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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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火国 プラーミァケース検討会 後編

「誓約、か……」


 もしかしたら、忘れてるかな?

 と思ったんだけれど、


「かつて、お前が最初に我が国に来た時の約束。

 どんな時であろうとも、誰を敵に回そうとも、プラーミァはお前の力になる、と。

 ああ、確かに約したな」


 流石、国王陛下。

 口約束とはいえ、一度交わした約束は覚えていて下さるようだ。


 今でこそ、私が各国で舞うのは当たり前で普通の事になったけれど、昔は各国が疑心暗鬼で、神聖な精霊石の間に余所者が入るのはほぼ不可能だと言われていた。


 プラーミァとは親戚だから、ということで兄王様と王太后様がごり押しで私に舞を依頼し、封印されていたアーレリオス様を助けたのが事の始まり。


 その時、ベフェルティルング様がおっしゃったのだ。

 プラーミァはこの先、どんなことがあろうとも二回、私とアルケディウスの力になると。


 国に帰ってから皇王陛下にお話ししたけれど、


「プラーミァから賜った権利はお前のものだ。ケントニスらに他言するではないぞ」


 とおっしゃっていた。

 多分、ケントニス様は今も、アルケディウスにそんな権利が与えられている事を知らないだろう。


「戦争等、どうしようもないことがアルケディウスに起きた時には使うかもしれんが、そうでなくば、お前のいざという時の安心の為に借りておけ」


 だって。

 だから、ここで私が使っても、お祖父様もお父様もお母様も、多分怒らない。

 まだ一回残ってもいるし。


「お前の望みはなんだ?」

「新しい考え方による幼児教育の実施、です。

 少なくとも体罰の全面禁止は願います。それから、遊びの充実。

 勉強は遊びを取り入れながら行い、座学の開始はせめて五歳からにして下さい」

「それで、通常十歳には行う王族としてのお披露目に間に合うのか?」

「プラーミァのお披露目は十歳なんですか?

 なら、余裕です。

 文字の読み書き、算数の四則計算、その他、どんなものが必要とされるかは解りませんが、ガルディ君なら十分に身に着けられると思います」


 勉強は、だらだらと長くやっても意味がない。

 メリハリを付けることと、本人のやる気が大事。


 本人が頑張ろうという気持ちさえ持てば、今まで読み書きもまるでできなかった大人だって、半年で読み書きできるようになるのだ。


 双子ちゃんはまだ四~五歳だけれど、もう文字を読むことはできる。

 私が本の読み聞かせとか、文字積み木遊びとか、いっぱいやってきたからね。

 ゲシュマック商会の社内研修でも立証済み。


「だが、親戚とはいえ、子どもの為に誓約の権利まで使うのか?

 あれは、プラーミァの全てを賭けても、という約定。

 砂糖もカカオもゴムも望みのままだというのに、子どもの教育などに使ってもいいと?」

「勿論、構いません。

 むしろ子どもの教育、特に王族のそれは、この先のアースガイア千年を左右する大切なもの。

 砂糖よりもカカオよりも、ゴムよりも価値のあるものですから」


 ガルディ君は、アースガイアの新世代の中でも年長さんだ。


 下には各国の王族に沢山子どもが生まれてきているけれど、上にはアルケディウスの双子ちゃんしかいない。


 彼の教育方針や、今後の教育計画が各国に影響するとすれば。

 各国がどのような教育をしているかは解らないけれど、少なくともガルディ君のような辛い目に遭う子を減らすことができるかもしれない。


 十二分に元は取れる。


「では、マリカ皇女。

 貴女のお考えと覚悟を見せて頂けますか?」

「母上!」

「王太后様。覚悟、でございますか?」


 今までずっと沈黙を守ってきた王太后ディアノイリア様が、静かな眼差しで私に言葉を向けてきた。

 王太后様にとっては、ある意味、自分の教育方針を否定されたようなものだから、本当はお怒りかもしれない。


 でも、少なくとも表向きは静かな、凪の海のような眼差しだ。


「ええ。

 正直に申し上げて、マリカ皇女が理想とされる教育がどのようなものか、お話を聞いても私達には今一つ掴めません。

 ですから、実際に見せて頂きたいのです。

 朝から夜までガルディヤーンと、その側仕えであるドゥルーディークに皇女自ら相対し、理想とされる教育をお授け下さい」

「私が、ですか?」

「はい。

 我々はそれを観察させて頂きます。

 そして、マリカ皇女の方針が優れている。より子どもを伸ばすであろうと理解できたなら、取り入れていく。

 ということでは、いかがでしょうか?」

「覚悟、というのは?」

「値千金の皇女の一日を頂くのです。

 他国や大神殿での調整なども、色々と面倒になるでしょう?

 それに、私達が今までの教育より問題がある、納得がいかないと思えば容赦なく指摘しますし、採用するかしないかは我々が判断します。

 その結果、皇女のご要望に添えないという事もあるやもしれません」


 要するに、最悪の場合、どんなに良い保育をしても難癖をつけて聞かないこともできる、ということか。

 でも。


「かまいません。お願いします」


 即答した。

 私にとっては、断る理由のない話だ。


「ただし、今回の件におけるガルディ君の行動について責めず、罰を与えない事。

 ご熟考の上、元の教育を続けられるという場合にも、体罰は避けるようにする事をお約束下さい」

「解りました。

 大祭終了までは時間が取れないので、大祭終了後の翌日、風の日ではいかがですか?」

「その日なら大丈夫です。

 翌日は次のアーヴェントルクに向かうので、むしろ他の日だと困るかも」

「では、そのように手配させて頂きます。

 良いですね? ベフェルティルング? グランダルフィ?」

「はっ!」

「かしこまりました」


 国王陛下と王太子様が立ち上がり、頭を下げる。

 普段は滅多に表に出ないけれど、やっぱり王太后様の影響力って凄い。


「ガルディヤーン!」

「は、はい!!」


 王太后様のお言葉に、リオンの腕に抱かれていたガルディ君の背筋が伸びる。


「マリカ皇女がお前の為に一日を使って、勉学を教えて下さいます。

 ですが、マリカ皇女だから言うことを聞く。

 今までの勉強と違うことをしたいから従う、ということではなりません。

 他の教師に対する時と同じように接しなさい」

「わ、わかりました」

「ドゥルーディークには何も伝えない事。

 ガルディヤーンではなく、むしろあの子の様子を判断の基準とします。

 王子としての自覚が多少なりともあり、努力しているガルディヤーンよりも、ドゥルーディークの方が落ち着きがなく、教師や親を悩ませていますからね」

「かしこまりました。

 常日頃から厳しく伝えてはいるのですが、まだ自分の身分や立場などを理解しておらず……」


 そう言って頭を下げたのは、ドゥルーディーク君のお父さんで、兄王様の側近でもあるカーンさんだ。


「だからこそ、この場合の判断には適しているでしょう。

 まだ自分の立場を理解しない幼子を、罰ではなく、どう対処すれば正しき方向に導けるか。

 マリカ皇女の『神の知恵』を賜りたく存じます」

「解りました。精一杯努めさせて頂きます」


 こうして、プラーミァ王家での保育参観は決定した。


 その夜。


 一応、一泊二日の大祭を終えた私の所に、フィリアトゥリス様が通信鏡で連絡してきた。

 複数台を繋げることができるように改良を始めたので、余った直通用の一台をこっそり渡してきたのだ。


『ガルディヤーンの為にご負担をおかけして、すみません。マリカ様』

「お気になさらず。フィリアトゥリス様。

 私が我慢できなかっただけですので」

『ですが、ガルディヤーンの為にマリカ様にご負担を……』

「いいえ。

 良い気付きとチャンスを頂きました。

 私も遅ればせながら母になりますし、今後生まれる子ども達が、より良い環境で学び、育つことができるように頑張りたいと思います」


 今まで、商人や皇女や大神官。

 流されるままに色々やってきたけれど、私が本当にやりたいことは、子どもの笑顔を守り、育てる事。


 つまりは、保育士だ。


 それは、私の記憶が本当は自分のものではなく、真理香先生から預かったものであると解ってからも変わらない。


 この星を守る精霊として。

 そして、保育士として生きていく。


 私の原点に関わる大事な事だから。

 全力を尽くして頑張る。


 そう決めていた。


 ガルディ君や双子ちゃん。

 これから生まれるたくさんの子ども達と、私の子の為にも全力で行くよ。


 私が出産前に、この世界に残していける最後のものになるかもしれないし。


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