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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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魔王城 最後の休日と最後の騒動

 最終的に見れば、離脱者は誰もいなかった。

 水の国、フリュッスカイトのソレイル公子も、光の国、ヒンメルヴェルエクトのアリアン公子も沈黙と協力の継続を約束してくれたからだ。


「ここで秘密を明かし、せっかく纏まりつつある国や大陸を割るのは得策ではありません。

 むしろ、ここは『神』に貸しを作ることでコスモプランダー殲滅後の大陸運営に力を借りるのが得策であると考えます」

「その決断は、ソレイル様の『能力』ですか?」

「無論、それもありますが、何より僕の意思です。

 この星を守りたい。皇女やリオン殿にも幸せになって欲しい。そう願っていますから」


 真っすぐな瞳のソレイル公子とは少し対照的に、アリアン公子は挑戦的な眼差しだった。


「自分が今までいかに外の世界の事を知らなかったのか。公子という身分に甘えていたのか、各国の王子達と交流してよく解りました。このままでは国に戻っても次期大公と胸を張る事はできません。

『神々』の知識を学び、自らを磨き上げる為にも、どうか最後まで同行させて下さい」


 プラーミァのグランダルフィ王子とスーダイ様は言うに及ばず。

 これで、当初の予定通り、宇宙に旅立てるだろう。



 ちなみにヴェートリッヒ皇子のステンレスとカレドナイトの合金で作った超合金の剣はお父様の『星の翼』に無事格納された。

 場所的には鳥の胴体部分の真下あたりに精霊石もどきのコアを取り付けて、疑似クラウドの中にしまっておくような感じなんだって。

 後で聞いたけれどリオンの処置の後、胸に残ったコアと似たようなシステムなのだそうだ。

 ステラ様によって加工されたナノマシンウイルスは電脳空間のように、疑似的な異空間を作り出すことができる。普通の人間にとっては文字通り雲で、どこにあるかも解らない、漂っているだけの存在だけれど、特別な知識と技術を持つものが、アイテムを使用することでそこに介入することができる。


 リオンの身体を魔王化する為に『神』はコアの中に変化の為のプログラムと加工・増幅したナノマシンウイルスをギチギチに詰め込み、リオンの身体と強化融合させた。

 だから、リオンの身体は全体がナノマシンウイルスを数倍の密度で凝縮させた形になっているというわけで肌も骨格も筋肉も、リオンの運動能力その他を支え切れる強度を有している。

 そして詰め込んだコアは空に近い形になっているので、色々な装備。

 例の鎧とか精霊の力を入れていて、リオンの意思と命令で取り出すことができるらしい。

 オルドクスもリオンの予備パーツのような形でコアの中に入っていていざという時ブースターになってくれるそうだ。ちょっと取り出しにタイムラグが入るので、エルーシュウィンは入れないで身に着けているそうだけれど。

 なんだかホントに変身ヒーローみたい。

 お父様の剣も、疑似クラウドに入れて必要な時に取り出す形。飛行機にあのでっかい剣を取り付けたら飛べなくなっちゃうからね。

 少し面白いというか感動した。大広間いっぱいの大剣がシュルンと音を立てて水晶のコアの中に入っちゃうのは。


 翌日からは本格的に、実戦形式での訓練が始まった。

 大広間の室内ではあんなに大きく見えた大剣だけれど、外で、特に空で見るとそんなでもない。

 ただ、得意の剣を手に入れたお父様はホントに凄くって。

 人型形態で振るう剣の一振りで氷山が真っ二つ。

 海さえも割れそうな感じだった。


「切れ味は今一つだが、まあ、今回は切る必要は無いからな。奴らの船や隕石を叩き潰せればそれでいい」


 ただ、変形に加えて剣を取り出して、入れて、に微妙なタイムラグが発生するので、それを出発までに限りなく0に近づけられるようにって、毎日訓練を続けている。

 リオンも強化された魔王体の身体を思い通りに動かせるように飛行訓練などに余念がない。実際、尊敬する。

 空中で、どうやったら、あんなに軽々と方向転換や攻撃ができるんだろう。身体を動かすことに関してはやっぱり、リオンの実力は神がかっていると思う。

 その間に私達もノアの操縦訓練を続けた。基本的な操艦は『神』レルギディオス様がやってくださる。ただ、軌道計算など膨大な演算と操艦を一人で行っているので、周囲の確認などに手が回らなくなる。それを王子様達や私達が確認し、中継するわけだ。

 それから、もう一つ。今、訓練に使っているエネルギーは『神』が人々から500年の間集め続けた『気力(ナトゥラム)』意志の力、所謂生命力だ。

 地球に帰ることを目的として集めて来たモノなので、かなりの余裕はあるけれど、いざコスモプランダーとの戦いとなるとどの程度必要になるかは解らない。だから、適時『星』の人々から力を徴収するんだって。


「黙って生命力を徴収するってどうなんですか?」

『星の命運を左右する戦いだぞ。そんなことを言っている場合か?』

「それは、そうですけど……」

『心配するな。力の徴収は『(ステラ)』がやってくれる。お前は、預かった力を、適切に配分する事だけ考えればいい』


 人々の負担にならないように、でもいざという時、必要な術を行使できるように。

 ステラ様にお任せしておけば確かに大丈夫、なのかな?


 私はブリッジから空を仰ぐ。

 高い空の上にいるせいか、いつもよりも空が近く感じる。手を伸ばせば雲に届きそうなくらい。

 でも、あの空の向こうに、宇宙の略奪者がいる。

 彼らは一体、何を考えて、何をしようとしているのだろうか?

 星を守る防御壁を解除して私達が、宙に向かった時。

 私達に、この星にどんな攻撃を仕掛けてくるだろうか?

 不思議と負ける気はしないのだけれど、訓練がどんどん進み、出発が近づいてくるに従って色々な事も考えてしまう。

 今は、自分のやるべきことに集中する時だと解ってはいるけれど。


 気が付けば、もう出発予定日は明後日に迫っていた。



『予定通り、明後日、コスモプランダー討伐に出立する』


 一通りの訓練を終えたその日の夜。『神』レルギディオスは私達を集め


『思っていた以上に、お前達はよくやっている。よって、明日一日。

 お前達には休暇を許そう、島から出て帰国するも構わない』

「え? 外出許可?」


 思いもかけない優しい提案を与えてくれた。


『国に戻り、家族や会いたい存在と顔を合わせて来るもよし。ここでゆっくり心身を休めるもよし。出立に向けて英気を養うがいい』

「いいんですか?」


 国王会議で、コスモプランダー討伐が決まったその日から、私達は全てが終わるまで原則として魔王城の島から出ない事になっている。

 ヴェートリッヒ皇子は剣作りの為に外に出たし、私もお母様に会いに行ったりしたし、別に罰則がある類の話ではないけれど、激励の宴などはしないと各国で申し合わせている。

 特に各国、それぞれに忙しいし、期待を背負って来ている王子様達はプレッシャーがかかってしまうから。


『構わない。それぞれが自分の使命と役割を再確認し、戦いに向けての決意を新たにするのならそれはそれで意味のあることだろうからな』

「ありがとうございます」

『夜には戻ってこい。翌日の早朝、出発だ』

「はい」



「最後の最後でお休みを頂けるとは……」

「レルギディオス神は厳しいところもありますが、本質は情に満ちた優しい方でいらっしゃいますから」


 急なお休みに戸惑いを隠せない方も多い様だけれど、多分これは純粋にレルギディオス様の御厚意だ。

 王子様達は皆、妻帯者だし、国に戻って情報交換などをしてきたい方も多分いると思う。最期の別れ、なんかにするつもりはないけれど、相手は宇宙だから何が起きるか解らない。家族と会って勇気を貰ってくるのは確かに悪い事ではないと思う。


「では、御厚意に甘えて報告がてら国に戻って来て良いでしょうか?」

「はい。皆様にどうぞよろしくお伝え下さい」


 そういうわけで、王子様達は国に戻って行かれた。

 残ったのは私と、アルとフェイの三人&お父様。


「お父様はどうなさいます?」

「俺に聞くより、お前はどうするつもりなんだ? マリカ?」

「私は魔王城に残ります。リオンはまだ外に出られないみたいですし」


 本音を言えば会いたい人はたくさんいる。

 魔王城の子ども達にゲシュマック商会のみんな、双子ちゃんやお母様、お祖父様達にもあって挨拶してきたい気持ちはあるけれどキリがないし、何よりリオンを置いてはいきたくない。


「後で差し入れ持ってバックヤードに忍び込みます。それで改めてお父様は?」

「なら、俺も残るか。一度城に戻ると何かと面倒だからな」

「お母様や双子ちゃんに会わなくていいんですか?」

「いざとなれば、あいつらを呼べばいいだろう」

「それはいいですね」


 基本的に関係者以外立ち入り禁止ではあるけれど、お母様はフリーパスだし、双子ちゃんなら、多分ステラ様も許してくれる。

 ちょっとでも顔を見られれば、リオンも私も元気を貰えるだろう。


「アルは?」

「オレも魔王城でのんびりしておく。ゲシュマック商会に顔を出すとこき使われそうだしアーサー達も連れてけってうるさいしな」


 多分、私達に気を使ってくれただろうアルに頷いて、私は最後にフェイを見やる。

 フェイにはシュトルムスルフトにもアルケディウスにも家族がいる。


「シュトルムスルフトには行きませんが、少しだけアルケディウスに行って来てもいいでしょうか? ソレルティアがそろそろ予定日なんです。

 ここ数日、連絡は毎日入れているのですがまだだということなので」


 もうそんな時期か。

 そりゃあ、心配だよね。

 伺うように問いかけたフェイに、勿論いいよ~と言いかけた、正にその時。

 カマラが全力ダッシュでやってきた。


「マリカ様!? 大変です! ソレルティア様が!」

「「え!?」」


 思わず重なる二つの声。

 コスモプランダー討伐を前に、最後の騒動が今、幕を開けようとしていた。

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