第20話 観光!!
「主様、見えてきましたよ!」
「あぁ、僕にも見えたよ。」
ミネルヴァの家を出て二週間、遂に俺達は観光都市マグネスに到着した。
「すごいっス、あれ全部人が作ったんスか!?」
ファリンが驚くのも頷ける。都市を囲む白く巨大な城壁、本の中でしか見たことがない代物だ。これを作るのに一体どれだけの労力がかかったのだろう。
「主様、どうやらあそこで検問を行うみたいです。早速向かいましょう。」
「ウォフウォフ!!」
「はい、銅貨十五枚、確かに。」
「これで皆さんはこの都市に入れます。どうかこのマグネスをお楽しみください。」
人も多く時間はかかったが検問も終わり無事マグネスの都市に入ることができた。
「着きましたね。」
「ここが『観光都市マグネス』!!」
検問所を抜けるとそこには別世界が広がっていた。石畳とレンガで整備された街並み、屋根は色鮮やかに彩られ街道には露店が立ち並ぶ。本当に街の外とは大違いだ。
「アニキ早速見て回りましょう!!」
ファリンはそれを見て子供のようにはしゃいでいる。楽しそうでなによりだ。
「見て回るのは賛成だけど、とりあえず宿によって荷物を預けようか。」
「そうですね、私も賛成です。久しぶりにお風呂にも入りたいですし。」
「よし、じゃあ決定だね。ほら行くよファリン。」
「ええー。」
「ええー、じゃない。準備が終わったらすぐ連れてってあげるから。」
「わかったッスよー。」
―その頃街の外にて。何者かがが動き出していた。
「立ち寄るならここだろうと踏んではいたがまさかこんなにノコノコとしかも仲間まで連れてるとはね。」
「さて、どうしようかなあの裏切り者を…。」
宿に荷物を預け、身支度も整えた。後は…。
「全力で遊ぶぞーー!!」
「「おおー!!」」「うぉふーん!!」
「アニキ!何から行くッスか!私はあれから…。」
「ファリン、まずはあれからです。これは譲れません!」
「そういうことなら、あのゲームで買った方の行きたい場所に行くってのはどうッスか!」
「いいでしょう、負けませんよ〜。」
「あんまりはしゃぎすぎないでね。」
「「いざ勝負!!」」
「…聞いてないし。」
まぁ楽しんでるみたいだし良いか。とは言えお金の使い方には気をつけないと、この調子だとミネルヴァから貰った路銀がすぐになくなってしまいそうだ。さっきも宿代を払ってきたところだし。
この世界の貨幣は下から銅貨、銀貨、金貨、大金貨で構成されている。銅貨百枚で銀貨一枚。という具合に百枚ごとに単位が変わる。現代の価値と相対的に比べると銅貨一枚で百円なので、大金貨はなんと一枚で一億円の価値があることになる。桁がすごすぎて上手く想像ができない。
(街に入るための通行税は安かったから油断したな。あれは多分この街の中でお金を落として貰うためのものなんだろう。そう考えると現代の観光地とかテーマパークとかとあまり変わらないな。)
そんかなことを考えている内に二人の勝負は終わっていた。どうやら引き分けたので折衷案を考えているらしい。
「勝負は終わったかな?二人とも。」
「よーしそれじゃ行こうか!」
そうして俺達の観光がスタートした。
「すごいっスよ、アニキ!なんですかコレ!?初めて見るッス!」
「『綿あめ』ッスか?なるほど、糸状の砂糖を成形してこんな形に…。」
「食べてみるかい?」
「良いんスか!?」
「もちろん。」
「それじゃあ…、!」
「どう、美味しい?」
「美味しいなんてもんじゃないッス、ふわふわの綿が舌の上で溶けて甘さが口全体に広がって…まるで雲でも食べてる気分ッス!!」
「ふふっ、良かった良かった。」
「お嬢ちゃんいい反応するね、どれもう一本サービスだ。」
「え!良いんスか。」
「良いとも、俺達はお嬢ちゃん達みたいな子の笑顔を見るために店を出してるんだから。」
「ありがとうっス!」
「主様、あれは?」
「ん?ああ的当てだね。景品にあの球を当てて倒したら景品が貰えるみたいだね。」
「景品…。」
「やってみる?」
「良いんですか、それならぜひ!」
「えい!」ポテッ
「惜しいねお嬢ちゃん!あと少し威力が足りなかった。」
「うう、あと少しだったんですが。」
「…よし、僕もやってみよう!」
「え、ですがお金が…。」
「これくらい大丈夫、それにあれ欲しいんでしょ。」
「そうと決まれば店員さん僕にも球ちょうだい!」
「とうっ!」
「!大当たり、一等賞だ。やーすごいね兄ちゃん。」
「はい、アイリス。」
「さすがです。主様!」
「お、なんだい兄ちゃんも隅におけないね、お嬢ちゃんにプレゼントとは。もしかして彼女だったり?」
「もう、やめてくださいよ。」
「か、彼女…。」
「ん、どうしたアイリス?」
「い、いえなんでもありません。ほら、主様早く次に行きましょう、ファリンたちも待っていますし。」
「あ、そうだね。そうしよっか。」
「ふう、少し休憩。」
一通り街を周り終わり俺達は休憩のために人気の少ない公園で座り込んだ。
本当に色々なところを周った、食べ物はどこも美味しかったし、的当てやサーカスなんかもあって本当に楽しかった。人もみんな優しかったし、本当に来てよかった。ただ、楽しいこともいつかは終わるものであたりは既に日が落ち始めていた。
「そろそろ、今日も終わりッスね。」
「ウォフ。」
「そうだね、名残惜しけど今日はここまでだ。一旦宿に帰るとしよう。」
「はい、主様。」
そうして休憩を終え、宿に向かおうとするとファリンがあっ!!と声を上げた。
「どうした、ファリン?」
「すみません、アニキ少し買ったものを店に置いて来てしまって…。」
「どこか、わかるかい?」
「それが思い出せなくて…。」
俺達が困っていると六郎が進んで歩き始める。
「六郎、もしかして案内できるのか?」
「ウォフ!」
「そっか、それなら話が早い。ファリン急ぐぞまだ間に合う。」
「はい、アニキ!」
俺は二人を先に行かせアイリスに声をかける。
「ごめん、アイリス。僕も行って来るからここで待ってて。」
「わかりました、気を付けて行ってきてください。」
「うん、すぐ戻る。」
そうしてアイリスと別れ俺は二人を追いかけた。
誰もいなくなった公園で一人座り込む。
「今日は本当に楽しかったですね。」
そうやって一人言を口ずさみながら一つ一つ今日を振り返る。食事、遊び、語らい、初めてだった。街中でこんな風に遊んだのは。全てが新鮮できらめいて見えた。
だからこそ同時に自分の醜さを理解した。楽しいと思う度に鉛のような罪悪感が胸に沈み込んだ。私は結局あの時から何も変わっていないのだと突きつけられた気がした。
「『アンナ』、私は本当にこのままで…。」
「何を一人で語ってる?」
冷たい、全身の毛が逆立つような感覚が背を伝った。反射的に距離を取る。
「助かったよ、1人になってくれてコレで命令を遂行できる。」
恐ろしかった。声を発するまでその存在は全く気配を感じさせなかったのだ。主様や六郎を持ってしても。
「何者です!あなたは!!」
咄嗟に声を上げ、声の主を凝視する。そして、答えが帰ってくる前に理解した。奴らだった。姿形は違えども間違えようがなかった。瞬間堪えようのない怒りが心を支配した。
「その顔は答えるまでもないみたいだな。」
「それじゃ、さっさと終わらせるとしよう。」
「来いよ、裏切り者。」
もはや言葉はなかった。私はそれに殴りかかっていた。




