表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
1381/1428

火国 保育参観 2

「あれでは、ただ遊んでいるだけではありませんか!

 読み書きも計算も、まるで進んでいない!」

「そうですわ。地べたに座り、物を並べるなど、行儀もよろしくはありません」

「ですが、子ども達は遊びながら、プラーミァの特産や食べ物の種類、文字などを覚えていませんか?」

「王太子妃様……」

「そうですね。それに積み木の貸し借りで数を数えたり、必要な物を借りる為に交渉する事。分けて貰ったら礼を言う事なども。

 ただ遊んでいるように見えて、基本的なことを学んでいるように見えます。

 それに、いつも集中できない。半刻もじっとしていられず、直ぐに出歩いてしまう、というガルディヤーンとドゥルーディークが、一刻近くも大人しくしているではありませんか?」

「王妃様まで……。

 それは、遊んでいれば楽しくて時間も忘れるでしょうが……」

「元々、昼までの時間は、積み木などを使って文字に親しむ。

 各々で工夫しながら物を作る楽しさを知る。

 と、計画案にも示されているのです。黙って見ていなさい」

「はい。王太后様」


 授業開始から約一刻、一時間ほど。

 すっかり積み木遊びに嵌った二人は、時に取り合い、時に分け合いながら、楽しそうに遊んでいた。


 最初はそれぞれ別のものを作っていたけれど、最後には合体させて、大きなアイトリア宮を完成させたり。


「こわすの、もったいないなあ」

「ははうえたちにもみせたい!」

「じゃあ、今日のお勉強時間が終わるまで、置いておきましょうか」

「うん」


 積み木のアイトリア宮は床に置いたまま。

 壊さないように気を付けながら、そっと席へ戻る。


「ここからは少し、書き取りをしましょう」

「え~?」

「かきとり、きらいだなあ~」


 今まで思いっきり遊んでいた為か、二人はあからさまに嫌そうな声を出す。


「どうして嫌いなんです?」

「だって、うまくかけないから」

「おこられるんだもん」

「どうして、うまくいかないんだと思う?」

「ペンがうまくもてない」

「ゆらゆらする」

「そっか。じゃあ、これを使ってみて下さい」

「これ、なあに?」


 私は勉強用のチョークとミニ黒板を差し出してみた。


 アルケディウスで仕事をするようになった頃、あちこち探して見つけたもの。

 商売をする人が計算などに使っていたんだって。


 今は私がスポンサーになって大量生産してもらい、孤児院などでも使っている。


 普段、王宮の勉強には紙を使っているのだそうだ。

 植物紙も普及してきたから、インクも使い放題。


 でも、それだと失敗すると他に使えなくなるし、慣れないうちはペン先が紙に引っかかったり、インクをつけすぎて滲んだりする。


 だから、最初の文字練習には、書いた後に消せるミニ黒板とかの方がいいと思う。


「黒板です。

 いくら失敗しても直ぐに消せるから、気楽に書いていいですよ」

「いいの?」

「しっぱいしても、おこらない?」

「もちろん。

 字じゃなくって、絵を描いてみてもいいです。

 まずは好きに線を引いてみてください」

「「はーい」」


 根本的なことだけれど、自分の身体の動きをまだ上手にコントロールできない子には、物の正しい持ち方や動かし方などを、最初に知らせないといけない。


 それができないうちに字を書けと言われても、ふにゃふにゃになるだけ。


 思い返せば、初期の頃のリオンもそうだった。

 頭では解っていても身体が思うように動かなくて、細かい作業が苦手で。

 でも、繰り返し練習しているうちに上手になっていった。


 肩や手にどう力を入れればいいのか解らない小さな子にも、順序良く、ペンの持ち方と動かし方を教える。


 真っすぐ線を引く事。

 曲げる事。

 止める事。


 簡単に見えても、最初はとても難しい。


「あー、しっぱいした!」

「だいじょうぶ。何度でも消せるから」

「やった。つながった。まるになった!」

「ホントだ。綺麗な丸が書けましたね。

 この丸が書けるようになると、ガルディヤーン様のお名前の文字も書きやすくなりますよ」

「どの字?」

「ほら、これ。

 これがガルディヤーン君の名前の最初の字。

 グランダルフィお父様の字とおそろいですね」

「おそろい!」


 嬉しそうに笑んだガルディ君は、その後、同じ文字を嬉しそうにミニ黒板いっぱいに書いていた。


 曲がったり、歪んだり、鏡文字っぽくなったものもあるけれど。


「これ、消さないで、お父様に見せてもいい?」

「いいですよ。

 じゃあ、続きの練習は私の黒板を貸しますね」


 一方、ドゥルーディーク君は、まだ字にはなっていない。

 黒板いっぱいに点々、ぐるぐる、のびのびとした線が溢れている。


「うわー、たくさん書けましたね。

 皆、強くて元気な線です」

「かくところ、なくなっちゃった。

 なんだか、すごくスルスルでかきやすい」

「もう一回消して、新しく書きましょうか」

「うん」


 またも、字を書くところまではいかない。

 三歳では、そもそもまだ早いけれど。


 ただ、何度もやっているうちに、最初は細くて、本人達の言う「ゆらゆら」だった線が、少しずつ力を宿し始めている。


「なるほど。

 字が書けないと怒る前に、まずペンの持ち方から知らせるべきだったのか?」

「指先に、まだ力が入らないのかもしれませんね」

「そんな、初歩から教えなければならないのですか?」

「そういえば、私も……。

 思い返せば、食器の持ち方はともかく、ペンの持ち方も動かし方も教えて貰ったことはないな。

 乳母が教えてくれたこともあるが、凡そは見様見真似だった」

「王太子様。

 でも、そんなこと、当たり前に誰でも……」

「どんな人間でも、生まれて初めてのことはある。

 其方、剣も持ったこともないのに、剣技の型だけ教えられて身に着くか?」

「そ、それは……」

「最初に正しいやり方を教えて基礎を作らないと、勉強も入っていかないという事だろう」


 そうして文字積み木を見本代わりに、文字の書き取りをやっているうちに、気が付けば、もう一の夜の刻が終わろうとしていた。


「もうすぐ、お昼ごはんの時間です。

 せっかく書いた黒板などが、食べ物で汚れたり、消えてしまったりするといけないので、机の上を片付けて貰えますか?

 黒板や道具は、ここに入れて」

「「わかりました~~」」

「片付けは私どもが……」


 そう言いかけたであろう召使さん達には、小さく首を振る。


 代わりに食事の支度をしてもらう。

 それから、ちょっと別な事もお願いして。


 勿論、子ども達はきっちり、自分達で片付けてくれたよ。


 それから、一緒に食事。


 お願いして、簡単ではあるけれど、ナイフやフォークなどのカトラリーを使う料理にして貰った。

 私も同じテーブルで、一緒に食事をする。


「とっても美味しいですね。

 それにコリーヌ様は、とても食べやすく作って下さっていると思います」

「そうなの?」

「はい。

 このハンバーグも、皆さんが食べやすいようにミートボールにしてくれていますからね。

 食材も小さく切っていますし、カレーも辛くないでしょう?」


 子ども達が、しげしげと料理を見やった。


 プラーミァ風ではあったけれど、可愛らしい子どもランチ。

 野菜を柔らかく煮込んだり、可愛い花の形に切ったり。


 食事が楽しくなるような工夫が、色々と施されている。


「ガルディヤーン様。

 カトラリーは外側から順番に使う、と覚えるといいですよ」

「マリカさまのナイフのつかいかた、キレ~~。

 スープも、なんでおとしないの?」

「音を立てると、ちょっと汚い感じがしませんか?

 美味しいスープを無理無理に吸い込むのではなくって、こっちへどうぞ、って流し込むといいですよ」

「こっちへどうぞ?」

「はい。

 スープが驚いて逃げないように、そっと優しく、焦らずに」

「こっちへどうぞ」

「そうです。

 零れずにスプーンへ入れることができましたね。

 ドゥルーディーク様。

 手で掴んで食べるのも美味しいですけれど、汚れた手で他の所に触ると、そこも汚れてしまいますから、カトラリーを使う事。

 手が汚れたら、良く拭いて下さいね」

「は、はい」


 最初はおぼつかなかったナイフやフォークの使い方も、見本を見せて真似してもらうことで、少しずつ上手になってきているような気がする。


「おいしかったー!」

「おなかいっぱーい」

「はい。

 何も残さないで食べられましたね。

 きっとコリーヌさんも喜んでいるでしょう」


 野菜サラダも魚のポワレも残さずに。

 デザートのアイスは、文字通り舐めるように。


 二人は綺麗に昼ご飯を食べ切った。


「マリカさま。これからどーするの?」


 流石に食後のお皿の片付けまでは王族にやらせられないので、それは使用人さん達にお願いして。


 私は持ってきた道具の中から、ある物を取り出した。


「一緒に、ご本を見ましょうか?」


 まだまだ、地球の保育士の本領発揮はここからですよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ