宇宙 コスモプランダーとの戦い
宇宙におけるコスモプランダーとの戦闘は、予想外の乱戦にはなったものの戦況自体は安定している。
『マリカ。俺は基本、艦の維持と航行、アースガイアからの経路の確保に注力する。細かい指示や、戦況判断はお前に任せよう』
敵からの宣戦布告の直後。『神』レルギディオス様は、そう言って、私に現場指揮の全権を預けて下さった。
「いいんですか? 私、宇宙での艦隊戦とかやったことないですけど」
『心配するな。俺もない。
ただ、お前はリオンとライオと星を。そしてこの艦を守る。その方法を考えて最適と思うことをすればいい。……お前なら、できるだろう?』
「はい。できます。解りました」
なんとなく、そう言っちゃったんだよね。
まあ、経験は確かにないんだけど、SF小説とかアニメとか、その他もろもろ。
全く知らない、という訳ではないし。
そう言う訳で艦隊戦が始まって間もなく。私はこのノアと、お父様。リオンに全力で防御壁を展開した。数百の隕石、もとい、艦がある向こうと違ってこっちは一艦と一機のみなので陣形とかそういうのは関係なく、ただ、目の前の敵を倒す、もしくはお父様に倒して貰うのみ。
間もなく周囲の隕石、四方八方からエネルギー砲のようなものが、発射されてきたけれど、今の所はノアを包み込むように金色に輝く光に吸い込まれて、艦まで届かない。
私は意識していなかったけれど、私が作る防御壁。相当強い衝撃吸収素材のようだ。
「防御壁は、全力で展開しています。
この艦にダメージは来ません。皆様は索敵と艦隊の捕捉に専念して下さい」
「了解!」
仕組みが解らないから本当はそこまで胸を張れるほどの自信は無いのだけれど、とりあえずこういうのはハッタリと自信が大事。
乗組員を不安にさせるのは艦を預かる者として失格だ。
「フェイはとにかく、風の守りを『星の翼』とリオンに途切れさせないように。アルはリオンとお父様の気力と精霊の力の残量に気を配って」
「解りました」「任せとけ!」
ブリッジの精霊石の中、目を閉じると自分でも驚くくらいに意識が研ぎ澄まされる。
周辺の戦況が全て視える。
エネルギー残量もまだまだ問題になるレベルじゃない。
地上からの補充量が使用量を大幅に上回っている。
とはいえ
「予想以上に、数が多かったようですね。小型の隕石、一つ一つがもしかして個別の宇宙船だったんでしょうか?」
最初は大型旗艦と、それに従う中型艦、小型艦。というイメージで、艦の中にたくさんの人が私達のノアのようにいるのかな? と思っていたのだけれど、地上からの報告によるとそうではないらしい。
「アースガイア。ティラトリーツェ様からの連絡です。
宇宙から落下した第二、第三の隕石から地上攻略用と思しき怪異が出現。
隕石は怪異をバックアップしていたようです」
「隕石を先に破壊すると怪異は力を失う、もしくは暴走するという報告もあります」
「どうやら隕石そのものが『宇宙からの侵略者』、機械生命体であるようですね」
納得した。
つまるところ、身体を失った精霊神様達と同じ原理だろう。
身体を捨てさり、隕石、もしくは旗艦にデータとして本体を保管しておくことで本体を破壊しない限りは不老不死に近くなる。
必要な時はナノマシンウイルスで身体を作って動かす。自分達を脅かすような敵が現れたら相手を取り込んで、自分達のものにすればいい。
初見殺しで、対処が難しいから、敗北することはまずない。
合理的ではある。
「おそらく。
ただ、アースガイアに飛来した隕石は、著しく機能が低下しているようです。
ほぼ自発運動ができない様子。怪異を手足にして地上の人間に攻撃をしかけてくるのみ。
ここでのように、動いたり、光線を発してくることもない。
空気が合わないのかもしれません」
憶測にしか過ぎないけれど、空気による酸化とか、大気に含まれる元素とかが宇宙由来の機械生物には悪影響を齎すということは十分に考えられる。
その為に本来は事前に自分達が生存、活用しやすい環境を事前にナノマシンウイルスを散布して作り上げる。
一種の強制テラフォーミング。その過程で星の生命が滅んだとしても、気にしない。
多少は生存者が出るだろうから、彼らを使って星の目ぼしいモノ、文化や能力を違法コピーというか略奪して。生命は多分、エネルギーとして食い尽くし、得るものが無くなったら次の星へ移動する。
データ生命体だから、星間航行に際して生命維持の為の準備をする必要もない。
機械と生物の良い所どり。
種としては確かに完成されているかもしれないけど……、自分達で何かを作り出そうとせず、略奪を繰り返す、正に略奪者。
サイテーだ。
「お父様。艦の側でできる限り、攻撃して来る敵を倒して下さい。
防御壁は最高レベルで展開しておきますので、守りについてはあまり気にしないで」
『解った。信じて任せるぞ』
「はい!」
あの隕石一つ一つがバイオコンピューターを取り込んだ艦だとすれば一体、もしくは複数のコスモプランダー、若しくはその複製が乗り込んでいて、私達に攻撃を仕掛けてきているのかもしれないと思うけれど。
この状態に至っても向こうから話しかけてくる様子はない。
最初の会話以降、通信も入って来ない。
相互理解は不可能。話し合いをする意思はない。
私は、そう解釈した。
ならば、後は考えない。
私は魔王で、精霊で、星を守る保育士。
子ども達を守る義務がある。
相手は魔性と同じ、言葉の通じないモンスター。慈悲はかけない。
「敵の数は常に把握しておいて下さいね。
特に増えたりしないかどうか確認して下さい」
「今の所は、増える気配はない。前で『星の翼』が、後方でリオン殿が、確実に打ち取っているから減少し続ける一方だ。概算で初期の数から既に三割減らしている。
地上に落下した分を含めると約五割だな」
現状はこちらの方が圧倒的有利。
相手は個人の範囲内、最大でもコスモプランダーの勢力集団の分でしかエネルギーは使えない筈だけれど。
一方、こっちはほぼ無尽蔵の力が送られてくる。
アースガイアの全ての人間が手伝い、力を貸してくれているのだから。
「人間、舐めんな……」
お父様は飛行形態と、人間形態を巧みに使い分けて隕石を破壊し始めた。
エネルギー砲を掻い潜り、飛行形態で敵に接近。近くまで接近したら、ステンレスとカレドナイトで作った大剣で一刀両断を繰り返す。
時には剣を持った人型形態のまま、一つを壊して、爆破までに次の機体に乗り移ったりもする。まるで八艘跳び。
爆発音と共に、砕け散る隕石。
「人、もしくは生命体などの反応は爆発した隕石周辺にありますか?」
「いいえ。今の所は何も」
やっぱり、ただの石じゃなくって機械。艦だったのかな?
「リオン殿は?」
「宇宙での勝手が掴めず、一時的な不調だったようですが、直ぐに立て直すと言っていました。彼に任せましょう」
私とリオンはリンクが繋がっている。
一時的に低下していた彼の機能が回復して、動き出したのは感じた。ならば後はリオンを信じる。
と、視界。というか全天モニターの端に、紅い火花が散ったような気がした。最初は一~二個。だんだん、連鎖で増えていく。
「今のは?」
「! 隕石群、後方で複数の連鎖破壊を確認。
おそらくリオン殿の攻撃ですね」
「良かった。おそらく後方に回り込み、警戒の薄い所から攻撃を開始したのでしょう。
お父様! 敵の意識と攻撃がリオンに向かないように、派手に動いて下さい。
ノアも前進。旗艦と思しき艦隊の注意を引き付けて!」
『解った』「了解!」
このノアにはよくある艦隊モノや、コスモプランダーのようなレーザー光線とか主砲とか、敵を直接攻撃する手段は無いらしい。
いや、正確には在るけど、小回りが利かないし、エネルギー消費が激しいから、当てにするなとレルギディオス様に言われた。
私達には操作、使用権限無いし。
お父様の『星の翼』の機銃はエネルギー砲で、地球からの気力とナノマシンウイルスの力がある限りは弾切れはないそうだけれど、ノアの方は私達の生命維持やコンピューターの起動、航行にもエネルギーを使っている。当然と言えば当然の事。無駄遣いは厳禁だ。
だから、ノアの攻撃方法は主に体当たり。
防御壁に任せた、吶喊しかない。
大きさを考えれば、ノアの方が、コスモプランダーの艦の中核を維持するほぼ全ての艦より大きい。
体当たりしても質量の差で潰せそうな気がするけれど。
調子にのって反撃を受けたり、取り込まれたりするのが心配だから、最後の手段としておきたいところ。
今はお父様とリオンで問題なさそうだし。
と持ったところで、どうやら変なフラグが立ったらしい。
ガキン!!!
オープンにしてあるお父様の機体の通信機が硬い響きを立てた。
『チッ!』
「どうしたんですか? お父様?」
『今まで、パンを切るようにあっさりと剣が通っていたのに、突然刃が通らなくなった』
「! 足下の隕石。『星の翼』の内部から高エネルギー反応アリ!」
「お父様! 距離を開けて下さい。反撃のエネルギー砲が来るかも!」
『解った』
お父様が『星の翼』を飛行形態に移行、飛び退いた瞬間、足下だった場所が爆発した。
危機一髪。
っていうか、今の自爆じゃ?
私が思考を巡らせている間、お父様は飛行形態での隕石に向かってエネルギー砲の掃射を続けるけれど、さっきまでと違って、目に見えてダメージの通りが悪い。
なんだか弾かれている感じがする?
「マリカ皇女! 敵の旗艦と思われる巨大隕石に動きが!」
「あれはいったい?」
アリアン公子の声と共に、モニターに画像が拡大される。
敵の数が五割を切って、前よりも隕石旗艦の周辺が良く見えるようになった印象。
最初に宣戦布告してきた向こうの指導者は、あそこいるのかな?
と、のんきに見ていられたのは、そこまで。
次の瞬間、敵旗艦前方が開くように動いた。隕石に偽装されていたけれど、本当に機械だったのだと思うよりも早く。
表れ見えたものに、私は息を呑んだ。
地球の船でいうなら船首飾りのような場所にそれはあり、掲げられるように前に押し出される。
見覚えがあるのにない、紫色の巨大水晶が。
あれは、まさか……。




