表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
1363/1422

魔王城 地球移民の子ども達 2

 私はクラージュさんに、エルトゥリアにできた『神の子ども』の為の植民地について、詳しい話を聞かせて貰った。


 クラージュさんは今、植民国エルトゥリアの守備隊長。

 大神殿はリオンに任せ、お父様と共に地球での知識を活用して、国の運営などにも携わっている。

 私が眠る前に、おおよその叩き台と、運用準備、人材の確保。

 インフラ準備まではできていたけれど、ここまで一気に進んだのは宇宙での戦いが終わってからの事だそうだ。


「正式な運用開始から、まだ二か月余り。問題点も多くありますが、頑張っていると思いますよ」


 魔王城の地下に眠る『神の子ども達』は総数約九万五千人。

 結構な都市一つ分になる。

 一刻も早く目覚めさせていきたいけれど、七国全てに分割させても、まだ受け入れ態勢が整っていない。

 目覚めからのトラブルで苦しい思いをさせては元も子もない。


 ということで、検討に検討を重ねて緊急度の高い子から最大百名前後を目安に何度か目覚めさせて、世話役と共に最終的に百五十名程度の集団をいくつか作り、共同生活をさせているそうだ。

「ダンバー数、というのを聞いたことがありますか?

 それを参考に、小回りや融通を利かせながらやっています」


 私は、マンガでチラッと見たくらいの記憶しかないけれど、互いに安定した関係を保ち、顔と名前を把握できる集団の上限だとかなんとか。

 軍隊などでも使われているんだって。


 かつてのエルトゥリアの城下町を、今のところ、十くらいの区画に分けて小さな集落を作り、その区画内で共同生活をしているという。

 寝泊まりする家、食堂、学校、図書館や広場などのレクリエーション施設、そして畑と農場があるのは共通。

 後は、自給自足を目指して派遣された世話役の技能や仕事、出身国によって色々と特色があるのだそうだ。

 例えば、醤油や味噌の醸造などを行う施設がある区画とか、ガラスや木工職人が多く働く区画とか。農業は全てのエリアでやっているけれど、その中でも果樹栽培などに力を入れている区画とか。

 基本的に子ども達は冷凍睡眠を解かれる前に、睡眠学習的なもので、全員『神』から

 自分達は地球から避難してきたこと。

 安全な星に辿り着いたからこの世界に生きることになる。

 と教えられた上で、それぞれの町に送られると聞いた。

 この時、アースガイア語も簡単にインストールするんだって。


『神』が持っている、冷凍睡眠前のデータを元に、その子に合っているのではないかな。という区画に誘導され、世話役や先に目覚めた者達の下、共同生活を開始する。


 起床は一の火の刻。大体朝の七時か八時くらいな印象かな?

 食堂は地の刻から火の刻が終わるまで開いているので、閉まるまでに来れば暖かい食事にありつける。

 来ない場合には軽食以外は片付けられてしまうので、みんな早起きして来る。

 その後は午前中の作業。

 午前中は基本的に全員が農業を中心とした仕事に従事する。

 身体が弱い子や、野外での活動が辛い子も、収穫物の選別や加工など、その子にできる仕事を割り振っているそうだ。厨房で働く子もいる。

 自分達が食べるものだから、と説明すると拒否する子は今の所、あまりいないらしい。

 軽い休憩を入れながらの午前中の仕事が終わると、昼食が支給され、二時間は自由時間。

 広場でボール遊びをしたり、ドライジーネに乗る練習をするアウトドア派もいるし、国会図書館の分室である図書室で本を読んだりする子もいる。

 アレクの例があるので、リュートや笛などの楽器も用意してあった。

 国会図書館には楽器作りのマニュアルもけっこうあって、将来的にはピアノやバイオリンなども再現できるかもしれないとのこと。楽譜は山のようにあるけれど、教えられる人が多くはないので完全復活は遠そうだけれど。


 休憩時間が終わると、子ども達は一か所の学校のような所に集まって勉強に入る。私がさっき出会った子ども達だ。

 アースガイアの地理や歴史、文字の書き方などを学ぶ。

 計算などは向こうで身に着けてきた子も多いけれど、記憶を失っている子やまだ習っていない子もいるので一人一人の習熟度に合わせて指導する。大きい子が小さい子に教えたりもするらしい。

 昔の日本の寺子屋風だね。


 百人ちょっとの子どもを十人くらいの世話役が丁寧に面倒を見て、一人一人の特性や、アースガイアで何をしていきたいかなどを確認して将来の職業あっせんの目安にするのだそうだ。

 最初期に目覚めた子の中で特に年長の子達の中には、商売をしたい、とか、技術者になりたいなどの希望を口にしているので、実際の職場に入り、仕事を体験させる試みも始めているとか。

 そうして、改めて解ったことだけれど。

 同じ地球の子どもでも環境や学力の差がかなり激しいそうだ。

 裕福な家に生まれ、きちんとした教育を受けられた子はそんなに多く無くて、十歳くらいの移民の中でも読み書きができない子がかなりいた。

 失われた地球文化を惜しむ子は勿論多いのだけれども。


「地球よりも、こっちの方がいい!」

「仕事は易しいし、遊んでもいいし、勉強もできるし、ちゃんとご飯が食べられる!」


 という子も少なくないのは驚いた。

 日本の義務教育と児童福祉というのは、問題も勿論多かったけれど、なんだかんだで福音でもあったのかなって思う。

 高度な教育を受けた裕福な家の子ども達は、それぞれの国の『精霊神』の艦に先に乗せられていた。『神』の艦に集められたのは、各国にとって最後の最後まで残された子ども達で、貧民や移民、孤児が多かった、なんて事情もあったようだ。後は、年齢制限の上限や下限ぎりぎりの子も。

 冷凍睡眠に入って地球から送られた子ども達の最年少は二歳。最高年齢は十八歳だった。

 基本は十六歳まで。適正年齢の子を先に入れて、最後の最後まで、一人でも多くの子に救いを与えようと大人達が頑張っていたことが見て取れる。

 一歳とか、0歳の子もきっと親は救いたかっただろうな。

 でも、冷凍睡眠には耐えられないと判断され、多くが残された。

 実はヒンメルヴェルエクトのマルガレーテ様は、歌手として活躍していた時、十七歳。

 ギリギリだったんだって。

 彼女の歌声を惜しむ人々の願いで、最後の冷凍睡眠に入ることができたのだとか。

 そういう一種の戦時下を経験した子達だからか、地球知識を鼻にかけてアースガイアを見下すような子は今の所、いなくてホッとしている。


 今後は本人の適性や希望があれば町の入れ替えもあり。

 年長の子達は、本人の状況が落ち着いたら適性や希望に沿った訓練を行い、七国への出国も許可されるという。

 まだ開始二か月で試験的なところもあり、この世界で独立した子はいないらしいけれど、


「親がガラス職人だった、とか家具職人だった、という子などはそういう世話役のところで見習いを始めたりもしていますよ。

 後は、中世異世界ということで、騎士や剣士、魔術師に憧れる子も多いですね。

 マリカ様の訪問の後、さらに増えそうです。

 そういう希望者は適性を見ながら、学習時間の後、部活動のような形で訓練をしていきます。楽器や、絵などを教える世話役もいるので。筋のいい子もいるようですよ」


 外に出ることになったらアルケディウスのゲシュマック商会や、エルディランドのマオシェン商会などが後見する予定だという。

 この二つの商会は資金援助などもたっぷりしてくれている。地球移民の事情にも明るいから助けになってくれる筈だ。

 七国の王様達も人材確保にはかなり本気になっているしね。


 現時点での運用が完全に軌道に乗ったら、城下町にも人を増やし、二十エリア、三千~四千人を上限の目安として運用する。

 そしてあと三つある廃墟町のインフラを整え、同じような街を作り一万人前後が暮らせる国へ。

 独立した子が出たら、新しい子を入れる。というような形で子ども達ができるだけ安定した環境で生活することが最優先に、計画、デザインされているのがよく解って安心した。


「今の所は、ですが、子ども達も地球には戻れない。

 ここで生きていくしかない、と理解しているので、積極的に馴染もうとしている感が見えます。

 一度、襲撃による最悪の事態を体験しているので、我が儘を言う子も少ない印象です。

 助け合うこと、力を合わせて共に生きることを最初にしっかり教えることで、自分が助けて貰ったように後から目覚める子を助けてくれるでしょう」


 全員起こすのに十年以上かかりそうな計画だけれども、急ぎ過ぎてもいいことはない。

 眠る子ども達の為にもゆっくりと確実に。

 マンガのように簡単にはいかないものだ。こういうのは。


 ここは中世異世界。文化レベルはまだまだ地球には及ばない所が多いから。

 地球の記憶がしっかりと残っている子には辛い事も多いかもしれない。

 けれど


「失われた地球より、素晴らしい星にしていくことは、きっとできると思います」

「ええ。新しい子ども達にもそう思って貰えるように、教え、導いていきたいですね」


 私達はそう祈るように口にして、窓から見える街並みと、笑顔で駆ける子ども達を見つめたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ