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蟲王-KOOU-   作者: 聖騎士・改
第1部 出逢いと別れ編

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第8話 仲間の形

 二人を助けてから既に一週間が経った。今日はいつもより早く目が覚めたので早めに狩りに行くことにした。洞窟の外はまだ肌寒くうっすらと霧が込めている。前世であれば少し憂鬱な朝だが今は違う。急いで獲物を探し、仕留め、洞窟に戻る。戻った時にはもう日が登りあたりの霧は晴れ始めていた。

(二人はまだ起きていないかな?)

あまり音を立てないように静かに洞窟の中に入る。

「ウォフッ!!」

奥から元気な犬の鳴き声が聞こえてきた。どうやら俺の配慮は杞憂だったらしい。

『おはよう、二人とも。』

「はい、おはようございます。主様。」

「ウォフン♪」

 朝の食事を摂る、二人と一緒に。静かだけれど落ち着く時間が流れる。その時間を確かに噛み締める。幸せだ。

 しかし、そう長くポヤポヤもしていられない。俺は話を切り出す。

『今日からまた森を出るために移動したいと考えているんだけど、どうかな「アイリス」?』

 「アイリス・エーデルワイス」それが彼女の名前だ。いつまでも君では素っ気ないと思ったので名前を教えてもらった。綺麗な名前なので「白くて凛々しい君にピッタリだね。」と言ったら照れながらも微笑んでいたのを覚えている。

「ウォフウォフ♪」

『お、どうやら「六郎」は乗り気みたいだね。』

アイリスの名前を聞いた際に一緒に子狼の名前も教えてもらった。その名を「六郎」。由来までは知らないが友人がつけてくれたものだとアイリスが話してくれた。

「私もいいと思います。身体もほとんど良くなりましたので。」

『それなら良かった。それじゃ食事を終えたら出発しようか。』

「はい。主様。」

「ウォフン♪」

 食事を終わらせ早速出立する。

『それじゃあ進むわけだけどアイリス、森の外へ行くための道とかってわかるかな?』

「…すみません、はっきりとは分からないと言うのが本音です。何分無我夢中でしたので、北から来たというのは分かるのですが…。」

『そっか…。それならその方角に進みつつしばらくは川沿いを移動しようか。』

「そうですね、そうしましょう。」

「すみません、お役に立てず。」

「クゥーーン…。」

『いやいや、大丈夫だよ。そんなに落ち込まないで。ね。』

「…はい、ありがとうございます。」

正直期待をしていなかったといえば嘘になる。けれど情報が無いならないでそれは仕方ないことである。少しずつ情報を集めていけばいい。それだけである。

『よし、それじゃあ改めて行こうか。』

「はい、行きましょう。主様。」

『…。』

『今更だけれど本当に良いのかい?』

「良いと言うと?」

『いや、その「主様」って呼び方…。』

今までスルーしていたが別に「主様」などと呼ぶことは当然強制していない。悪い気分ではないが少しむず痒い呼び方だ。

「当然です!主様は私たちの恩人なのですから礼を尽くし、敬うのは当たり前です!もっと自信を持ってください。」

「ウォフウォフ!」

『そ、そう。なら良いんだけど…。』

謎のこだわりに押し負けながら俺は歩み始めるのであった…。




「主様!ここは私がっ!!」

『いやアイリス、君は下がっていたまえ。』

ドンッ!ブシッ!!

『何とかなったね。』

「…はい、お見事でした。主様。」

アイリス達と旅を始めて一週間。特に大きな問題はなく旅は順調に進んでいる。2人を連れているからか襲いかかってくる蟲が多いような気がするがそこまでの脅威ではない。アイリス達はまだ本調子ではない俺がしっかり守らなくては。

「…。」

『大丈夫かい、アイリス?あまり元気がないように見えるけれど。何処かで少し休憩でも…。』

「あっ、いえ大丈夫です!少し考え事をしていただけです。このとおり私は元気ですのでお気になさらず。」

『そう?なら良いんだけど…。』

一つだけ気になることがある。見ての通りアイリスの様子が少しおかしい気がする。何かを隠しているような。もしかして気を使わせてしまっているのだろうか。

「ウォフウォフ!!」

考え事をしていると六郎が声を上げた。

『また、来たか。』

六郎の視線の先を見るそこには一メートル程の大きさの蚊が宙を飛んでいた。

『ありがとう、六郎お前のおかげで先に気づくことができた。』

六郎は鼻が利くらしい。そのおかげで蟲たちが襲ってくる前にそれらを発見することができている。このおかげで楽に蟲達を倒すことができるので助かっている。

『悪いけど、堂々と不意打ちさせてもらうよ。』

ベシッ!!

『よし、これで安全だ。』

しかし恐ろしいものであるあの小さい蚊がこれほどの大きさで飛び回っている。刺されたらと思うと…。いや、考えたくもないな。

――また、役に立てなかった。

『うん?アイリス今なにか言ったかい?』

「い、いえ何も…。」

『そう?』

今確かに何かが聞こえた気がしたんだけれど…。あれは…。

「くぅーん…。」




 夕暮れが来た。今日も特に情報はなかった。人間の集落に着くのは一体いつになることやら…。まぁ、旅をするのもこれはこれで悪くないんだけどね。

「…主様。」

野宿の準備をしていると真剣な面持ちでアイリスが話しかけてきた。

『どうしたんだい?そんな真剣な顔をして。』

「実は、相談したいことがあるのです。」

『相談?』

相談か…。やっぱり気を使わせてしまっていたのだろうか。こんなゴールの見えない旅はやはり病み上がりにはきつかっただろうか。だとしたら申し訳ない。

 しかし、そんな俺の予想とは裏腹にアイリスから出た言葉は予想だにしないものだった。

「主様、私は役に立てていますか?」

『?急に何を…。』

「もし、私が足を引っ張っているのでしたらどうか躊躇いなく私を切り捨ててください。」

その言葉には少しの焦りと責任感が感じられた。だから、俺は…。

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