大聖都 聖なる乙女の産休と育休の話
最初はちょっと固い雰囲気から始まったけれど、その後の七国会議は比較的穏やかな雰囲気の中、進んだ。
私が眠っていた間の事や、各国の被害状況の報告などもして頂く。
ステラ様がおっしゃったとおり、地上を守って下さった皆様のおかげで人的被害は最小限と言えるものだったそうだ。
「一番手柄というべきはユン殿ですね。
隕石から現れた怪異の正体を暴き、対応策と共に各国に知らせて頂いたことは本当に助かりました」
これは私達宇宙で戦っていた間にも報告されていた話。
コスモプランダーが地球に落とした隕石は、外見は隕石を模していたけれど実はコスモプランダーの地上攻略兼、コスモプランダーの子ども達の避難艇のようなものだったらしい。
機械生命体のようになっていた彼らは地上では思うような性能を発揮することができないので、手足となる触手生命体で現地の生物を取り込み、情報を得ていた。
アースガイア攻略戦では地球人のデータが有効と判断したのか、よりによって片桐海斗先生のコピーを作り利用したらしい。酷い話だ。
初手は人の多い所を狙って攻撃を仕掛けてきたが、こちらに手の内が把握されていて簡単に攻略できないと見てからは海洋部や、氷山地帯に降りて動向を窺っていたようだと聞いている。
彼らは言わばコスモプランダーの生き残りでバックアップのような存在。
サルベージの仕方によっては種としてのコスモプランダーを救えるかもしれないと思ったけれど、精霊神様達は許さなかったらしい。
私が眠っている間に、全て破壊されてしまった。
研究用に捕らえるとかもなし。本当にひとつ残らず。
『当然だ。指揮する者もいなくなった星を滅ぼす侵略者を、残しておけるか』
とおっしゃったのはレルギディオス様だったけれど。
その辺は解っている。私も切り替えるつもりだ。
「『神の翼』が戻り、王子達が帰国してからは姫君不在で申し訳なかったが、各国祝勝の宴を行い、襲撃の終結を民に告知した。
その後、神官長、リオン殿の元、七国が平和協定を結んだのだ。
『七精霊の子』たる七王家は決して互いを侵略することなく、尊重し、共に平和で豊かな国を作る為に互いに協力していく、とな」
「それは、とても良い事だと思います。精霊神様達もお喜びになる事でしょう」
これは本当に。
精霊神様達。
以前ラス様はこの星に人々を移民させた時、地球の過ちを繰り返さない、戦争も貧困もない平和な国を作りたいと思った、とおっしゃっていた。
でも、力及ばず戦争も起き、『神』に封印され、不老不死世になってからは国交さえ、ほぼ無くなっていた。
建国当時は『精霊神様』達も色々あったし仕方ないところも多いと思う。
子育てもそうだけれど、人はどうしたって監視や指導の目が無いと安きに流れるし、人が集団で生きる以上、トラブルも生まれる。
だから、それを教える場と人は必要だと思う。
色々な形はあっていいと思うけれど、子どもに正しい教育の場と機会は絶対に必要。
「それで、マリカ、いや大神官。夏の大祭が間もなく始まるのだが、今年も奉納舞は頼むことができるのだろうか?」
話や報告の区切りがついた時、伺うようにケントニス新皇王陛下が手を上げる。
そういえば、新皇王陛下と顔を合わせるの、今回が初めてだ。
少し緊張は見えるけれど、側に腹心を従えて凛々しくも頼もしい表情をなさっている。
「夏の大祭と、礼大祭は舞を務めさせて頂けますか?
精霊神様や『神』にコスモプランダー討伐の御挨拶や御礼をしたいと思っておりますので」
コスモプランダー殲滅の後。
私はまだ『神々』の中ではレルギディオス様とステラ様以外。
七精霊様達にはお会いしていない。
現実は勿論、夢でも。
精霊神様達もお忙しいのだろう。
だから、せめてお礼の舞くらいはしてきたい。
夏が終われば、舞いどころではなくなるし。
「それはありがたい。
多少後ろに押したとしても、日程は調整する。民も喜ぶだろうからな。
だが、マリカ皇女」
「はい。なんでしょうか?」
「其方、身籠っていると聞いたぞ? 身体に負担をかけて大丈夫なのか?」
そう気遣って下さったのはプラーミァのヴェフェルティルング国王陛下。
知ってたのか。
宇宙での戦いの前に、王子様達にはお話してあったし、お母様もお伝えしたよね。
きっと。
「はい。今、妊娠四か月目です。
おそらく、夏が終わればかなりお腹も膨らんで、動きづらくなると思われます」
今はちょっとぽっこりしているかな。くらい。
言われないと多分解らないだろう。
でも、この時期の成長は激しいから、あっという間に大きくなると思う。
「ですから、夏の礼大祭を終えた後は、暫く舞の奉納は致しかねます。
各国を巡ってのお手伝いなども難しくなるでしょう」
ギリ、夏の礼大祭には安定期に入るだろうしお腹もそこまで目立たないから、ゆったりとした舞衣装を着れば大丈夫だと見ている。
動きもゆるやかなものにするつもりだ。
「ギリギリまで、できる仕事はしていくつもりですが、いざ出産となれば、仕事その他を置いて、優先させて頂くことになり、ご迷惑をおかけすることになります」
「それは、当然ですわ。女として、母として我が子の出産以上の優先事はございません」
「ありがとうございます。アマリィヤ様」
唯一の女王、アマリィヤ様の言葉に他国の王様達も頷いて下さる。
良かった。
解ってたけど出産より職務が大事、なんておっしゃる方がいなくて。
ここ三年間で、必死に児童福祉を訴えてきた成果かもしれない。
「子どもはアースガイアの未来。とマリカ皇女から教わった事だ」
「そうだな、ましてマリカ皇女とリオン殿の子となれば、男であっても女であってもアースガイアを照らす星となることは間違いない。
どうか、母子共に健康であること第一に考えて頂きたい」
「ありがとうございます。皆様」
私は立ち上がり、国王陛下達に頭を下げる。
出産にも、子育てにも、周囲の理解と協力は欠かせない。
私は勿論、今後、後に続く女性達の為にも。
「出産まで。
いいえ、出産後も色々とご迷惑をおかけすることが多くなると思いますが、どうかご協力のほどをよろしくお願いいたします」
私と、子どもを暖かい国王様達の微笑みが優しく包んでくれていた。




