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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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魔王城 ライオット皇子視点皇女の目覚めと幸せへの道

 コスモプランダーとの決戦から、間もなく三月。

 木の月が終わり、水の月ももうすぐ末を迎える。

 夏が近づいてきているのは確かで、外を歩いていると汗が零れることも少なくない。


 宇宙からの侵略者という大災害から解放され、星を守った勇者達を称える人々の熱狂は、徐々に落ち着きを見せ始め、各大陸は復興への道を歩み始めている。

 新年はアースガイアにおいて芽吹きと始まりの季節。

 特に農林水産業、食物を作り出すという人類の基幹産業が戻って来てからは、畑の準備に種まき、草取りとやることがたくさんある。

 コスモプランダーの隕石投下や魔物の襲来で荒れた土地に人々は戻り、作付けを始め、街に住む者達も日常に戻り始めた。

 どんな職種でも仕事は山のようにある。

 やる気さえあれば、誰も食いはぐれることはなく、住むところにも困る事のないアースガイアは、今、一番活気に満ち溢れていると言えよう。


 けれど、その中心に立ち喝采を一番に受け、人々を導くべき存在は、未だ動けない。

 俺は、ここ数か月ですっかり慣れてしまった転移陣から降りて、城の門を開く。

 中に足を踏み入れると、誰よりも早く


「お帰りなさいませ。ライオット様」


 輝かしい銀の精霊が迎えてくれる。

 最初の頃は、眩しいまでの美しさに声をかけるのも気が引けていたことがあるが、今はもう慣れてしまった。人間の順応性というのは恐ろしいものだ。


「今、戻った。エルフィリーネ。マリカの様子はどうだ?」

「残念ながら、変わりなく」

「そうか。リオンは?」

「『神』の御命で大神殿に。夜には戻るとのことです」

「あいつも忙しそうだな」

「魔王に代わる抑止力として各国に睨みを利かせる必要があるのだとか。

 マリカ様不在の穴をあの子なりに埋めようとしているのでしょう。

 なんにしてもあの子が人の輪から弾かれること無く、受け入れられるのであればそれは悪いことではないだろうと『神』は」

「俺としては、納得はしていないが、本人が受け入れているのでは仕方ない。

 ……マリカの顔を見に行ってもいいか?」

「どうぞ。ティラトリーツェ妃と、お子様達も今、お部屋でございます」


 多くの使用人が忙しく歩く一階、自室の在る二階をすり抜けて三階へ。

 微かな見えないカーテンのようなものが行く手を遮るが、城の守護精霊の許可を得ている俺を止めるものではない。

 広い三階に四つしかない部屋の、その一室の前に立ち、軽いノックをする。


「俺だ。今、戻った。入ってもいいか?」

「お父様? お帰りなさい。どうぞ。開いてます」


 部屋の女主人の明るい言葉に、俺が扉を開くとベッドの左右を挟み込むように双子が寝台から半身を上げた姉に甘えている。


「おかえりなさい。おとーさま」「おかえりなさい」

「フォル。レヴィーナ。マリカをあまり疲れさせるなよ。

 今日の勉強は終わったのか?」

「ちゃんとおわったよ。しろにもいってラウルともあそんできたし」

「ほんとに、ホントよ。

 そしたら、ねえさまが、ちきゅうの絵本をよんでくださるっていうから」

「別に怒ってるわけではない。

 マリカに負担がかかっていないのならそれでいい」

「大丈夫です。今日は気分がいいので。

 私とお腹の子が、二人に遊んで貰っているようなものですから」

「そうか……」

「ねえさま! おはなしのつづき! そのあと、キツネはどうしたの?」

「ごめんね。お父様。絵本読み終えてしまってもいいですか?」

「邪魔をしたようなら悪いな。一緒に聞いている」

「ありがとうございます。

 そうして、キツネは狼といっしょに……」

「お帰りなさいませ。あなた」

「ああ、ただいま。ティラトリーツェ」


 俺は妻と一緒に仲睦まじい子ども達を見つめながら、これからのことについて考えていた。




 コスモプランダーの襲撃を退けた日から、マリカはまる三か月昏睡状態のまま、目覚めることが無かった。

 意識が戻ったのは、まだ一週間も経っていない先日の事。

 宇宙での戦いで力を使いすぎ、疲弊したマリカは昏睡状態。

 今は睡眠によって回復を待つしかないと聞かされた各国国王始め、国民も家族も残念がっていたが、それでも大陸を上げての祝賀が数日かけて行われ、星の脅威が消え去ったことを寿いだ。

 帰国した各国の王子達が報告した宇宙での戦いは、貴族や文官達によって広まり、瞬く間に誇張され、吟遊詩人や芸人達の飯のタネになって、人々の娯楽として楽しまれている。

 マリカにはまだ伝えていないけれど、エンテシウスなどは夏の大祭に向けて劇に起こし始めているようだ。


 七国は、今後も友好関係と不可侵を守りつつ、災害復興と新しい文化の発展を目指す。ということで合意した。

 その橋渡しとして『大神殿』が正式に国家として認められ、各国の調整にあたる。

 また、かつて魔王城の島と呼ばれたここは『神と星の聖地』として『大神殿』が飛び地管理することになった。本来、その代表となるのはこのマリカであった筈なのだが長く昏睡状態にあった上に、目覚めても体調不良で、まだ外に出られる状態ではない。

 マリカに代わり『大神殿』の代表者として全てを取り仕切ったのはフェイ。そして『神の子』として本格的に表に立ったリオンだった。


『神』はかつて改造処置を施されたマリク(息子)を人前には出せぬ、と魔王役に括ったという。

 けれど、演出と衣服、そして外見操作の力というのは恐ろしいもので。

 フェイがこの日の為に用意した神官長として煌びやかな白の衣を纏い、帽子や髪の毛で角や耳など、目立つ特異部分を隠したリオンはどこからどう見ても勇者であり『神』の寵愛を受ける代行者だった。

 本人がそう振る舞っていたことや、今までの実績もあるだろうけれど。

 特に各国王族、貴族達は、改めて強く感じた筈だ。

 自ら膝をつき『神』と大神殿への忠誠を自ら誓った。

 異を唱える者はいない。

 誰もが理解していた。


 一人で宇宙に立ち、侵略者と立ち向かった超越の戦士に逆らえる筈はない。と。


 リオンの存在が各国に認められたことで新設国でありながら、『大神殿』は七国の上に立ち調停、監視を行う存在として認識された。

 勿論、七国の施策に口を出すことは無く、宗教と政治は分離させる。

 ただ国家内の戦争は絶対に禁止とされ、それに類する行為があった場合には大神殿が介入し場合によっては罰を与える権利を有することが決まった。

 さらには抑止力として侵略者をも退けた『星の翼』と『神の翼 ノア』を大神殿が管理するとなれば。


『聖なる乙女』マリカと『勇者』リオン。

 加えて転移術を含む風の魔術の天才で、通信鏡の開発者。

 情報通信技術を有するフェイと、『神』と直接繋がる大神殿に逆らう勇気のある国も、大貴族もいなかった。


 大神殿の長として、王として人々の上に君臨し、貴ばれるリオン。

 だが


 正直な話、俺はこれで良かったのか、と思う気持ちが今も捨てきれない。

 今世こそはあいつに幸せになって欲しかった。

 なんの栄光も無く、報われることも無く、勇者として、道具として使い潰された前世のアルフィリーガを知っているから。 

 皆に愛され、称えられ、その力と心に相応しい栄光を与えられて、光の中を生きて欲しいとずっと思っていたのだ。

 ある意味、俺の夢は叶ったと言えるかもしれない。

 けれど、フェイを伴っているとはいえ自由を失い、剣を持つこともできず。一人で人々を指揮し、支えるリオンを見るにつけ。

 そして、寝台の上で動けないマリカを見るにつけ


 違う。

 これは俺の望んだ二人の幸せではない。

 リオンとマリカが二人で並んで、一緒に歩み、やりたいと思う事を遠慮なく行い、人々をその力で導き。

 家族や仲間と幸せに微笑み合う姿こそが見たかったのだ。

 そう改めて思う。

 いかに周囲に認められ称えられようと、二人が別々では意味がないし、やりたいことができない現状では、幸せとは程遠い、と。


 宇宙からの侵略者 コスモプランダーを倒せばこいつらを自由にしてやれると思ったのに、こいつらは今も精霊の宿命に縛られて雁字搦めだ。

 いつになったら、こいつらを本当に自由にしてやれるのか?

 まさか敵に捕らわれていたというマリカの実の母親のように、死ぬまで解放されることは無いのだろうか?


 この後、実は二人の事で話があるから、と精霊神に呼び出されてもいる。

 俺は己の無力を噛みしめつつ、自分に何ができるかを頭の中で張り巡らせていた。


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