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風国 シュトルムスルフト対策会議

 実は、明日の晩餐会の準備や、マクハーン王太子の話が終わっても、私達のシュトルムスルフト初日はまだ終わっていなかった。


『まったく。今度はフェイか?

 お前達はどこに行こうとも、騒動を起こさずにはいられんのだな』


 夜の定時報告の時間に、皇王陛下にまた、きっちりみっちり怒られたからだ。


「だから、いつも申していますが、私達が騒動を巻き起こしたいと思って引き起こしているわけではないのです。

 特に今回の件は、フェイ自身が一番驚き、戸惑っているのですから、怒らないで頂けますか?」


 通信鏡を使っての、一日一回のアルケディウスとの報告会。

 呆れたようにため息をついた皇王陛下は、それでも。


『まあ、そうだな。このような事態は、流石に想定外だった。

 フェイ、あまり気に病むではないぞ』


 そう言って、私の横で通信鏡の操作を受け持つフェイを慰めて下さった。


『だが、フェイがシュトルムスルフトの王家の血筋、とはな。予想できなくもなかったが、まさかな』

「え、予想できましたか? 私はどこからどう見ても無理だと思いますけれど」

『そうなってみれば、だ。フェイの杖は他の魔術師――王宮魔術師のものでさえ足元に及ばぬ高位の杖であろう?

 私も緑の王の杖を手にして解ったことだが、王杓と同格の力があるように思う』


 なるほど。そういう方面からか。


「皇王陛下は、王女ファイルーズ様とはお会いしたことはないのですよね?」


 私の質問に、ああ、と深く頷く皇王陛下。


『シュトルムスルフトの国王イムライード殿は、『聖なる乙女』の存在を徹底して隠していたからな。

 フリュッスカイトの公主のお子にも驚いたが、娘がいたということも聞いたのは今が初めてだ』

「『聖なる乙女』が神殿で仕事をすれば、国の税金がかなり免除になるという話はあったと思うのに、それでも外に出したくなかったんですね」

『それくらい、大事に思っておられたのだろう。

 シュトルムスルフトは女性が外に出るのを好まない国でもあるしな』


 実際のところは、好まない、どころの話ではないのだけれど。


「皇王陛下は、シュトルムスルフトの国王陛下とは、あまり親しくはされておられなかったのですね」

『ある意味、一番遠い国でもあるからな。国王会議で挨拶するくらいで、殆ど関わったことはない』


 国同士の交流、国交が殆どなかった不老不死時代。

 なんだかんだで二代続けて王女が嫁ぎ、親戚付き合いをしていたプラーミァは、距離的に遠くても親しく付き合っていた。

 でも、殆ど接点もない秋国と春国だから。


 例えば、日本とアフリカみたいなものなのかもしれない。

 個人的に行く人もいるし、品物も入って来なくはないけれど接点がない。

 関わり合わなくてもやっていける。

 そんな関係性なのだろう。


「シュトルムスルフトの国王陛下は、アルケディウスに早馬を出してフェイを返せと要請すると言っていましたけれど」

『心配するな。断りの返事を返しておく。そもそも証拠がある話ではないしな。

 神殿への登録、文官試験の合格と立場などを理由とすれば、十分断れるだろう。

 新年の参賀の時に改めて要請があれば考えるが、今回はお前がしっかりとフェイを連れて戻ってくるのだ。其方の判断による拒否を許す。

 正式な早馬が来たら、同様の返事をしておくし、必要な文書その他があれば整えておく』

「ありがとうございます」


 皇王陛下のお許しを得たので、少し安心する。

 国交の為にフェイを差し出せ、とか言われるのが一番嫌だったからね。


『それからフェイ』

「はい、皇王陛下」


 通信鏡は基本一人用なので、私は場所を避けてフェイに譲る。

 フェイはスッと、鏡越しに立つ主に跪いていた。


『お前は皇王の魔術師だ。

 お前が家族を求め、シュトルムスルフトにどうしても帰りたいと望むのであれば、帰国、移籍を考慮しないでもないが――それはあり得ないな?』

「はい、皇王陛下。僕はアルケディウスの文官貴族です。

 我が忠誠は、アルケディウス皇王家と、主の元に」


 この場合、主というのは皇王陛下ではなく、リオンのことを指すのだけれど、陛下はそんなことに目くじらを立てたりしない。

 最初の採用の時から明言し、許可されていたことでもあるしね。


『ならよい。

 其方はマリカやリオンと並ぶ、アルケディウスの至宝でもある。

 国王陛下は勿論、王太子殿の口車にも乗ることなく、必ず戻って参れ』

「必ずや」


 フェイの思いを確認した後、皇王陛下はいくつかの指示事項と注意点を示して通信を切った。


 シュトルムスルフト側は、私達が即時通信でアルケディウスと連絡を取れることを知らない。

 いざ、国王権限で何か無理を押し通そうとした時には、武器にできるだろう。


「とりあえず、フェイは呼ばれない限りは外出禁止でお願い。

 表に出ると、見世物になってしまう可能性が高いから」

「解りました」

「皆さんも、フェイが魔術師であることは絶対口外しない事。

 ないと思いますが、破ったら厳罰に処します」


 報告会の後は、今後の方針確認をみんなでする。


 基本、余計な事はしない。

 調理指導と食材関連の相談のみ。

 向こうから依頼されない限り、『精霊神』の復活儀式も行わない。

 『精霊獣』様からの依頼があれば、その限りではないけれど。


 そう言えば、『精霊獣』お二人を大聖都以降見ていない。

 ステルス機能全開の様子だ。

 アーヴェントルクやフリュッスカイトの時と同じように、この国の『精霊神』の状態について調べているのかもしれないと思った。


 色々とお聞きしたいことはあるのだけれど、仕方ない。


 フェイについては、原則、外には出さないと決める。

 フェイのお母さんと思しき方と、フェイがどのくらい似ているか解らないけれど、マクハーン王子と近しいレベルで似ているのなら、見ただけで連想されてしまう可能性が高いだろう。

 王女は『聖なる乙女』として、国では顔が売れていたようでもあるし。


 最初の謁見で主要大貴族達にその存在を知られてしまったのは失敗だったかな、と思うけれど、彼はあくまでこの国の王族ではなく、アルケディウスの文官。

 本人の要望が無い限りは証拠もないし、シュトルムスルフトには渡さない。


 それを皇王陛下の許可も得たし、それで押し通す。


「文官の皆と成人前の子ども達は、要請があるまで離宮から出ないで作業を行って下さい。

 アルは予定通りに、シュトルムスルフトでの契約関連を進めて。外出時はハンスさんやウルクスと一緒にね」

「はい」

「リオンとカマラは護衛士として同行をお願いします。セリーナは魔術師として。

 基本、私から離れないで。求婚の申し込みとか、決闘とか多くなりそうだから」

「私はついていかなくてもいいですか?」

「ミーティラ様について頂けると心強いし、ありがたくもあるんですけれど、話を聞くに、プラーミァとの確執はかなり根深そうなので、離宮の警護と対応をお願いします」


 ミーティラ様には、プラーミァ時代の知識その他で裏から支えて頂こう。


「代わりにヴァルが入って。護衛が女子どもと侮られることもありえるから、大人の男性がいた方がいいと思う。

 離宮の仕切りは、いつもの通りミュールズさん。

 話が解らない人が来たら、モドナック様とミーティラ様でお願いします」

「かしこまりました」

「お任せ下さい」

「今までとは違う雰囲気の国なので、大変だとは思いますが、力を合わせて乗り切っていきましょう」

「「「「「はい!」」」」」


 私の随員は、どうしても女子どもが多い。

 男尊女卑を謳う国で、本格的な行動を始めた時、どういう対応を受けるのか、心配ではあるけれど。


 私は絶対に、皆、誰一人欠かすことなく国に連れ帰る。


 その為に、気合を入れ直したのだった。

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