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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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魔王城 星の精霊と七国の決意

 長い、長い夜が明けて迎えた、七国との最終会議。


「マリカ皇女は、たった一夜で随分と美しくなられたな」

「は? いきなり何をおっしゃるんですか? ベフェルティルング国王陛下!」


 開口一番、どんな報告よりも先に、そう口走ったプラーミァ国王に私は頬を膨らませて反論する。


「無礼であることは重々理解している。けれどそう口走らずはいられぬほどに、今日の其方は美しい。

 正しく精霊女神、といった風情だ。なあ? そう思われぬか? エルディランド大王陛下」

「何故に、私に話を振られるのですか? プラーミァ国王陛下。

 妻にまた、顔を顰められるではありませんか!」


 からかわれて、なんだか泣き出しそうな声と仕草で反論するエルディランドのスーダイ様。


「でも、まあ。プラーミァ国王陛下のお見立ては正しい。

 今日の皇女は昨日までとは別人のように美しい。見惚れずにはいられません」

「あ、ありがとうございます」



 どこか、解っているぞって、眼差しで哂う兄王様と違って、本当に素直な眼差しで褒めてくれるスーダイ様の賛辞はちょっと嬉しい。

 時間が無くって化粧とか、ドレスとか全部お任せになっちゃったけれど。

 そう! この会議に間に合うようにする為の準備は本当に大変だったのだ。

 リオンが、もうギリギリまで私を離してくれなかったから。

 着て行ったネグリジェもドロドロで着られなかったので、私はリオンの上着に包まれてほぼ裸で城に戻ってきた。幸いと言っていいのか、私の側近達は会議の準備に回ってくれていたので、私の事後の姿を見たのは出迎えてくれたエルフィリーネだけ。


「お帰りなさいませ。マリカ様。

 ご無事のお戻り、心から嬉しく思います」

「エルフィリーネ」

「どうぞ、こちらへ。身支度の準備は整えてございます。

 アルフィリーガ。貴方も湯あみと着替えを。そのままでは人前に出られないでしょう?」

「ああ。ありがとう。エルフィリーネ。

 じゃあ、マリカ。また……な」

「うん、また、後で」


 ちゅっと、リオンは私の額に口づけを落として、それから自分の部屋に戻っていったらしい。地下の浴室でお風呂に入るのかな?

 実際、身体を洗い流さないと本当に誰にも会えない。全身、なんだかカピカピだし、甘いような酸っぱいような不思議な匂いがするし。


 エルフィリーネに連れられて行った女王の部屋にはちゃんと浴室がついていて猫足バスタブにはたっぷりのお湯が張られていた。

 全部解ってます。準備してましたって感じ。


「御髪も洗い流して香油を付けましょうか? 匂いが和らぐかと思います」

「そんなに匂う?」

「いえ、そういう訳では。でも、あの子も随分余裕が無かったようですね」


 くすくすと笑いながら、エルフィリーネが私の髪の毛を洗ってくれる。ハチミツシャンプーで二度洗い。それからロッサの香り油で髪の毛を撫でつける。

 人に髪の毛を洗ってもらうのって気持ちいいし、なんだかんだで昨日は一晩裸でいたせいか、指の先までかなり冷えていた。

 リオンの腕の中にいた時は気付かなかったけれど、お風呂に入るとじんわりと、身体全体に暖かさが染み込んでくるようだ。


「……お二人が、思いを交わし合う事ができたこと、心から嬉しく思います」

「色々と、心配かけちゃったみたいで、ごめんね。エルフィリーネ」

「いえ。私にとっては『星』の思いや精霊の使命も大事ではありますが、一番大切なのはマリカ様が健やかで幸せであることです。

 それが叶えば、私は十分に幸せなのですわ」

「ありがとう……」


 最近、避けていたわけではないけれど、ゆっくり話す機会は無かったから聞いてみる。


「ねえ。エルフィリーネが最初に言った『主』。私と同じ魂の色を持つ人、って北村真理香先生?」

「はい。私にとっては歴代の『精霊の貴人(エルトリンデ)』達は主というより、世話をするべき人形でございました。人前では私が従として仕えておりましたがメンテナンスや命令は私が担当しておりました。

 彼女達には何故か魂が宿らなかったので精霊石のティアラに疑似AIをインストールして聖地を守る『精霊国』女王としての役割を果たさせていたのです。

 ただ、無個性であった人工頭脳も人々との関りで少しずつ進化し、個性を獲得し始めました。魔王を倒し、アルフィリーガを育てた先代女王は、マリカ様達にかなり近い人間らしさを得ていたと思います」


 実際、昔、夢で出会った『精霊の貴人』はかなり表情豊かな人だった。

 私は彼女の転生では無くて、データを引き継いだだけのようだけれど……。


「初代主、北村真理香様は、とてもお強く、そして美しい方でした」

「そう……なんだ?」


 私の声が微かな疑問符を宿したのが解ったのだろう。

 記憶に在る『私』も、夢で見た『真理香先生』もそんなに目立つ外見じゃない。

 どこにもいそうな普通の女性だったからね。

 でも、エルフィリーネは、私の濡れた髪を風の精霊の力で乾かしながら薄く笑みを零した。


「外見が、という訳ではございません。心が、精神が、魂がお美しく、そして強くてあられたのです」


 勿論外見も、素敵な方でしたよ。というフォローも忘れない。彼女は本当に真理香先生が好きだったのだろう。

 彼女の言葉を否定はしない。

 日々の仕事に追われ、悩み、もがきながらも前を見て頑張り続けた彼女は確かに『美しい』人だったと思うから。


「同じ、魂の色をしているなら、私も彼女みたいになれるかな?」

「真理香様と同じ、もしくはそれ以上の存在になれると私は信じております」

「ありがと」


 エルフィリーネがそう言ってくれるなら、頑張って彼女のようなステキな大人、保育士を目指して頑張ってみようと心に決めたんだけど。



 まあ、そんなこんなで話はそれたが、リオンとの一夜と、新しい決意を胸に私は会議に臨んだ。そしてその会議での第一声がこれである。

 自分では、昨晩のことって、あんまり頭に残っていないのだけれど、よく向こうのマンガなどにあった『初体験の後、女は綺麗になる』っていうのは事実なのかもしれない。

 いつもよりお化粧ののりも良かったし、体調も凄くいいし。


「リオン殿も、見違えた。

 昨夜はどうやら、お二人にとってとても良い夜を過ごされたようだな」


 兄王様の暗喩に各国王様達がくすくす笑ってる。

 笑ってないのはちょっと複雑な顔つきのスーダイ様くらいで。

 神殿代表のフェイも懸命に笑いをかみ殺しているし。

 皇王陛下やお父様なんかはっきりと高笑いしているよ。

 なんでかバレバレって感じ? 

 リオンも平然としているようで顔赤い。


「お褒め頂けるのは嬉しいですが、本題はそこではありませんので。

 一晩、議事を持ち帰り、検討をした結果をお伺いしても良いでしょうか?」

「まあ、確かに本題では無いが無関係でもない。

 我々と星の命運を預ける『勇者』と『精霊女神』の力が充実していることはとても喜ばしいことだ。勝率が高まるからな」

「え?」

「実は既に通信鏡で、各国の意見は統一され、先ほど会議前に合意した。

 それをここにお伝えしよう」


 プラーミァ国王陛下の言葉に、各国国王陛下が立ち上がり、私達、私とリオンに向かい合った。

 深い礼を取り、宣言する。


「勇者の転生、いや勇者リオン・アルフィリーガ殿。そして精霊女神マリカ様。

 コスモプランダー殲滅にお力を賜りたい。

 許されるなら決戦は宙で。大陸への被害は最小限に食い止めたい」


 私とリオンは小さく顔を見合わせ、頷き合う。

 大陸の指導者達からの正式な要請だ。

 この時点で、宇宙でのコスモプランダーとの決戦が確定する。


「お二人に、戦闘を要請するにあたり、七国は総力を挙げて、援護を行う。

 事前準備、後方支援、ありとあらゆる支援を惜しまない。

 そして……」


 ベフェルティルング陛下の言葉を待っていたかのように、各国の王子様達が私達の元に進み出て来る。


「え?」

「証として、七国は各国王子、皇子をお二人にお預けする。

 叶うなら、最終決戦へも同道をお許し頂きたい。無論、皆、覚悟はできている」


 フリュッスカイトの公子、エルディランドのスーダイ様。プラーミァのグランダルフィ王子。シュトルムスルフト代表は勿論フェイで、ヒンメルヴェルエクトのアリアン公子も側に着く。アーヴェントルクのヴェートリッヒ皇子は、いつの間にか後ろに来ていたお父様と、パンと手を打ち合わせていた。


「本当に、宜しいのですか? 大事な、各国の後継者を」

「お二人だけに全てを押し付けはしない、ということだ。こき使ってやってくれ」

「マリカ!」


 足に力が入らず、膝から崩れ落ちてしまった。

 リオンが支えてくれた私の周囲を皆が心配そうに取り囲む。


「大丈夫ですか?」

「何を驚いてるの? 当たり前だよ。自分の星を守る為だもの」


 暖かい、陽だまりのような笑顔。思いに包まれる。

 でも、ダメだ。涙が止まらない。


「あ、ありがとうございます」


 これで、リオンを孤独の星海で一人戦わせずにすむ。

 私達の六年の時は無駄では無かった。


 積み重ねてきた時と、絆は確かに結ばれていたのだと知ることが、できたから。

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