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皇国 大祭の準備とアルケディウスの劇団(未満)

 秋の戦が始まり、街は大祭の準備に慌ただしくなる。


 定例の戦は、移動に往復約二週間。

 戦が最大で二週間。


 約一月の大規模なもので、終了して帰還した翌週の木の曜日から、国の祭り。

 年に二回、大祭が開始されるのだ。


 大祭はアルケディウスだけでなく、各領地の街でも行われる。

 特に秋は収穫祭なども兼ねていて、賑やかに行われるのだという。


 でもやっぱり、首都の大祭が一番賑やかで、沢山の人が集まるのは言うまでもない。


「大祭は、教会にとっても一番大きな行事でございます。

 神殿長におかれましては舞の奉納の後、礼拝にお出まし下さいますようお願い申し上げます」


 アルケディウス神殿の神殿長補佐、フラーブがそう私に要請してきたのは、大祭に向かった兵士達を送る前の話だ。


「奉納舞はしますけれど、それで終わりではないのですか?」


 私は首を捻ってしまう。

 アルケディウスの大祭では、王族が神に感謝と祈り、そして力を捧げる奉納の舞が行われる。


 王族の姫。

 いない時には王妃か皇子妃が行う決まりなので、養女とはいえ、私は王家にいる限りは結婚するまで行う様に言われている。


 夏の奉納舞の衣装はノースリーブで寒いと言われて、結局、新しいドレスを作ったのだ。

 綺麗ではあるのだけれど、勿体ない。


 ちなみに舞を捧げる相手は、アルケディウスの『精霊神』ラスサデーニア様。


 今までは封印されていて身動きが取れなかったようだけれど、今は無事復活。

 端末である精霊獣を使って、あちらこちら遊び歩いているらしい。


 まあ、本神曰く。


『遊び歩くなんて失礼だな。単なる視察だよ。

 子ども達がどんな生活をしているか、どこに精霊の力が求められているか。

 自分の目で見て歩くのが一番だからね』


 だそうで、最近は見ない時は本当に見ない。


 ステルス機能に近い能力があるみたいで、『精霊神』様が見られたくない、と思うと、私達には姿を捕える事さえできなくなるのだ。


 必要な時にはちゃんと来て下さるし、


「『精霊神』様を人の世の理で括る事はできまい。

 無理に捕えたりすることは厳に慎む様に」


 と皇王陛下からのご命令もあるので、自由にして頂いている。


 奉納舞については、


『ここにあるのは、純粋に端末。本体に力を注いでくれるのはありがたいよ。

 マリカの力は、質も量も最高だから、いろいろやりやすくなる。

 踊りを見るのも楽しみだしね』


 とのことなので頑張るつもり。


 もう異空間に引っ張る様な事はしないと言って下さったから、しっかりとした舞と力を捧げる予定なのだ。

 でもフラーブは、


「『精霊神』様に力を捧げる儀式は勿論、重要です。

 ですが、『神殿』としては大祭の大礼拝も重要なことなのです」


 と首を横に振る。


「大礼拝とは? 私、参加した事無いので解らないのですが」

「大祭の時の神殿長の仕事としましては、『聖なる乙女』の儀式の案内と立ち合い。

 その後に行われる大礼拝の運営がございます。


 神殿ではその日、姫君の舞が行われた後、一年の内でも大規模な礼拝が行われるのです。

『神』と『精霊神』の恵みに感謝する礼拝が」


 いつもの礼拝と内容そのものは一緒。

 神殿長が聖典を読み、皆で讃美歌を歌い、祝福を与える儀式を行うのだという。


 ただ、この日は特別な祭りの日なので、神殿長は光の精霊術を行って、人々に奇跡を見せていた。

 私にもそれをやって欲しいという……。


「式典の後は疲れるから、ゆっくり休みたいのですけれど」

「そこをなんとか……。『精霊神』が復活し初めての大祭にございます。

 人々の期待度も高い。ぜひ」


 大祭前後は神殿にとっても一番忙しい時期。

 なんとか顔を出して欲しいと泣きつかれてしまうと、否とはなかなか言えない。


「私はお城での行事もたくさんあるのですけれど」

「大祭の初日だけでも構いません。後は大祭後に、各地の地方神殿の長たちが集まり成果を報告する会議に顔を出して頂ければ」


 あー、そっちは確かに進展を確認しないといけないか。


 地方神殿の人達には仕事を頼んである。

 人々への教育や、地方の産品の確認など。


 大祭の間に行われるお茶会と舞踏会で大貴族領地の声を聞き、神殿でできることは割り振る。

 でないと地方の活性化がなかなか進まないものね。


「お父様やお母様と相談しますが、大祭初日の礼拝と、終了後の会議は参加を前向きに検討します。それで勘弁して頂けませんか?

 流石に皇王妃様主催の大貴族達との顔つなぎのお茶会や、最終日に行われる社交期間終わりの式典を抜ける訳には……」


「解りました。それでも構いません。

 どうか、よろしくお願いします」


 去年は、初日の奉納舞の後、『精霊神』復活についての事情聴取はあったけれど、ゆっくり休む事ができた。


 礼拝に参加するとしたら、事情聴取その他の時間を当てる事になるのだろうな。


 今年も側近の皆に、祭りを楽しんでもらいたいな、とか。

 あわよくばエンテシウスの劇の確認という口実で、大祭に私も行きたいなと思ったのだけれども、ちょっと無理っぽい。


 エンテシウスには大祭が始まる前に、館に来て貰って舞台を見せてもらうしかないだろう。


 相変わらず、スケジュールみっちり。

 孤児院にこれじゃあ行けないよ。


 と思った時、私は良いことを思いついたのだった。


「え? エンテシウスの劇の初演を孤児院で行う、ですか」


 私の言葉に、ミリアソリスが小首を傾げた。


「ええ、本当は大祭初日に初演してもらい、その場に私か、無理なら側近に行って貰おうと思ったのです。でも大祭の間、私は時間を取ることが難しい様なので、軍が帰還して忙しくなる前に、一度見せて欲しいと思って。

 お母様には許可をとって、孤児院長にも話を通しました」

「それは理解できますが、何故孤児院で?」


 私個人の理由は山ほどある。


 子ども達に演劇を見せてあげたいな、という意図が実は第一。

 今年は人数も増えたから、去年のように祭り見物に出してあげられないかもしれない。


 出してあげたいと調整しているけれど、全員は難しいと言われているから。

 なら、せめて祭りらしい雰囲気を楽しませてあげたいな、とも思ったのだ。


 劇俳優になることを目指している子どももいる。

 彼らに舞台裏から、劇を作るというのがどういうことなのか見せてもあげたい。


 加えて。


「エンテシウス達も、いきなり広場を埋め尽くす大観客、または大貴族や皇族の前で見せるのは緊張するでしょう?

 加えて、子どもと言うのは一番、ある意味難しい観客です。大人のようにつまらなくても我慢してはくれません。つまらない、飽きたと思ったら途端に集中力が切れてしまうでしょう」


 向こうの世界での読み聞かせ会や演劇鑑賞会を思い出す。


 子ども達はお話や劇は大好きだから、比較的集中して見る。

 でも、つまらないと思うと即座に騒ぎ出したりするので、引率が大変だったっけ。


「今年の演目は大祭の精霊をモチーフにしたものでしたよね」

「はい。正式名称を『精霊の夢祭り』としたそうですわ。今、必死に稽古に励んでおります」

「なら、子ども達も見ていて楽しめると思います。

 私と、子ども達。どちらも途中で飽きさせずに最後まで劇の世界に引き込めたら、どんな観客も引きつけられると思いますよ」

「解りました。そう伝えます」

「大祭開始前の良い日を伝えて下さい。日程は合わせますから」

「かしこまりました」


 程なくエンテシウスから返事が届き、大祭一週間前の空の日に、孤児院での演劇鑑賞会が正式に決まった。


 でも。


「私も行きますからね。貴女が変な事をしでかさないか見張っておかないと」


 とお母様が参加を表明したのは、信用が無いなと思いつつも想定の範囲内だった。


 けれど、いざ明日が上演日という日。

 いきなり私は王宮に呼び出され、御下命を賜った時にはさすがに驚いた。


「マリカ。

 その劇の初演、私にも見せるように」

「え? 陛下??」


 他ならぬ――皇王陛下から。

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