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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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大聖都 封じられた大神殿ともう一人のリオン

 リオンの『説法?』は、今までにないもので、参加者達の間でも物議を醸したようだ。

 と、カマラが教えてくれたのは、私が儀式を終え、禊と着替えを済ませた後。

 自室で寛いでいる時のことだった。


「アル様とは、ゆっくり話をすることはできなかったのです。

 私も聖堂から離れることは流石にできませんでしたし」


 祝福の間、前に立つ私の両脇にはリオンとフェイがいた。

 だから、その間だけカマラは少し離れた祭壇下で待ってくれていたのだ。

 祝福を求める人の中に、不審者が紛れ込まないように。


 私とアルの様子を察してアルを追ってくれたカマラだけれど、私の護衛があまり長く離れるわけにもいかないし、アルやゲシュマック商会が不審がられてもいけない。

 軽く挨拶をするに留め、その時にこの手紙を預かったのだという。


「今までの『神々』の偉大さを伝える逸話とは違いすぎましたから。

 ですが驚いた者も、苦情や責めを紡ぐことは無く、逆に殆どの者はリオン様から発せられる、威厳というか覇気というかに気圧され、その言葉を胸に刻んだ様子。

 それは各国王も例外ではなく。

 マリカ様の透き通るような讃美歌と合わせて、上位者からの祝福。

 神の言葉として受け取ったようでした。

 神官長にして『元勇者』『神の子』。

 リオン様の御威光は、皆に知れ渡ったのではないでしょうか?」


 実際、祝福の時にはかなり手が震えていた人や、涙ぐんでいた人もいた。

 大げさだな、と思ったけれど、私でさえ感じたリオンの圧倒的な『威厳』。

 神々しさは、精霊神様達どころか精霊だって見た事の無い人々には、刺激が強すぎたのかも、だよね。


「それで、これは……どういう意味なのでしょう? リオン様の中に?」

「あ、あんまり気にしないで。解っていることだから」

「解っていること?」


 アルからカマラが託された羊皮紙には、リオンの中の存在に注意しろと警告されていた。

 つまりはオリジン。

 リオンの中のもう一つの人格の事だろう。


 私は手紙を折りたたみながら、カマラに説明する。


「うんと……超大雑把すぎる話になるんだけれど、リオンの中には『神』に近いような力が宿っているの。生まれつき。

 リオンの人格とは別の形で」

「ああ。今のリオン様になる前の、元魔王マリク、ということですか?」


 カマラは以前、リオンがエリクス達の罠で人格が変わった時のことを覚えている。

 その時にざっと事情も説明したので理解が早い。

 オリジンうんぬんまでは知らせていないのだけど。


「そう。今は同化して、記憶や知識を共有しているらしいけれど」

「その人格が分離して、リオン様の中で何かまた悪さをしようとしていると?」

「え?」

「マリカ様?」

「あ、そうなのかも、ね……」


 カマラの何気ない言葉に、私は脳を揺さぶられたような気分だった。


 なんだか、今まで自分が大事なポイントを思い違いしていたことに『気付く』。


 まさか……。


「カマラ。昨日は魔王城に戻ったの?」

「いいえ。大聖都の中で寛がせて頂きました。

 リオン様から、護衛が大事な式典の最中、許可を得たとはいえ簡単に外へ出歩くなと言われまして。

 マリカ様からティラトリーツェ様に御伝言があると告げたのですが……」

「リオンが、止めた?」

「はい。ですが、私も道理だと思いましたので、自室で過ごしました。

 どうやら式典が始まるので、大聖都の許可が無い者の出入りは封鎖されているようです。

 クラージュ様も、今は中に入れないと言っていました」

「クラージュさんが立ち入り禁止?」

「はい。通信鏡の調子が芳しくなく、切れてしまい、それ以上は聞けなかったのですが?」

「え? 通信鏡が電波障害なんて、今まで一度も……!」


 カマラが所有しているのは、クラージュさんと直通のものだけだ。

 仕事の時は私の多方向通信ができるものを貸しているけれど、昨日は私の手元にあったから、お母様達への連絡はできない。


 カマラに言われて、私は自室に持ち込んだ通信鏡を起動させてみようとした。

 でも、うんともすんとも動かない。


「うそ……」


 こんなこと、はじめて……だ。


「なんで?」

「確かに不思議ですね。今まで、プラーミァに行こうとも通信が滞ったことなどありませんのに」

「あ、そうだ。リカチャンは?

 リカチャン? 聞こえる? 返事をして」


 私は指輪に宿る精霊に呼びかけた。

 この指輪は婚約指輪だし、力のある魔術道具だから持ち込みが許されたのだ。


 でも、無反応。

 ただの綺麗な蒼水晶が輝いているだけ。


 おかしい。

 何かが起きようとしている?


 いや、もう起きているの?


「カマラ。お願い!」

「マリカ様?」

「今日の夜、フェイの所に行って、この状況について伝えて。

 そしてできるなら、フェイの許可を得て大聖都の外に行って、外の皆さんと話をして欲しいの。

 何か、起きているのかもしれない」

「解りました。急がなくてもいいのですか?」

「リオンが目を光らせている間は、無理だと思う。

 でも今日は、夜遅くになったらリオンの注意も多分、外れると思うから」

「え? それは……」

「ごめん。詳しくは内緒。

 とりあえずは昨日と同じように振舞って、リオンを油断させて。

 夜の刻の頃からなら、きっと……」

「解りました」


 リオンが来ないうちに、と思って、私は急いでカマラを外に出した。


 フェイがリオンの状況を理解していて協力しているのなら、完全な詰みだけど、昨日までの様子ならそれは無い。

 いつものように、リオンは一人で抱え込み、一人で背負おうとしているのだ。


 その後は、マイアさんが運んできてくれた食事を食べて、疲れたから今日は明日の為に早く眠る、と告げて一人になり、寝台に横になる。


 リオンを。

 オリジンを、なんとか説得する。


 何をしようとしているか、そもそもが解らないけれど、リオンに一人で背負わせるのはイヤだ。

 間違っている!


 目を閉じただけで、眠ってはいなかったつもりだけれど、実際には疲れからか、意識は朦朧としていたのかもしれない。


 そして。


 気が付いた時、私は一人、外に立っていた。


 見覚えのある舞舞台。

 聖なる祭壇の中央に。


 昏い帳が完全に降りた深夜。

 夜の刻。


 周囲に人影も灯りも無く、私達を照らすのは、金砂銀砂を振りまいたかのように満天に輝く星空だけ。

 どこまでも見通せるような、星の海の下で。


「マリカ。お前には選択権がある」


 静かな声が、そっと私に触れた。

 振り返り、微笑みを作る。


 解っている。

 解っていた。


 自分が部屋から移動させられた以上、一人ではないことは最初から。


「リオン……」


 暗闇の中に、リオンが一人佇んでいることも。

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