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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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大聖都 次代の子ども達

 無事、プラーミァの保育実習は大成功に終わったと言えるだろう。

 生まれて初めて。

 記憶としては転生ぶりの保育参観が終わって、とりあえずホッとした。


「そういう訳なので、フェイ。タイミングを見てガルディヤーン君の魔術適性と視力検査、してあげてくれる? 最終的にはフォルトシュトラムを使うことになると思うけれど、いつ帰ってくるか解らないから、それまでは魔王城の精霊石の装身具に頼んで、視界防御をして貰うつもりだけど」

「解りました。礼大祭前には必ず」

「お願い」


 大聖都に戻り、今回の保育参観の結果をみんなに報告し、共通理解を図る。

 リオン、フェイ、アルも一緒だ。あとはカマラの大聖都トップ会談。


「ホイクサンカンには俺がいると緊張して邪魔になるかと思って行かなかったが、行った方が良かったか?」

「ありがとう。いたら助かったところもあるけど、なんとかなったから。

 ガルディ君の能力は一種の予知眼と、念動力もどきだと思うんだよね。

 精霊(ナノマシンウイルス)に凄くなじみが良くって、ほいほい力を貸して動くみたい。

 リオンの事を慕っているから、機会があったら精霊との付き合い方とか、改めて話をしてあげて。

 先輩として色々と教えてあげられることがあるかもしれないから」

「解った」

「オレも行こうか?」

「その方がいいかもな。人間としての予知眼との付き合い方ならアルの方が上だ」

「国王陛下に聞いてみるね」


 フェイやリオンは、生まれながらの能力者であるガルディ君を少し気にして、気遣ってくれている。

 解り合えるところも多そうだ。


「でも、もしかしたらこれから、各国に生まれる王子様、王女様達も同じようなことに困ったりしないかな?」

「可能性はありますね。ここ数年の間に、不老不死時代からは考えられない程、各国で子どもが生まれるようになりましたから」

「王族でいうなら、アーヴェントルクで二人、フリュッスカイトで二人。エルディランドのシュンシー様も今、妊娠なさっておいでなんだって。もしかしたらヒンメルヴェルエクトからも近いうちに、同じような話が聞かれるかもしれないし」


 ガルディ君の件以来、少し心配していることがある。

 各国に生まれた子ども達は大丈夫かな? って。


 エルディランドとヒンメルヴェルエクトのお妃様は、どちらも妊娠が禁止されていた『神の子ども』だったから、妊娠出産の話が出てくるのはこれからだろうけれど。

 王族に限らず各国の出産数は増えているので、補助施設、教育施設の増加は必須となると思う。


「マリカが早くから進めてくれていたので、各国共、王都にはホイクエン、孤児院、出産を助ける母子院などが建設されて、運用が開始されています。

 手が回り辛い地方でも神殿が学校と孤児院を兼ねるようにしていますので、そこまで零れる子どもはいないと思いますが、気を付けていきたいですね」

「『能力』の件については、あまり触れ回らない方がいいと思う。精霊神達も言ってただろう? 今後『能力者』は減っていく。生まれついての、となると精霊の加護が深い各国王族以外は、そこまで多くはならない筈だからな」


 不老不死が終わってから、子どもは生後二週間以内に出生を神殿に届けることになった。

 ちゃんと届け出ると、わずかながらだけれど祝い金が出るので、今の所、届け出が滞ったという連絡はない。


 十五歳になるまで子どもの人民税は無料。

 子育て中の保護者は半額。

 ただし年に一度、税の申告の際に子どもの健康状態や安否は確認される。


 子育て相談や一時保育、仕事をする女性の為の保育園なども、中世異世界にしては充実させてきたと自負している。

 まだまだ、これからのことを考えると足りないけれど。


「なるべく取りこぼさないように気を付けて、各国にも改めてお願いして来るから」

「解りました。しかし無理はしないで下さいね、マリカ。

 ただでさえ、妊娠中の各国大祭巡りで忙しいのに、プラーミァの件で新しくまた仕事を抱えたのでしょう?」

「それは、まあ……。でも必要な事だし、とりあえず大祭と礼大祭が終わって産休に入ったら、ゆっくりやるって話はしてあるから。心配しないで」

「お前の『心配しないで』は当てにならないからな。俺もできるだけ付いているようにする」

「お願いします、リオン。

 マリカ。今、貴女の身体は一人だけのものではないのですから、くれぐれも注意して下さいね」

「はい。気をつけます」


 わざとらしくため息をつくフェイには、めんどくさい事務関係を全部丸投げしているからね。

 頭は上がらない。


 それに、流産なんてことになったら一生後悔する。

 無理は禁物と自分に言い聞かせる。


 あ、そうだ。


「そういえば、フェイの方は休みをちゃんととってる? ソレルティア様やレオン君が寂しがってない?」

「僕の事はご心配なく。出来る限り夜には顔を出すようにしていますし、通信鏡での連絡もこまめにしています。レオンも首が座って、だいぶ人間らしくなってきましたよ」

「この間、チラッと見に行ったが、人見知りしない子だな。俺がだっこしてもまるで泣かなかった」


 ちょっとホッとした。

 子どもが生まれたばかりなのに、単身赴任でお父さんを借りているからね。


 でも、リオンも見に行ったのか。


「いえ、人見知りは激しいようですよ。

 ソレルティアや僕以外の人間に慣れるまでにはかなり時間がかかりましたから。精霊の力が強く、あの歳ですが周囲や人を見分けているような気がします。

 ソレルティアが自分の手で育てたいというので乳母は付けませんでしたが、館のお手伝いなどには今も抱かれるのを嫌がりますね」


 苦労話のように聞こえるけれど、我が子自慢とのろけのような気がする。


「リオンの場合は多分、精霊の力が強いので安心できると思ったのかもしれません。マリカにも泣かないと思います」

「オレや第三皇子家の双子は、最初は少し泣かれた。

 今はそれほどじゃないけど。でもクリスやアーサーはまだ泣かれるから、来るのを避けてるみたいだ」

「アレクはあんまり泣かれないな。子守歌のおかげかもしれないけれど。

 エリセも魔術師だからか懐かれてて、アーサー達はブータラ文句を言っていた」


 フェイはどうやら、魔王城の兄弟達には我が子を見せびらかしているようだ。


 魔王城で生まれたリグは、大人数の中で育ったせいか、まったく人見知りしない子だった。

 それと同じ気持ちで近づいて、泣かれてワタワタするアーサーとクリス。

 想像するとちょっと楽しい。


「フェイに外見はよく似ている。資質もフェイ以上だから、さっきの話で言うと視力やその他にも注意してやらないとな」

「私も早く会いたいな。思えば生まれてから一度も顔を見てないし、抱っこもしてない」

「アーヴェントルクの大祭の後、次のエルディランドに向かうまでの一日休憩で、アルケディウスに行きますか? 王宮と孤児院訪問、という名目であれば時間を作れますよ」

「そうして貰えると嬉しい。久しぶりにレオ君やラウル君にも会いたいし」


 可愛い盛りの三歳児。

 ガルディ君達と遊んだことで、気付かないフリをしていた「子ども達不足」がぶり返した気がする。


 できれば、子ども達と一緒にずっと戯れていたい。

 子どもと遊ぶだけじゃ保育士ではないのだけれど、偶には何も考えずに子どもと遊んで、触れ合って、癒されたいよ。


「あ、あとエルディランドのダーダン様から、夜の王の杖の返還について間に入って貰えないかって頼まれてる。これ、書状」


 アルが商人の伝手で預かってきたダーダン様の文書には、視力も戻り、仕事上でも不自由は無くなったので、『神』から預かっていた王の杖は国に返還したいと書かれてあった。


 最近、エルディランドに王の杖が戻り、スーダイ様と王妃シュンシー様が大地の術を使って実りを増やしているのを見て、自分も早く返さないといけないと思ったんだって。


「ありがと、アル。向こうから申し出て貰えると話が持って行きやすいね。ただ、精霊が抜かれているようだから、返す時には夜の精霊神様と相談してからかな?」


 頭の良すぎるヴェートリッヒ様に、催眠暗示や幻影を自在にする夜の王の杖を渡すのはちょっと怖い気がするけれど、精霊神様の見張りがあるから、大丈夫、と思いたい。


 夜の王の杖がアーヴェントルクに返れば、プラーミァ以外の七国全ての王族の手に王の杖が戻る形になる。

 色々と拗れないうちに、ヒンメルヴェルエクトも杖を返還するように説得した方が良さそう。

 まあ、それはヒンメルヴェルエクトの出方を見てだけど。


 今は自分の仕事に集中。


「アーヴェントルクはコスモプランダー討伐後、通信鏡の製作販売とレアメタルの採掘で今、一番活気がある国でもあります。

 マリカに害を及ぼす様な存在は、もう殆どいないと思いますが、十分に注意して下さいね」

「解った」


 そうして翌日、私達は夏の大祭、二国目となるアーヴェントルクに向かったのだった。


 まさかそこで、魔王と出会うことになるとは思いもせず。


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