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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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アースガイア 三人称 精霊女神の呼びかけ 後編

 柔らかい雲雀の唄い声のような『呼びかけ』は全世界の人々の心に直接届いた。

 耳を塞いでも聞こえた、とされる。

 無論、耳を塞いだ者など、誰もいなかったけれど。



『孤独な星がありました』


 まるで子どもに物語を読み聞かせるような優しい声音で彼女は語り続ける。


『群れから逸れた星は、一人ぼっちでした。

 強い熱と願いを抱きながらも、冷たい孤独の星空を、長く一人で彷徨っていたのです。

 やがて、寂しがり屋の星は『彼ら』と出会いました。

 故郷である『神の国』から侵略の悪魔によって追われた『彼ら』は愛すべき子ども達を守る為に星に降り立ち、寄り添い、共に歩むことを約束し、力を合わせて新しい大陸を作りました』


 誰もが知る、それは大陸創世の物語。


『星に、大神(おおみかみ)は降り立ちました。


 何もない、夜だけの世界。

 孤独な星に彼らは寄り添い、力をくれました。


 夜、光、風、火、地、水、木。


 大神は光となり、夜と手を取りました。

 

 夜と光は風と、空を生み出し、火によって星を温めました。


 大地が隆起し、水が流れ、木が芽生えました。

 星に命が紡がれ、精霊とそれを統べる神が生まれました。

 アースガイアは、孤独な星と、悪魔に生きる場所を追われた者達――

 孤独と哀しさを知る者達が肩を寄せ合うことで生まれた奇跡の星なのです』


『聖なる乙女』の呼びかけは神殿で幾度も聞いた説法、創生の物語と同じ。

 でも、不思議な事に今日はいつもよりもはっきりと、彼らの耳と心に響いていた。


『この星に、今、脅威が迫っています。かつて我らの祖と『神々』から、生きる世界、故郷たる『星』を奪った侵略者達は再び、『宙の彼方』から降臨し、私達から全てを奪おうとしているのです』


 人々の視界が、一瞬にして別の景色に塗り替えられた。

 アースガイアの全ての者の目の前に『宙』が広がる。

 雲一つない、満天の青空。

 でも、微かにあちらこちらに虹を宿して、数百年見慣れてきたものとは違う何かを感じさせる。


『私達は、これから宙へ飛び立ちます。

 敵の本隊に攻め入り、星の脅威を必ずや払う為に全力を尽くすとここに誓います。

 けれど、この星を守るには、貴方の意思と祈りの力、気力(ナトゥラム)が必要なのです』


 「人々」でも「貴方達」でもなく、「貴方」と呼びかける『聖なる乙女』に人々は心が震えるのを感じていた。無論、彼女は不特定多数の者達に語り、告げているのだろう。

 だが彼女の呼びかけは、まるで膝を折って視線を合わせ、自分に寄り添って励ましてくれるようだった。


 救世の為に、自分ができることがあるかもしれない。

 自分の力が求められている。

 役に立ちたい。何かがしたい。

 そんな思いがふつふつと湧き上がってくるのだ。


『きっと、多くの時間はかかりません。今日一日で全てが決まるでしょう。

 私達を信じて待っていて下さい。

 勝利を信じ、祈って下さい。

 その力が、私達と共にこの星を――私達の故郷を救うのです』


『聖なる乙女』が祈ると同時に、蒼く輝いていた空は、ベールを剥がしたように一瞬で変化した。

 昼から夜へ。いや夜の闇よりも、さらに濃い漆黒の彼方に、チカチカと点滅するナニカが見える。


 あれが、星の侵略者。コスモプランダーなのだろうか?

『神の翼』がゆっくりと飛翔し、彼らに向かっていくのが見える。

 多くの者が『気付いた』。

 今、自分達を守っていてくれた――『聖なる乙女』の結界は消え失せ、敵からの攻撃が再び届くようになったのだ、と。


「あれを見ろ!」


 空を見上げた彼らは悲鳴を上げる。

 見れば赤い禍つ星が、空から、こちらに迫ってくるのだ。

 第一次の襲撃に使用されたものとは比較にならない。遥かに大きい、と解る。

 あれが直撃すれば『神の翼』とてひとたまりもないのでは?

 大陸に巨大な穴が穿たれるのではないか?


「危ない!」「マリカ様!」


 聞こえる筈もないのに、幾多の絶叫が響く。

 瞬間、声と意志と、命令が届いた。


『力を!』


 慌てて、両手を祈りの形に組み力を捧げる者達。

 彼らはその時、身体から吹き上がる力が束ねられ、一つにまとまっていくのを感じたという。

 同時に、それが『神の翼』の力になったことも。

 小さな鳥が『神の翼』から放たれる。

 隕石に比べると、あまりにも小さく。

 ぶつかり合えば、一瞬で消え去りそうな質量差がある。


 けれど。人々は奇跡を見る。

『神の翼』を守るように立ちはだかったその鳥が、隕石に向かっていき、一瞬で粉微塵にした姿を。

 鳥のように見えたソレは、人型に変化。

『神の翼』を守る騎士として『聖なる乙女』を救ったのだ。

 


 隕石の残滓が金の粉となって、空から降り注ぐ中


『私達は貴方を信じています。

 だから、貴方も私達を信じて下さい。

 共に私達の故郷を、星を、家族を守りましょう』


『神の翼』と救世主達は高く高く宙の彼方へ消えていく。

 そうして地上に残された多くの者達は、膝を折り、祈り続けた。

 彼らの無事を、アースガイアの守護を、襲撃者の殲滅を。


 自分達の祈りが、力が。

 救世の戦士たちの力になることを信じて。


 長くて短い、アースガイア防衛戦。

 星の全てが一つとなって敵に向かう、かつてない戦いが今、始まる。

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