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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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火国 保育参観 1

 翌日。

 プラーミァ王宮、アイトリア宮殿の一角。

 子ども部屋。


「今日一日、お二人と一緒に勉強します。マリカです。

 よろしくお願いしますね」


 約束の、プラーミァでの保育実習の日。


 私は大人しく席に座る、今日担当する二人の子ども達にそう挨拶した。


 部屋の中にはガルディヤーン王子と、その友役であるドゥルーディーク君。

 二人の乳母と召使、護衛騎士などが壁際で控えているけれど、他には誰もいない、ように見える。


 でも実は、部屋の後ろに兄王様、王妃様、王太后様、父親であるグランダルフィ王太子に、お母さんであるフィリアトゥリス様が隠れて見ているのだ。

 あと、二人の教育係を任されていたという女性教師と男性教師も。


「さて、星の保育士のお手並み拝見という所か?」


 そんな兄王様の意地悪な声が聞こえる気がするのは、気のせいかな?


 保育参観と言われても、大人の目があると子どもは緊張するから、できれば外か別室で見ていて貰うようにお願いするつもりだったのだけれど。


「風と光の魔術の応用で、そこに人がいることに気付かれにくくすることはできますよ。

 声を発したり、物音を立てればバレてしまいますけれど」


 保育参観の話をしたら、フェイがそう教えてくれた。


 話を聞いたら、一種の光学迷彩。

 指定した場所の光の屈折を操って、視界に入りにくくするのだとか。


 たまにフェイはその術を神殿内の監査とか、神殿を抜け出して魔王城に来る時などに利用しているんだって。


 複数種の魔術を使える上級魔術師でないと使えないし、暗殺や他害に悪用されることがあるので、普段は頼まれても使わない。

 使い方も教えない。


 と念を押した上で、フェイはプラーミァに来て、数か所にその魔術領域を設定してくれた。


 指定したエリアに滞在している間は、大人でも、人がいるとよほど強く意識しない限りは解らない様子。

 実際、子ども達二人は部屋に入って来ても、そこに保護者達がいるとは気付いていないようだ。


「ほんとうに、きてくれたんですね?」

「はい。約束しましたから。

 今日は一緒に、たくさん遊びましょうね」

「え? あそぶの? べんきょうじゃなくって?」


 小首をかしげたのは、ドゥルーディーク君。


 ガルディヤーン君より数か月遅れで生まれたようだけれど、身体はガルディ君より大きい。

 長身のお父さんに似たのかな?


 でも、ガルディ君も三歳、四歳の子としては別に小柄という訳でもないので、誤差の範囲だ。


 それはさておき、私は頷いて笑いかけた。


 まずは掴みが肝心。


「お勉強をしながら遊びます。

 遊びながら勉強する、でしょうか?」

「あそびながら、おべんきょう?」

「くわしいことは、これからゆっくりお話しますね。

 まずは私の自己紹介をさせて下さい。

 それから、二人の事も教えてくれると嬉しいです」

「ぼくたちの、こと?」

「はい。

 私はマリカ。アルケディウスから来ました。

 あなたのお名前は?」

「ぼくのなまえ、ごぞんじではないですか?」

「知ってはいますけれど、しっかりとご本人から聞いたことはなかったので。

 おねがいできませんか?」


 私が視線を合わせると、こっくりとガルディ君は頷いた。


「あ、立ってくれると嬉しいです。

 お顔をちゃんと見たいんです」

「はい」


 小さな椅子から立ち上がり、胸に手を当てて可愛らしく頭を下げてくれる。


「ぼくは、プラーミァのおうじ、ガルディヤーンです。よろしくおねがいします」

「ありがとう。

 とっても素敵なお名前ですね」

「じゃあ、ぼくも!!

 ぼくはドゥルーディークです!」

「ドゥルーディーク君もありがとう。

 ご両親の願いが籠った、素敵なお名前ですね。

 二人共、とっても上手にご挨拶できましたね」


 名前と挨拶の仕方を褒められた二人は、嬉しそうに顔を見合わせる。


「ほめてもらえた」

「うれしいね」


「基本的に、何か物事ができたからと言って褒めることは致しません。

 それは王族や王家に仕える者として、できて当たり前のことですから」


 どんな教育や保育をしているのか、と聞いた時、女性教師はそんなことを言っていた。


 相手は三歳ですよ。


 という、何度も繰り返した言葉は、とりあえず呑み込んだけど。


「それじゃあ、今度は座って、もう少し色々な事を聞かせてくれますか?」

「え? おべんきょうのじかんでしょ?」

「ぼくらのおはなし、きいてくれるの?」

「はい。これもお勉強ですよ。

 自分の気持ちを言葉で相手に伝える。

 それに一日ですけれど、私はお二人の先生ですから。

 色々な事を知っておきたいんです。

 教えて貰えますか?」


 二人の瞳が煌めくのが見えた。

 今まで、ずっと押さえつけられてきたのかな?


「あ、あの! マリカさま。なにをいえばいいんですか?」

「そうですね。

 例えば、お二人は食べ物で何が好きですか?」

「シフォンケーキ!」

「チョコレート!」


 子どもらしい、可愛い返事が返ってくる。


「どちらも美味しいですよね。

 プラーミァ以外の国では簡単には食べられないものなので、ちょっとお二人が羨ましいです」

「そうなの?」

「はい。

 特産、と言って、プラーミァ以外では材料が手に入りにくいお菓子なんですよ」

「ふ~ん」


 二人はそう言って、知らなかった、というように目を丸くする。


 それから、色々な話をした。

 好きな事、嫌いな事。

 気になる事、やってみたい事など。


「ぼくは、しょうらいプラーミァのおうになるんです。

 だから、しっかりべんきょうしなさいって……」

「ぼくは、とうさまみたいに、きしになりたいなあ」

「ドゥルーディーク君のご希望は、素敵な事ですね。

 お父様も喜ばれるでしょう」

「でも、あれしなさい、これしなさいっていつもいわれる。

 けんのべんきょうはすきだけど」

「それは大変ですね。

 ガルディヤーン様は、もしかして他にやりたいことがおありですか?」


 押し黙るガルディ君。


 丁度良くもある。

 私は持ってきた木箱を、テーブルの上に出した。


 自慢の異世界、あいうえお積み木。

 食べものバージョンだ。


 精霊バージョンと合わせて二セット分。


「うわ~。きれ~~」

「えがかいてある。いろがついてる!」

「どうぞ、触ってみてください。

 遊んでもいいですよ」

「いいの?」

「その為のものですから」


 二人は箱から積み木を出しては、ひっくり返して眺めている。


 表側には大きな基本文字。

 裏側には、その文字を頭文字に持つ食べ物や食材などが描かれている。


 精霊バージョンには、色々な精霊のイメージ図が描いてある。

 あとは各国の大陸の形や、精霊獣なども。


「あ、これチョコレートだ!」


 好きなお菓子を見つけて、ドゥルーディーク君の声が弾ける。


「そうですね。

 チョコレートはカカオの実、というプラーミァ特産の木の実に、砂糖や牛乳などを混ぜて作ります。

 他国ではカカオの実が手に入りにくいので、とっても貴重なのですよ」

「ふ~ん」

「ぼくらも、ときどきしかもらえないもんね」

「他に、知っている食べ物とかはありますか?」

「マリカさま。これ、なんですか?」

「ああ、これはリアですね。

 リアは、収穫する前はこんな風に、穂になって生えているんですよ?」

「え? リアって、しろくてぷつぷつのつぶじゃないの?」

「それは、皮をむいたものです。

 こっちは麦。パンの元ですけれど、これもこういう穂になってるんですよ」

「なんかにてるね?」

「うん」


 積み木をひっくり返したり、眺めたりしているうちに、ドゥルーディーク君は積み木をとん、とん、と立てて並べ始めた。


 ちょっとしたドミノのよう。


「あっ!」


 そのうち手がぶつかって、パタパタッと連鎖して倒れてしまう。

 正しく、ドミノ倒し。


 でも。


「おもしろい!」


 ドゥルーディーク君。

 最初は偶然だったけれど、今度は自分から積み木を立てて並べ始める。


 勿論、ある程度並べてから倒す為に。


「ドゥルーディーク!」

「いいんですよ。ガルディヤーン様。

 並べて倒すの、面白いですからね。

 ガルディヤーン様も一緒にやりますか?」

「いいの?」

「はい。

 机の上だとやりにくいですから、床でやりましょうか?」

「うん!」


 大理石っぽい、ツルッと滑らかなアイトリア宮殿の床は、積み木を並べたりするのに丁度いい。


 私が積み木を床に降ろすと、子ども達は並べてドミノ倒しのようにしたり、重ねてタワーを作ったりして、思い思いに遊び始めた。


「ガルディヤーン。こっちにつみき、ちょうだい。

 もっとつみたいんだ」

「こっちだってつかう!

 ぼくはアイトリアきゅうみたいに、しかくにつくるんだから!」


 ドゥルーディーク君は高さ優先。

 積み木を上へ上へと伸ばしていく。


 高く積み上げると壊れるのも早いのだけれど、それもまた楽しいみたいだ。


 ガルディヤーン君は広さ優先。

 それぞれに個性が出てる。


「じゃあ、とりあえず三個だけ貸してあげましょうか?

 それだと、一段分高くできますし、四角に作る分は足りると思いますよ」

「わかりました。

 1・2・3……。はい」

「やった!」

「ドゥルーディーク君。

 物を分けて貰ったら、お礼を言わないと」

「あ、そうだね。ありがとう」

「こわれたら、でいいけど、つみき、こっちにもまわせよ。

 ぜんぶのつみき、つかったら、でっかいアイトリアきゅうにできるから」

「わかった~」

「ガルディヤーン様は、アイトリア宮を作っているんですね?

 私もお手伝いしてもいいですか?」

「うん。じゃなかった。はい」

「ガルディヤーン様は、絵の方を全部裏にしてアイトリア宮を作っていますけれど、何か意味が?」

「アイトリアきゅうは、しろがおおいから。

 でも、いりぐちのとびらは、あかとかにしたいです」

「じゃあ、サフィーレの積み木とかがいいかもしれませんね。

 あ、これがサフィーレですよ」

「ありがとうございます。

 それから、ひのせいれいと、せいれいじゅうのつみきはありますか?」

「ありますよ。

 さがしてみてください」


 力いっぱい遊ぶ。


 部屋の後ろで見ている兄王様達が、私の保育を見てどんなことを考えているのか。

 何を感じているのか。


 それを考え、悩むのは後にして。


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