの背筋が凍った。
部屋の空気が重く、エレナの息が乱れた。脱出のヒントを探すが、本はくすぐりの知識ばかり。仕方なく、最後の棚から大きな本を引き抜いた。重厚な革表紙で、『魔女の館のすべて』というタイトル。館の情報が載っている。ページをめくると、館の地図のページでエレナの目が釘付けになった。館の中央には、くすぐりローションのプールがあるという。地下の広間に位置し、魔女が自ら設計したのだ。ローションは特殊な薬草で作られ、くすぐりを繰り返しても精神崩壊しない強靭な者に対して、魔女が直接くすぐりの刑を執行する場所だ。プールに浸かり、体中をローションで覆われ、魔女の指や道具で責められる。
次のページには、プールでくすぐりの刑にあい、精神崩壊した聖処女の話が書かれていた。数百年前、村の聖処女と呼ばれた女性、ジャンヌが魔女に捕らえられた。ジャンヌは信仰心が強く、通常のくすぐり拷問にも必死に耐えた。そこで魔女は彼女をプールへ連れていき、儀式を開始した。ジャンヌの体をプールに浸すと、ローションが肌に染み込む。魔女が素手で腹部を撫で始めると、堪えきれない笑いが込み上げる。ジャンヌは耐えようとしたが、ローションのせいで感度が増幅されてしまう。魔女の指が今度は脇の下へ移り、モミモミとツボを押すようにくすぐる。ジャンヌは堪えきれず、体をくねらせてしまう。魔女は笑い、指を速め、オイルを追加した。ジャンヌはもう、笑いが止まらない。
儀式は続き、魔女はジャンヌの足の裏を掴み、今度はくすぐり手袋で土踏まずをくすぐった。ローションが滑りを良くし、刺激が倍増する。ジャンヌはもう涙を流し、息を荒げ、許しを乞う。だが、魔女は容赦なく続け、数時間後、ジャンヌの精神は崩壊したのだった。挿絵では、ローションまみれになり、必死に許しを乞うジャンヌが描かれている。
エレナは本を閉じ、震えた。
「このプール……まだあるの……?」
「私も……あそこへ連れていかれる?」
聖処女ですら耐えられなかったくすぐり。恐怖が込み上げ、部屋の隅で、エレナは膝を抱えた。
「そんなくすぐりを受けたら……もう耐えられない……」




