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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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大聖都 神殿長と大神官の会話

 誤解、すれ違い、遠ざかり。

 大好きな人との接触不良は、心と体に不具合を引き起こす。


 心臓が痛い。吐き気もする。

 大事な儀式前なのに、体調、心境、共に最悪だ。


「リオンは、私のことなんてどうでもいいのかな?」


 ソレイル公子の件で来てくれたフェイに、私は思わずそう愚痴を零した。


 ズルいやり方だって、解っている。

 こんな言い方をすれば、フェイは必ず。


「そんなことはありませんよ。リオンの行動原理のほぼ全てはマリカで在る筈ですから」


 って慰めてくれることは解っている。

 茶番に近いやりとり。でも、今の私にはそれが必要だった。


 ため込んでいた思いをフェイに相談できただけでも、少し心と身体が軽くなったから。


「ここのところ、色々あって。でもリオンとは全然会えなくて。

『神官長』に。神の代理人になって『精霊の使命』の方が大事になっちゃったんじゃないかな? なんて思っちゃうんだよね」

「リオンですから、性格からして自分に与えられた『精霊の使命』を投げ出すことはできないでしょうが、それでも。

 この星を守るのは、マリカと子どもと、大事な者達を守ることと理解しているからこそ、仕事に、役割に従事している筈です」

「そう、だね。うん。解ってはいるんだけど……」


 リオンが何かを選択し、しようとするのは常に私達の為。

 昔っから変わらない。それは解っているし、信じている。


 でも、その為に必要だと思えば、自分の身を投げ出すことなんか平気でやっちゃうから心配なのだ。


「ソレイル公子の件については、僕も知りませんでした」


 私が少し落ち着いたのを見てとったのだろう。フェイは本題に話を移す。

 やっぱり、フェイにも話をしていない。リオンの独断だったようだ。


「僕一人では大変だろうから次世代を育てろ、という話はありましたが、僕達の跡を継ぐ、ということならレオがいますからね」

「だよね? なんで、ソレイル公子なんだと思う? 即戦力が欲しかったってこと?」

「それはあると思います。ソレイル公子以外の王子、皇子は皆、国の後継者ですから。

 彼なら大公閣下もおっしゃったとおり、大神殿に引き抜いても問題ない、と思ったのかもしれませんね。リオンはソレイル公子のことをかなり買っているようなので」

「そうなの? 前に決闘騒動があったから嫌ってるかと思ってた」

「彼の力は認めています。能力も含めて。

 決闘を仕掛けられたことも、マリカを想ってのことと解っていますから、怒ってはいませんでした。むしろ、決心がついたと感謝していたくらいですから」

「そうだね。あれから、リオン。立ち止まらなくなった気がする」


 ソレイル公子に発破をかけられて、私の隣に立つのに相応しい男になる為に、って全力疾走し始めた。

 そのせいで、むしろ私は置いて行かれた感があるのだけれど。


「ただ、今はリオンと二人体制なので、そこまで困ってはいないんですよ。僕達もまだ十代で、そんなに直ぐに世代交代を考えなければいけない話ではありませんし、レオもいますから」

「コスモプランダー討伐前ならともかく、ね」


 今のアースガイアは平和そのものだ。


 七国は良い指導者に恵まれ、『神』や『星』、精霊神様の監視の元、争いや戦争もなく、様々な技術をなんの憂いも無く育てることができている。


 地球から連れて来た移民の子ども達の受け入れが唯一の懸念事項ってくらいで、内需拡大と技術革新に皆、ウキウキ、イキイキと取り組んでいる。


 今より、良い明日が来ることを疑っていない。


 そんな今、リオンは何をしているんだろう。

 しようとしているのだろう。


 他国から王子様を引き抜いてまで。


「とにかく、リオンに確認してみます」

「今日、リオンはどこに?」

「城下との打ち合わせだと思います。明後日から式典が始まるので、警備関係の最終確認に。

 前々からの面会予約で相手が待っているからずらせない。

 マリカには後で。行けたら行く、と言っていたと伝えてくれ。だそうです」

「行けたら行くって、それって行かないって言ってるのと同じじゃん」


 私だって社会人の暗黙儀礼集くらい知っている。


 そもそも本当に悪いとか、説明したいとか思っているのなら、何を置いても来るはずだ。

 それなのに忙しいを理由に避けて、逃げているということは、式典までの時間稼ぎのようにさえ感じる。


 最悪、式典の忙しさに紛れてうやむやにしようとか。


「まあ、ソレイル公子の件は、うやむやにするには大きすぎます。

 今回は公子もお見えになっていない、とのことですし、礼大祭が終わってからゆっくりと話をしましょう。その時には、僕もリオンを逃がしませんから」

「お願い」

「式典が終わったら、約束通りマリカとリオンが二人で過ごせる休みを必ず取らせます」

「あれ、冗談じゃなく本気だったんだ」

「勿論本気ですよ。

 有給休暇取得は、大神殿の職員の義務ですからね。トップがしっかりやって見せないと、下も続きません」

「そうだね」


 中世だとどうしても、滅私奉公みたいなところがあったけれど。多少はそれも仕方ないところもあるけれど。


 確かに、仕事が大変なら、それだけの報いがあってしかるべきだ。

 見合う給料とか、職場待遇とか。やりがい搾取だけでは続かない。続けてはいけない。


「マリカもですよ。休める時はしっかりと休む。そうでないと貴女に仕える者達も休めないのですから」

「うん」


 私に付く護衛騎士が他にいないので、カマラには本当に休みなしで努めて貰って申し訳ない位だし、セリーナもなかなかヴァルさんに会いにいけないし。


 女騎士も、カマラやミーティラ様の活躍で徐々に増えてきた。地球移民の子達からも騎士を目指したいという声も出てきたから、いずれはローテーションを組んで、里帰りや旦那さんとの時間も過ごさせてあげたい。


 産休に入ったら二人にも、今までの分、ゆっくり休みを取って貰って、恋人との時間を過ごして貰おうと思う。


 彼女達が今後のアースガイアのキャリアウーマンの先駆けになるだろうから。


 と、また仕事のこと、考えちゃった。


「とりあえず、僕も戻っていいですか?」


 フェイの言葉に私は慌てて頷いた。

 確かに神官長が、礼大祭前にいつまでも仕事場から離れてはいられないだろう。


「あ、ごめんね。明後日から式典が始まる、っていう忙しい時に呼び出して」

「いえ。僕も知らなかったことですから、ここで聞かせてもらって助かりました。

 リオンに会ったら話を聞いて、マリカの所に行くように伝えます。

 明後日から式典なので難しいかもしれませんが」

「多少、夜遅くなってもいいからって伝えて。

 自室に直接飛ぶことだって、リオンにはできるでしょ?

 明日には会えるけど、その時は『神官長』と『大神官』で、予定がびっしり詰まってるから」

「解りました。あと少し、頑張って下さいね」

「ありがと。フェイも無理しないで」


 フェイは転移術が使えるから、疲れた時にはアルケディウスにこっそり戻って、ソレルティア様とレオンハルト君に会いに行っているそうだけれど、大祭と私達のお休みが終わったら、のんびりする時間を作ってあげたいものだと思う。


 さっき、フェイも言ったけれど、滅私奉公を強いることなく、上司も気軽に休みを取れるのがホワイト企業というもの。

 ブラック職場は、なるべくアースガイアでは根絶したい。


 そうして私は、明日から始まる式典の準備を万全に整えた上で、ソファに座ってリオンを待った。


 結論から言うと、リオンは翌朝の出迎え。

 神官長としてのエスコートまで、私の所に来なかったのだけれども。


 代わりに、いつの間にか寝落ちした私の元に、別の来客が訪れていた。

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