第27話 王都へ
肌に触れる明け方の霧の冷たさで目を覚ます。どうやら休息を取ろうと腰を下ろしそのまま寝てしまったらしい。
「ダメですね、急がないといけないのに。」
自身の油断を窘めるように呟く。その時、馬の駆ける音とともに怒号が木々をかき分け聞こえてきた。
「探せ!昨夜この森に入っていく不審な影を見たと近くの集落から報告があった。おそらく対象と見て間違いない!そう近くには言っていないなずだ必ず見つけ出せ!!」
「「おお!!」」
指示に続き何人もの声が聞こえた。どうやら嗅ぎつけられてしまったらしい。私は乗ってきた馬を連れすぐにその場を後にする。
「急がないと、手遅れになる前に…。」
「王都、ですか?」
「ああ、そうだ。」
あの後、俺はアイリス達が落ち着くのを待ち、これからの行動方針を説明することにした。
「ファリンには事前に話したんだけど、やっぱり今のままではあまりに情報が足りない。」
「だから一先ず最も情報が集まるであろう王都でドクターとやらの情報を探ろうと思う。」
「なるほど、ですが危険ではないでしょうか。マグネスでの一件もありますし、奴らは間違いなく人の生活圏で監視網を張り巡らせています。」
「だろうね、けどリスクは承知の上だ。そうでもしないと奴らの情報を得るのは難しいだろうしね。」
「大丈夫だよアイリス、もし仮に次また襲われた時は必ず僕たちが何とかする。」
「そうッスよ姐さん。任せて欲しいッス。」
「…分かりました。二人を信じます。」
「ありがとう、信じてくれて嬉しいよ。」
良かった、どうやらちゃんと信用してくれたみたいだ。
アイリスの地獄を終わらせるには元凶をどうにかするしかない。そうしない限り本当の意味での終わりはやってこない。それを果たすために情報を集めて準備しないくては。
「アニキ、どうしたッスか?」
「ん、いや少しね。」
俺も強くならなくては、信用に応えるため、仲間を守るために。
「よし、それじゃ朝食を食べ終わったら早速再出立と行こうか。」
「はい!」「ウォフ!」「はいッス!」
そうして俺たちは新たな目的を胸に王都へと向かうのであった。
「王都について?そうだなぁ…。俺も詳しくないけど…。街並みも食べ物も人もそりゃあ素晴らしいって聞いだぜ。それこそあのマグネスにも負けないくらいな。」
「王都で一番に目に付くものといえばやっぱり王城だろうね、王都を囲う城壁と同じ真っ白な壁が青空に映えて本当に美しいんだ。」
「王家の方々についてか…。うーん民のことを考えて動いてくださる素晴らしい方達としか言うことがないな。あ、でも一時期第二王女様の話がよく聞こえてたよ。なんでもとてつもない美貌を持ってるんだとか、いやあ一度は会ってみたいねえ…。」
「王都近衛隊って知ってるか?十年に一度王国騎士団から選抜されるんだけどその名の通り王都の守備と王族の警護が主な仕事でさ、選ばれた騎士は鎧に王家の紋章をつけてるんだ。一人一人凄い実力を持ったエリート集団なんだ。子供の憧れだよ、俺もいつか選ばれるために修練しないとな。」
「この国ラトネリクスの成り立ちは聖女様とやらに起因するんだと、なんでもその聖女様が厄災を鎮めこの国を起こしたとかで…。本当かは知らないけどな、昔話の絵本にもなってる。懐かしいな昔はよく読んで貰ってたっけ…。」
王都へと向かう道中立ち寄った村々で俺たちは少しでも情報を得るため聞き込みを行った。この国について知らない俺には中々楽しいものだった。
「色々な話を聞けたな。」
「そうですね。皆さん親切でよかったです。」
「ウォフ♪」
「でも、奴らについての目ぼしい情報は無かったッスね。」
「仕方ないさ、そう簡単に集まるものではないとは分かっていたことだし。根気強く聞き込みをするしかないさ。」
「それもそうッスね。」
「主様、次はどこに向かいましょう?」
「そうだね、前の村で聞いた集落に行ってみようか。」
「なんでも温泉施設があるらしい。最近は水浴びばかりだったし、長旅にはちょうど良さそうだしね。」
「良いですね、温泉ですか。」
「久々のお風呂楽しみッス!」
しかし、俺たちがそんな事を話している時だった。突如六郎が足を止めた。
「六郎どうしましたか?」
六郎は質問に答えず辺りを見回している。まるで何かを探すように。
「何かいるのか?」
「もしかして追ってでしょうか。」
俺たちが警戒を深めたその時。「ヒィン!」と言う鋭く高い鳴き声がどこからともなく聞こえてきた。これは、馬…?
「今の聞こえたか?」
「はい、聞こえたッス。」
なるほど、どうやら六郎はそれに反応していたらしい。耳をピンと立てて音の鳴った方角を見つめている。
「何かあったのでしょうか?」
「分からない、けど何か嫌な感じがする。」
「六郎、案内出来るか?」
「ウォフ。」
六郎は勿論と言わんばかりに返事をした。
「よし、頼むぞ。」
「ウォフ!」
そうして俺たちは六郎に案内を任せその背を追った。追えば追うほどに様々な音が聞こえてきた。馬の走る振動、鳴き声、一頭や二頭ではないすごい数だ。それにこれは鉄をぶつけ合わせたような…。
しばらく進むと六郎は一本の木の下で立ち止まった。
「見つけたみたいッスね。」
「ああ。」
俺たちはすぐに駆け寄りその視線の先を確認する。
「コレは…!」
そこにいたのは騎士たちに囲まれなお抗うローブの剣士の姿だった。どうやら逃げていたところを追いつかれたらしい。後ろには横たわっている馬の姿が見えた。さっきの鳴き声はあの馬のものだろう。
「すごい数ッスね。五十はいるんじゃないスか?」
「…二人とも待ってください、あの胸にある紋章って。」
アイリスの声に続き確認する。
「あれは、王家の紋章。つまり彼らは王都近衛隊?なぜこんなところに。」
いや、それ以上にそんな騎士たちに追われるあのローブの人物は一体…?
「グッ!」
「良いぞ!」「殺れ!」
俺がそんな疑問を感じている間にも剣士は追い詰められていく。だが、コレはまるで痛ぶることを楽しんでいるような。
「どうしますか、主様。」
「…。」
正直助ける理由は無い。騎士に追われるような人物だ、何かしらの犯罪を犯している可能性もある。だが…。
「あのやり方は気に食わないな。」
「それじゃ、アニキ。」
「ああ、ひとまず助けよう。考えるのは助けてからでも遅くない。」
「さすがアニキ、男前ッス!」
「了解です。ではどのように?」
「そうだね、今回もファリンの魔法に頼らせてもらおうかな。」
「みんな準備は良いね。」
「はい。」
説明を終え全員が持ち場に着いた。準備はバッチリだ。
「向こうもそろそろ限界みたいだ。合図で始めるよ。」
「…よし、今だ!」
「はいッス!」
そうして合図と共にファリンの魔法が発動され、俺たちの救出劇が始まった。




