表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
1307/1422

魔王城 魔王と『神』の秘密

 私の耳に届いた二人の会話は、当然、ブリッジ全体にも聞こえた。


「姫君。今の、会話は一体……」

「それに、あのリオン殿の力は……」


 ヤバイと、正直思ってしまう。

 呆然とした眼差しでモニターに映し出される二人を見るアリアン公子。

 他の王子達も言葉を探しているようだけれど、やはり気になるのはヴェートリッヒ皇子だ。

 何かを噛みしめるようにじぃっと、遠い二人の映像を見つめている。


『余計な事を考えるな!』

「うわああっ!」


 フェイ、アル、私を除く王子様達が身体を痙攣させ、悲鳴を上げる。

 サークレットにどうやら電撃っぽいのを流されたようだ。

 モニターもプッツリ切れてブリッジは通常画面に戻った。


『訓練は終わり。二人を拾って帰投する。お前達は、お前達のやるべきことを遺漏なく行う。それだけを考えればいい』

「は、はい」「解りました」


 息を荒げながら席に戻る王子様達。


『マリカ。お前も意識を艦に向けろ。

 ハッチを開けて二人の頭上を飛べばやつらは勝手に戻ってくる。

 防御壁は解除していい。戻ってきたら『星の翼』の修理とリオンの調整がある。

 気を抜くな』

「はい」


『神』は力任せに話題を逸らしたけれど、それ故にこのままだと、王子様達の間に不信が残りそうな気がする。

 私はフェイとアルに軽く視線を送ってから目を閉じた。

 今は操艦に専念。戻ったら、お父様とリオンに相談しないと。



『神』が言う通り、艦が二人の頭上を通ると、どちらも直ぐに飛翔して開いたハッチから中に入ってきた。けっこうな衝撃だったと思うけれど、防御壁を張っていたからそこまでのダメージは無かったようだ。

 良かった、と安心はしていられない。


(「アル!」)

(「了解!」)


 私が向けた視線に気づいて、アルがそっと席を離れてブリッジを出て行った。

 格納庫のお父様、もし一緒にいればリオンにも伝えてくれるだろう。


『着陸したら、今日の訓練は終わりだ。マリカ以外は外に出て城に戻れ』

「『神』よ。アルフィリーガ……リオンと、ライオットに会うことはお許しいただけませんか??」


『神』の指示にそう問いかけたのはヴェートリッヒ皇子だ。


「我々は初日の夜以降、リオンに会っていない。

 黙って処置を受け『神の戦士』になったことはともかく、さっきの事柄について、その他についても話を聞きたいのです」


 彼は特に、不老不死前の時代のお父様と、勇者アルフィリーガだった頃のリオンを知っている。

 さっきの様子からして、もう色々、気付いているのかもしれない。


『奴は、戦闘を終えたばかりで、調整中だ。外に出せるかどうかは解らん。

 ライオットは『星の翼』の修理に目途がついたら戻らせる。城で待っていろ』

「……解りました。マリカ皇女。僕達は戻っています。

 ライオットには時間が遅くなってもいいから、必ず今日中に戻れと伝えて下さい。

 できれば、アルフィリーガにも」

「はい。伝えておきます」


 フェイは皇子様達と一緒に艦を降りた。彼らの思いや情報を聞き出してくれるつもりだろう。

 私は彼らが艦を降りたのを確認すると


(「リオンの所に転移できますように」)


 静かにサークレットに祈りを捧げたのだった。


 私はどういう仕組みで転移しているのか? 前にもお母様にも言ったけれどよく解らない。でもどうやら、精霊は私の願いを聞いてくれたようで。シュワンと瞬間移動。


「わわわああっ!」 

「わっ! マリカ? どうした?」


 リオンの頭上に転移した私は、その腕の中に落っこちた。


『マリカ! 貴様どうやってここに入った!

 ここは艦の心臓部。俺の精霊石やリオンの調整の為の資材があるから、外から切り離しておいたのに』


 打ち合わせをしていたらしいレルギディオス様が(立体映像の)目を吊り上げるけれど


「解りません。リオンにただ会いたいって願ったらここにいただけですから」


 ぷい、と顔を背けて、リオンの方を向いた。

 今のリオンの装束は、空中で戦っていた時の黒鎧。その面覆いを外した形。

 素の顔が見えてホッとする。だから抱き着いたまま、少し甘えつつ質問してみた。


「リオン、あんまり鎧とか好きじゃなかったのに、随分凄いの、着てるんだね?」

「宇宙服? の代わりだから仕方ない。この鎧に増設する形で人工翼も、精霊獣も付与しているから生身にはあまり加工を施さずに済んでるんだ」


 なるへそ。

 こうして近くで見てみるとよく解る。

 黒い強化された肌をインナーの代わりにして、その上に鎧を着用し、それにオプション加工を施してある。これ以上人の容を失わないように気を使ってくれているんだ。


「人工翼はともかく精霊獣(オルドクス)も鎧の中に入っているの?」

「正確には俺のコアの中。俺は、戦闘魔術はフェイには及ばないし、宇宙空間では自然を纏わせた力は使えない。けれど、精霊の力そのものを、オルドクスの容にコピーして放つことで、対象を破壊したり、機能不全に陥らせたりすることができるんだ。

 俺一人じゃ使えなくて、マリカが力を送ってくれて初めてできる技だけど」

「そうなんだ。今までと全然違う戦い方だから、びっくりしちゃったよ」


 魔王姿には驚いたけれど、こうして見ればいつもと変わらないリオン。

 答え方も、気遣いも。

 うん、大丈夫。良かった。


『こら! こんなところでイチャつくな!』

「別にイチャついてなんかいません。話をしているだけです」

『リオンはまだ調整中なんだ。さっきの戦いで改善すべき点が多く見つかった。宇宙での戦闘は一発勝負。失敗は許されない。

 だから、綿密な調整と打ち合わせが必要なのに!』

「それは、解ってます。別に邪魔もしません。

 ただ、こっちもどうしてもリオンに確認しないと収まらない事なんで!」

「俺に?」


 お姫様抱っこしてくれるリオンの首に抱き着いたまま、私はさっきのブリッジの様子を説明する。

 音声が繋がっていた事も、王子様達の不信も。


「聞かれてたのか……」

「どうするの? お父様にはアルが伝えてくれていると思うけれど……」


 顔を顰めたリオンは、どうしましょう? というように『神』を見やる。


『放っておけ、と言いたいところだが、奴らにボイコットされるとまた色々と面倒になる。お前は、どうするべきだと思う? リオン』

「それは……、やはり隠すべきではないと思います。

 出発の時には、どうしたってこの姿を見られてしまいますし、彼らに、嘘はつきたくない」


 息子の真摯な返事に『神』は立体映像でありながら、大きく息を吐きだす仕草を見せると諦めたような顔で私達に告げた。


『ならば、調整の区切りがついたら外に出してやる。

 お前とマリカで説明しろ。どこまでどう話すかは任せる』

「いいんですか? 本当に、全部話そうとすると魔王の真実とか、不老不死の真実とかも伝えなくてはならなくなりますよ」

『お前達が必要だと思えば言えばいい。ただ、間もなく最終決戦が始まる。

 我々は勿論、星の人間達からも力を徴収しなければ勝利は難しい現状で、『神』の威厳を損なうのはどうかとは思うがな』


 あ、拗ねた。

 ぷい、と顔を逸らす様子は完全に拗ねている。

 う~ん。話し方を工夫するしかないかな?


「とにかく、最低限の整備と調整が終わったら、そっちに戻る。時間的にあと二刻くらいか? 皆が、待っててくれるなら話には立ち会わせてくれ」

「解った。伝えておく」


 ここまでの話をずっと、リオンの腕の中でしていたのは、我に返ってみるとちょっと恥ずかしい。

 私もレオタードドレスが、いつもより身体に密着しているし。

 お互いに唇を合わせてから、降ろして貰った。

『神』以外、誰も見てないし結婚したのに殆ど触れあえていないのだから許して貰おう。これくらい。


 そうして、私は表エリアに戻り、フェイ達と合流。

 お父様とも相談し、今日の夜に王子様達に事情をお話しすることになった。

 因みに王子様達の間に紛れ、情報を集めてくれたフェイの報告によると


「やはり、皆さん事情を知らされていないことに不満がおありのようですね。

 特にアーヴェントルクのヴェートリッヒ皇子は、勇者時代のリオンを知っているので、その常人を超える戦闘力を理解しつつ、あの戦闘ができるようになったことを心配しています」

「ヴェートリッヒ皇子も、リオンのことが一目で分かったって言ってたもんね」


 不老不死世の前、魔王が世界を闇に覆っていたとされる時代。

 ヴェートリッヒ皇子は一時的にだが、戦士や勇者と一緒に魔性退治の旅をしたという。

 世界に不老不死を齎す時、仲間の死を憂い、一人苦悩を抱える戦士を心から心配していた。

 本当の事を話したら、きっと怒るだろうし『神』への不安感マシマシになるのは間違いない。

 他の王子様達だってそう。

『魔王』が『神』の配下だったとか、魔性が精霊の力を奪って『神』に送っていたとか。


「でも、これから宇宙に行くのに隠しておけないよね」


 今は表に出てこないことで濁しているけれど、リオンの容姿はもう隠しようがないレベルで変わっているのだ。

 何より。受け入れて貰えないと、この先リオンはずっと孤独を抱えていくことになってしまう。

 私達やお父様がいたとしても。本人が覚悟していたとしても。

 私が、リオンを闇に沈めるのは嫌。


「信じましょう。『七精霊の子(アルプリエール)』を」


 そうして、夕食後。私とお父様、そしてリオンは王子様達の向かい合った。

 今までのアースガイアの常識を覆す『魔王の真実』を伝える為に。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ