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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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皇国 幼子たちへのおくりもの

 無事にアーヴェントルクでの大祭を終えて来た私は、出発前の約束通り、明後日からのエルディランドの準備その他を一部、側近の皆に任せてアルケディウスの子ども巡りをさせて貰った。


 これも、大事な仕事だから!

 サボってるわけじゃないよ。と力説。


 まずは王宮。

 新皇王陛下ケントニス様にご挨拶しに行く。


「回復し、公務に復帰できるようになったのは喜ばしい事だが、無理はするなよ」

「貴方は身重なのですから、あまり激しい振り付けは避けて、ゆったりと。でも技術で魅せなさい。今なら、それができる筈です」


 皇王妃アドラクィーレ様からも、優しく適切なアドバイスを頂いた。


「それで、各国の様子はどうだ? 精霊国で父上達はどうしておられる?」


 と、各国の情報にも興味津々の御様子だったけれど、今、私は大神官だし。

 アルケディウスだけ贔屓はできない。


「上皇王陛下は、毎日を楽しんでおいでのようです。

 その他、各国についてはおいおい。でも、それぞれ様々な工夫や次世代への取り組みをしておいでです。うかうかしていると置いて行かれるかもしれませんよ」


 と、発破だけはかけておく。

 詳しい話は後でレポートを提出するということで許して頂いて、それから私的な今日の目的地の一つ、保育室へ。


「「マリカねえさま!」」


 子どもがいれば、人数は少なくても部屋の中は賑やかだ。

 楽しそうな笑い声が弾けている。


 一緒に積み木遊びをしていたらしい双子ちゃんが、私の訪問に同時に気付いて駆け寄ってきてくれた。

 その後にトコトコ近づいてくるのは、ケントニス皇子の息子、ラウル君。


 ガルディヤーン王子とは、生まれた時期が数か月くらいしか変わらないから、月齢的には三歳丁度くらい?

 でも、大人や従兄妹に囲まれているせいか言葉も早いし、頭も良さそうだ。


「マリカさま。おひさしぶりです!」

「丁寧なごあいさつをありがとう。ラウル君。

 楽しく遊んでいますか?」

「はい。まいにち、フォルにいさまと、レヴィーナねえさまがきてくれるので、うれしいです。あと、リグや、今日はレオンも」

「ああ、ティーナが入ってくれているのですね。ソレルティア様も」


 子ども達と一緒に遊んでいた女性二人が、こちらを見る。

 立ち上がって礼を取ろうとしたのを手で制して、私が膝を付いた。


「レオン君、フェイが言っていたとおり、首回りがしっかりしてきましたね。

 頬も薔薇色で」


 フェイの子ども。レオン君。

 もう生後四ケ月は過ぎている筈だ。


 人見知りが激しくてよく泣くと聞いていたけれど、お母さんに抱かれているせいか、ニコニコして機嫌がいい。

 ぷくぷくした頬っぺたをつん、と指で突くと、心地よい手ごたえが返ってきた。


 ああ、子どもって可愛い。

 色々とささくれ立っていた心に、可愛さ成分が染みて来る。


「今はまだ一緒に遊べるわけではないので、そんなに頻繁には来ないのですが、マリカ様がいらっしゃるとフェイに聞きまして。

 それに、ここに来ると大きい子達に構って貰えるのが嬉しいのか、寝つきなども良いのです」


 ソレルティア様はそう言って、我が子を愛しげに見つめながら微笑する。

 その横ではティーナも。


「ぼく、もうレオンをだっこできるんだよ! ほら!」

「ああ! 気をつけなよ。フォル。また、おっことす!」

「大丈夫ですよ。リグ。フォル様は気を付けて下さっていますから」


 私に良い所を見せたいのか、ソレルティア様の抱くレオン君に手を伸ばすフォル君。

 子どもの中で最年長のリグが少し困った顔で諫めるけれど、ソレルティア様は笑顔でフォル君に応じ、レオン君を渡してくれる。

 絨毯の上でクッションも敷いてあるし、いざとなれば助けられる距離だからかな。


 フォル君はお尻をちゃんと手で押さえて、思ったよりもしっかりした手つきで抱っこする。


 子どもって、赤ちゃんが好きな子が多い。

 普段は乱暴な男の子も、ここまで力の差があると、幼くか弱い存在に対して自然と優しく接するものだ。


 レヴィーナちゃんも抱っこしたそうだったけれど、我慢している感じ。

 それを読み取ってか、ソレルティア様が、フォル君がレオン君を返した後に、レヴィーナちゃんにも抱っこさせてくれた。

 柔らかく抱き方を教えてあげる様子は、本当にお母さん、だね。


「あかちゃんって、やわらかくって、あまいにおいがするよね」

「乳の匂いでしょうか? あまりにも近くにいるためか、私は気にならないのですが」

「そうかもしれません。

 愛された子どもの、幸せな香りです。

 ソレルティア様。レヴィーナちゃん」


 どこか懐かしい空気を吸いながら、私は二人に問いかける。


「私も抱っこさせて貰っても良いでしょうか?」

「もちろんでございます」

「どうぞ」


 膝立ちして、レヴィーナちゃんが手を伸ばして渡してくれたレオン君を受け取る。


 次から次へと抱っこをリレーされているせいか、私の手に渡った時もぴくり、と身を震わせたレオン君。

 でも、泣いたりはしない。


 逆に、ふにゃっと身体の緊張を解いた気がする。


「すごい。レオンがなかない!」

「なんだか、うれしそうね?」

「そうだったらいいけれど。

 改めまして、初めまして。レオン君」


 出産に携わり、顔は見ていたけれど、抱っこするのは初めて。


 フェイの子ども。

 お父さん譲りの銀の髪。

 ぱっちりと開いた瞳は空の青。


 まだそんなにはっきりとは見えていない筈だけれど、周囲の様子を感じてはいるようだ。


 両親から精霊(ナノマシンウイルス)の力を受け継いだ、生まれついての能力者。

 でも、そんなのは関係なく、ただ、もうひたすらに可愛い。


 フェイが親バカになるのもよく解る。


 ぎゅっと握りしめられていた手が、ひらひらと空を彷徨うように開き、私の髪を掴んだ。

 把握反射かな。かなり強い。


 髪の毛をそっと外し、指先を当てると、私の指を掴んでくれた。

 生理的な反射であるとは解っていても嬉しいね。


「レオン。貴方にいつも精霊の恵みと祝福がありますように。

 ありがとうございます。ソレルティア様」


 思いっきり赤ちゃんを吸って、私はレオン君をお母さんに返した。


 やっぱり、お母さんが一番みたい。

 レオン君も目に見えて身体の力を抜き、安堵の様子を見せている。


「ああ、そうだ。

 これ、みんなにお土産です。新しい玩具とゴムボール」

「ボール、すきです!」

「ゴムボール? でも、まえのよりやわらかいね?」

「アルのゲシュマック商会が研究を重ねてくれて、中の空気が増えましたから。

 ぶつかっても痛くありませんよ」

「わあ、ありがとう! ねえさま! リグ、ラウル。これでもっとボールあそびたのしくなるよ!」

「お部屋の中でボール遊びする時は注意して下さいね」

「わかってる! リグ、ラウル! むこうの運動部屋で遊ぼう!」

「うん」

「フォルにいさま!」

「ああ! 私もいれて!」


 本当の兄弟のように、分け隔てなく、身分の差も無く、駆け出して一緒に遊ぶ子ども達。


 この子達も、もう少ししたら王族教育とか身分差とかで、こう無邪気に遊んでいられなくなるのかもしれない。


 でも。


「子どもは毎日、元気に笑って、遊んで、食べて、眠れればそれで満点ですから。

 勉強や礼儀作法は、本人が必要だと思えば自分で学ぶし、勉強に遅すぎるなんてことはないですし」


 ガルディ君のような事態は、今後、絶対に防止する。


 その為に――。


「隣の運動部屋にも職員がいますよね?」

「はい。男性一人と女性が二人。

 マリカ様のおっしゃるとおり、巧技台などを使って体幹の訓練などを始めていますので、人の目は手厚くしてあります」

「じゃあ、少し向こうはお願いして。

 プラーミァで新しい王族の教育方針とか、話し合ってきたんです」

「新しい教育方針、ですか?」

「そう。ティーナ。

 皇王陛下達から、王族教育についての話や命令は?」

「徐々に礼儀作法や読み書きを、という話も伺っていますが、今は具体的な事まではまだ」

「じゃあ、私が皇王陛下達にお話しするから。

 ティーナにも覚えて……ううん、理解して欲しい。絶対体罰禁止と……それから」

「私もお話を聞かせて頂けますか? レオンを育てていく為に、学んでいきたいと思いますので」

「ありがとう!」


 子どもを育てる者達に、私はまず教育の手を伸ばすことにしたのだった。

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