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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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アースガイア 地上での戦い 1 我儘な子どもの攻撃

 星海での戦いが始まる、少し前。

 銀の雪舞い散るアースガイア。

 その地表での戦いは既に始まっていた。



「国王陛下、ご報告いたします!」

「許す。言え」


 南国、プラーミァ。国王謁見の間にて飛び込んできた兵士が膝を付く。


「はっ! 御指示の通り、シュトルムスルフト国境近くの森で、魔性の群れと狂暴化を確認したそうです。

 現在、国境守備隊が風国の部隊と協力して交戦中とのこと」

「人数や、武器などは足りているか?」

「今の所、問題ありません。

 今までの敵よりも明らかに狂暴化してはおりますが、事前に準備がしてありましたので交代要員なども考慮した上で、対処していきます」

「頼んだぞ」

「お任せを!」


 他にもいくつかの報告を捌いた若き王は、区切りがついたところで安堵の息を吐きだすと、


「ご協力と、ご報告感謝いたします。叔父上、いえ、アルケディウス皇王陛下」


 自分のほぼ真横に立つ鏡に向かって呼びかける。


『お役に立てたのなら幸い。まだ第一陣以前の話ですが、本格的な攻撃前にできることをやっておけば、いざという時にも余力を持って動けましょう』

「まったくです。ですが、一体どこから魔性出現の可能性の高い地点などを?」

『匿名の密告、というか手紙が何通も届きまして。アルケディウスのみならず、諸国の魔性発生の可能性が高い所が記されてあったのです。

 調査したところ、アルケディウスについてはほぼ的中しており、休眠していた魔性を発見、叩くことができました。ですので、各国にご連絡を』

「匿名の情報提供、ですか?」


 怪訝そうに首を傾げる火国王。

 アルケディウスから提供された情報は誤差一レグラント以内で場所が指定されており、今回正にドンピシャで、敵が出た。

 欲を言えばもう少し早く情報が伝わっていれば、隕石を破壊した時に散布されたであろう敵の毒で魔性が強化、昂らせる前に処理できたと思うのだが。今それは口にすまい。

 叔父上、アルケディウス皇王は良くやってくれている。


「偽魔王やその関係者ですかね?」

『その可能性は高いと思いますが、定かではありません。

 ただ、今の時点で我らが敵とするのはコスモプランダーのみ。偽魔王は放置しておいていいと思われます』

「同感です。逆に魔性のくい止めに力を貸してくれる可能性もあるでしょう」


 星の希望が乗った。神々の船。

『神の翼』が、天空に、星の海に姿を消して小一刻が過ぎようとしている。

 そろそろ、彼らはコスモプランダーと相対している頃だろうか?


「時間的に、そろそろ第二陣の攻撃が来る可能性もあります。

 隕石雨か、それとも毒の強化か」

『民は室内に戻して祈りに専念させ、外部で戦う騎士達はフードなどで毒の直撃を受ける事の無いよう指示を出しておくべきですかな。気休めですが』

「そうですね。銀の雪に触れると、星の護りがあるとはいえ、体調を崩す者もいるようです。念には念を入れておくべきですね」

『直ぐに各国に伝えましょう。失礼を』


 姿を消して他国へ連絡を取っていた皇王陛下が、再び鏡に姿を現した。


「プラーミァ国王陛下。アーヴェントルクの山岳部に、流星が落下したようです。

 おそらく、七国全土に同様の被害が出る可能性があります。

 ご注意ください」


 各国の情報をリアルタイムで共有できるように仲介して下さるのは有難い事だ。

 即座に控えている部下達に指示を出す。

 と、同時に微かな地鳴りがする。どうやら、精霊神様の守りを掻い潜り王都近辺に着弾したものがあるようだ。

 建物や人的被害が出ていないかどうか、確認せねば。


 マリカが三年前、この国で、まだできたばかりだという通信鏡を初めて見せられた時の衝撃は今でも覚えている。あの時、金貨十五枚とふっかけられたが、その元は十二分に取った。

 むしろ小型通信鏡と合わせて、いくらでも欲しいと思う。

 マリカ達が戻ってきたら、改めて相談したいものだ。


 現在、プラーミァに存在する小型通信鏡は約三十組。個人で購入した商人などもいるが、その全てを徴収して、各国の領地に人員を派遣、即時通信で状況の把握も行っている。


「国王陛下。南方 カルクーム領に隕石が落下、城下の一部が破損、怪我人が出ているようです」

「隕石から怪しい怪物などは出てきていないな?」

「今の所はまだ」

「ならば見張り以外の人員を近づけず、様子を見守れ。決して刺激するなと伝えろ」

「かしこまりました!」


『よろしいですかな? 国王陛下』

「なんでしょうか? 皇王陛下」


 プラーミァ以上に、アルケディウスは小型通信鏡のお膝元。

 自分達以上の所有台数を誇るアルケディウスもまた、それらと皇女マリカの持つ人脈などを駆使して情報共有に勤めているようだ。時折他国王との会話も聞こえてくる。


『どうやら、『神の翼』が宇宙にてコスモプランダーと接触を果たしたようにございます。

 宙と『神の翼』を観測させていた者によると、大陸全体に数百規模の隕石が投下されたとのこと』

「そうか……」

『おそらくあの子達、『神の翼』への脅迫。星を救いたければ、という脅迫めいた行為かと。叶う限りはライオットが星の翼で破壊。大陸に大きな被害を与える可能性の高い大きさのものは、『精霊神』様方が止めて下さっているとのことなので、地上に落下したものに対しては冷静にご対処下さい』

「お任せを。ですが、コスモプランダー。思ったほどの強敵では無い気もしますな」

『どういうことでしょうか?』


 自分の呟きめいた疑問に、皇王陛下の視線がこちらを向く。

 もしかしたら、自分のように鏡越し、耳を立てているかもしれない各国王達も。


「彼らには『敵』を知ろうという気が無い。

 もし、我らを人質にし『神の翼』で戦う者達を押さえんとするのなら、もっと有効な方法がある気がするのです。強力な毒をまき散らすとか、人口密集地に隕石を墜とすとか、最初の襲撃で被害を出した怪物をもっと増やすとか。

 まあ、毒が効かないということを想定していなかった事やマリカ皇女の防御壁でこちらの様子をうかがい知れなかった事などもあるのでしょうが、さっきの流星雨も的確な狙いをもって落とされたわけではなく、どこか適当で。

 精霊神様達の守りがあるとはいえ、大陸に落ちず海に落ちたものも少なくなかったようです」

『それは、確かに。最初の方がまだ人口密集地などを的確に狙っていた』


 各国からの隕石の落下報告を纏めているらしいアルケディウス皇王は若き王の言に頷いて見せる。


「コスモプランダーは『神の国』を滅ぼしたモノ。もっと悪辣で醜悪な存在と思っていましたが……」

『それは、おそらく彼らが挫折を知らぬが為ではないでしょうか?』

『ケントニス!』

『失礼いたします。ベフェルティルング国王陛下。

 国王の通信会議に私のような若輩が口を挟むことをお許し下さい』

「いえ、ケントニス皇子。それで、挫折とは?」


 側でアルケディウス皇王の手伝いをしていたのだろうか?

 それとも次期王として、災害対応を学んでいたのか。

 どうやら傍らにいたらしいケントニス皇子が、鏡の前を譲られふわりと礼と言葉を返す。


『私は、なんとなく奴らの考えが解るような気がいたします。彼らはきっと甘やかされ、挫折を知らぬ子どもなのです。私のように』

「ほほう。その心は?」


 プラーミァ国王ベフェルティルングにとって、アルケディウス第一皇子であるこの男は全く眼中にない存在だった。

 従弟ライオットと妹ティラトリーツェを邪険に思い、最初の子の流産を始めとする害を為し続けてきた、むしろ敵とさえ言える人物。今は和解したとは聞いていたが定型の挨拶以外は会話さえ殆どしたことのない。

 鏡越しではあるが初めてじっくりと顔を合わせたアルケディウス次期皇王は思ったよりも澄んだ目をしている。

 そう感じた。


『彼らの元は、きっと才を持つ者達であったのでしょう。良き存在に導かれ、宙へ旅立てるほどの。そして彼らは自分達が優越種だと考えを拗らせた。

 己が能力と毒の力で『神の国』のように常に先制し、相手に反抗の隙さえ与えることなく一方的に蹂躙し続け勝ち続けたことで、誰にも否定されず考えは凝り固まってしまった。

 結果、その思考は退化し、相手の手の内を理解しようという思いさえ無くなったのでしょう』

「なるほど。故に奴らは勝利を与える『いつもの形』を繰り返すしかできなくなった。と?」

『はい。敗北や挫折を知らないが故に、成長もできない、哀れな子ども。

 それがコスモプランダーの本質であると私、いえ私達は考えます。

 自分の過ちを突きつけられても、自分達よりも優れた存在を前にしても彼らはそれを受け入れることも、認めることもできない。

 ただ、自分という存在を守る為にむやみやたらと切りつけることくらいしか』

「真綿の中で守られ、甘やかされて育つだけでは、子どもは成長しないものだからな」

『御意』


 どこか悔いるような、奥歯を噛みしめるように俯いた次期青年王はけれど、一度だけ背後に立つ誰かを見つめると直ぐに顔をあげ、今度は真っすぐに怯まず鏡の向こうの諸王たちを見つめた。

 彼が、何故『挫折を知らない子ども』の存在を、思いを、行動原理を考えられるかなど、聞く必要は無い。


『故に、私は安堵します。

 そんな甘えた子どもらに彼らは負けることは決してない。必ず勝利して帰ってくるでしょう。

 何せ、我が儘な子の扱いに、誰よりも秀でた保育士に率いられているのですから』

「確かに、な」


 そっとヴェフェルティルング王は己が手を見た。

 戦いが始まってからというもの、気を抜くと気力というか生命力というかが、身体から抜け落ちてどこかに吸い取られて行くような気がする。

 取られたくない、と意志を持って拒絶すれば止められるが、止める気はなかった。

 政務や指揮に差し支えない程度であれば、いくらでも持って行けと思う。


「では、彼らが戻った時、事後処理の手を借りずに済むように隕石の破壊を進めておくか」

『! 国王陛下! お待ちを。

 大神殿に落ちた隕石のいくつかが、魔術師の接近によって活性化したようです。

 派遣したユン殿から対応がやっかいな魔性が出たとの報告が。

 こちらで敵の性質や、攻撃種類などについて分析してお伝えしますので、破壊はそれからでお願いします』

「解った。解り次第連絡を頼む。力が残っているうちに片付けたい」

『了解しました。ケントニス。ユン殿に連絡をとり、早めに対応策を練れ』

『はい。父上』


 この力が、戦いが、宙の海で戦う保育士達の力になるのなら。

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