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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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空国 神々の作戦

 大祭が無事、幕を開けて間もなく。


「改めまして。その節はお世話になりました。キュリッツオ様」

「いや、こちらこそ、だ。

 悪いね。マリカ。うちの子達が色々と心配と迷惑をかけて」


 淡い山吹色の空間に、私は足を踏み入れた。

 マルガレーテ様のドレスと同じ、暖かい光に包まれるような感じがする。


 ヒンメルヴェルエクトが抱える火の王の杖の問題。

 最終的には、この国の守護神であるキュリッツオ様に話を通して頂くのが一番だろうと思ったから。


 そして案の定、光の精霊神、キュリッツオ様の第一声が『迷惑をかけて』だ。

 私の言いたいことは、既にご存じの様子。

 大公様や公子の言動を見て、気に病んでおられたんだろうなあ。きっと。


「アーレリオスもゴメン。子ども達がまさか、あんなことを言い出すなんて。

 僕も恥ずかしくなる強欲さだ」

「別にお前が謝る必要は無い。

 ああいうやる気の強さ、意欲は嫌いではないしな。

 フォルトシュトラムも故に黙って力を貸しているのだろう」


 私の横で、可愛い外見に似合わぬ野太い声を出すのは、お父さん。火の精霊神アーレリオス様、の精霊獣だ。

 精霊様達には外見なんてただのアバターでしかないみたいだから、きっと普通に見えているのだろう。


 金髪の青年は何の躊躇も無しに白い短耳兎に両手を合わせ、兎は鷹揚に頷き返す。

 見ている分には可愛らしくて、ちょっと和むけど。


「まったく。せっかくライエルシュトラムを返してやったのに。それで満足すればいいものを」


 ライエルシュトラム。

 光の王の杖の名前だ。


 マルガレーテ様が持ち出した杖は、(人格プログラム)本体(演算装置)に分けられて、魂の方は『神の翼』ノアの計算補助AIとして使われていた。

 アーヴェントルクの王の杖も同じで、コスモプランダーとの戦いが終わったので、『神』は両AIをナハト様とキュリッツオ様に返却したと聞く。


 時同じくして、本体である杖の方も両国に戻ったので、精霊神様達は(人格プログラム)本体(演算装置)を改めて合一させて、王族に授けたのだそうだ。


 そう言えば、夜の王の杖はエルディランドのダーダン様がお持ちだったけれど、光の王の杖は誰が持ってたんだろ?

 私は聞いてなかった。


「ライエルシュトラムの杖はプラーミァにあったのだ。お互い様ということにしておけばいい」

「え? プラーミァにあったんですか? 誰が持ってたんです?」

「お前も会っただろう? プラーミァのフロレスタ商会の子、ハイファだ」

「え? ホントに!? 彼も『神の子ども(地球移民)』だったんですか?」

「聞いていなかったのか? 杖を受け取り、返却を仲介したのはアルだぞ」

「聞いてませんでした。いつ頃だったんでしょう?」

「お前達がコスモプランダー討伐の決意を固めたあたりだった筈だ。杖そのものはラスを通じて、数日のうちにキュリオの手に返った」

「おかげで演算とか助けて貰って、少しは地上防衛が楽になったよ」


 そうだったんだ。

 マジで知らなかった。

 多分、言うタイミングがなかっただけだと思うけど、水臭いというかなんというか……。


「あ、でも、ハイファ君が杖を持っていたことを、プラーミァは知らなかったんでしょうか?」

「知らなかったのだろうな。

 知っていたら、おそらくヒンメルヴェルエクト同様に使っていた可能性がある。なんでもハイファは魔術師の適性が無く、また商人として生きたかったから使わなかった、と言っていたそうだ」

(AI)が抜かれていたから、杖の方から話しかけたり、助けたりもできなかっただろうしね。せいぜい彼の周囲の精霊に働きかけて、呼吸しやすくするとか、助けるのが関の山」


 ハイファ君が地球移民であるのなら、バニラを発見したことも偶然ではなかったのだと納得できる。

 彼が今の生活に満足しているのなら、私から何も言うことは無いし。


「僕が諫めて、プラーミァに杖を返せ、というのは簡単だけれど、それだと根本的な解決にはならないんだよね」


 困ったもんだ、というように肩を竦めるキュリッツオ様。

 確かに神の勅令なら、公子も従わざるを得ないけれど。


「はい。できればご自分から杖を返す気になって欲しいですよね」

「マリカ。魔王城の蔵に精霊(AI)のついた道具や杖は残っていないか?」

「あるにはありますし、ステラ様は言えば貸して下さると思います。でも……」


 実は、私も考えなくはなかった。

 オルクスさんが杖を返す代わりに、エルトゥリアの宝物蔵にある精霊石のついた杖や装身具を貸してあげること。


 でも。


「何処から持ってきたんだって話になって、さらにはヒンメルヴェルエクトだけズルいってことにもなりそうな気がして」

「ああ、それはありそうだね」


 ステラ様、というよりレルギディオス様は、これから目覚める最後の地球移民の中に有望な子がいたら、授けたい気持ちがおありのようだ。


 精霊石は、人間が死後、ナノマシンウイルスによってバイオコンピュータ化したもの。

 (人格)がなければ、ただの演算装置に過ぎない。

 けれど、魂を宿らせるという事は、死後、安らかな眠りや転生から遠ざかるという事。


 今ある精霊石達は、自分で選んで私達の元に残ってくれた優しい人達だから、辛い思いはできればさせたくない。


 加えて、数はそこまで多くは無いから、欲しいと言われても数は無いし、ホイホイ増やせるものでもないからね。

 貴重な品だ。持ち出しは慎重に。


「それに一番問題なのは、アリアンの考え方だろう」


 加えて、アーレリオス様が事実を突きつける。

 マルガレーテ様も言ってた。

 オルクスさん本人は覚悟が出来てるみたいだって。


 最終的な決定権は多分、彼ではなくアリアン公子にある。


「奴は王族として頭もいいし、精霊との親和性も高い。

 発想や創意工夫にも優れている。魔術師適性としてはグランダルフィ以上だ」

「随分と買っているんですね」

「別にグランダルフィをアリアンより下に見ている訳ではない。

 王としてのバランスの良さと強さは、グランダルフィの方が優れている。魔術師適性だけなら、ガルディヤーンの方が上だし」


 アーレリオス様は、ふん、と照れたように鼻を鳴らした。

 なんだかんだ言っても、自分の国の子が一番可愛いよね。


 その証拠に、キュリッツオ様もアリアン公子の弁護を始める。


「あの子はさ、負けず嫌いというか、こうと決めたら周りが見えなくなるというか、周囲の気持ちなども慮れなくなるところがあって。

 なかなか自分の過ちを認められない。王族だから変に謝ることは弱みを見せる事になるから、っていう教育方針もあったし。

 優秀なんだけれど、承認欲求が高めなんだよね。

 小さい頃から褒めて貰えなかったから、人の役に立ちたい。認めて欲しいって気持ちが強いんだ」

「え? あんなに優れた王子様なのに?」

「頑張っても、努力して何かをやり遂げても、公子だから当たり前って感じ?

 特にヒンメルヴェルエクトは議会制だから、王族もけっこうミスやその他は突かれたりするし」

「じゃあ、なおのこと弱みは早めに解決した方がいいのでは? 議会に他国国宝の着服がバレたら大問題ですよ」

「うん。ただ、今は他国に負けたくないって気持ちが先走っているみたいだ。

 特にアーヴェントルクのヴェートリッヒや、リオン。フェイ。

 少し下に見ているけれど、フリュッスカイトの公子やエルディランドの大王も魔術が使えるようになったしね。

 前ばかり、高い所ばかり見ていて、足元の靴紐がほどけかかっているのに気付かない」


 強引に取り上げて返却をさせること、そのものは簡単にできる。

 精霊神様に声をかけて頂くとしても、議会に手を回すとしても、プラーミァにチクるにしても。


 でも、それだと本人にしこりが残るし、周囲からも責められる。

 可能なら、自分から返して欲しい。

 その方が絶対に、今後のヒンメルヴェルエクトの為にもいい。


「承認欲求……」

「何かいい考えがある? マリカ」

「自分が特別で、大切だと思えれば、罪を犯すことを恥ずかしいと思えるかもしれません。

 他人と比べずに、自分自身を認めて貰えれば」

「褒めてあげればいいの? 僕が?」

「いえ、精霊神様は最後の切り札にしておきましょう。

 これから、ずっと一緒にいるトクベツなヒトが適任かと」

「誰? マルガレーテ?」

「そうではなく、ちょっと耳を貸して下さい」


 他の誰がいるでもない疑似クラウドで、意味は無いと解っているけれど、私はお二方を手招きして、その耳元にこしょこしょと、計画? 作戦を囁いた。


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