魔王城 アースガイアの一番長い夜 17 二人の初夜 前編
二人の初夜 三話続きます。
過度な性的描写や喘ぎなどはありませんが、はっきりと身体を合わせていることが前提のお話です。
今回が一番濃度高め。
苦手な方は今回を飛ばして、次回から読んでも話は一応続きます。
お互いに、初めてで。
緊張に身体が強張っているのが解る。
私自身も、けっこうガチガチだけれど、リオンもどうしたらいいか。
一生懸命考えてくれているのが解る。
手慣れた風を装って私を抱き上げ、ネグリジェの前リボンをほどき、するりと私の腕を服から引き抜くとそのまま、花びらの上に再び横たえた。
夜の為の化粧。
男性との行為の為の準備を整えてきた私。
ネグリジェの下には下着をつけていない。上も、下も。
だから。
たった一枚の花嫁衣裳を剥がされてしまえば、私は生まれたままの姿を彼の前に晒すことになる。
今まで、誰にも。異性には見せたことの無い、私の全て。
「解っていたことだけど……女の身体、っていうのはここまで変わるものなんだな」
ネグリジェをシーツに、花びらの海に浮かぶ私を、食い入るように見つめ続けるリオンがごくん、と唾を呑み込んだのが解った。
「ここまで……って、リオン?」
「ずっと、忘れられなかった。脳に焼き付いたマリカの純白の身体が、これでようやく上書きできるかもしれない」
「上書き? って、え? もしかして?」
思い返せば一度だけ、魔王城に住み始めて間もなくの冬。
私の裸をリオンが見る機会があった。
お風呂でぶっ倒れて、溺れかけた時。
すっかり記憶の中から消去していた痴態だけれども、まさか、リオンはずっとそれを忘れずに持ち続けていた、ということなのだろうか?
「性欲なんて無いと思っていた、精霊の身体なのに。
あの時からお前を意識してた。
どうしても、お前に欲情するのを止められなかった。真っ白なマリカの身体にもう一度触れて。
抱きしめて……。
全て自分のものにして、俺で染め上げたいと願っていた」
私の上にまたがったまま、リオンはインナーを脱ぎ捨てた。
上着も、そしてズボンも。その下も。
薄暗闇に慣れた私の視界を固く大きく、逞しい肉体が埋め尽くす。
「うわあっ、凄い筋肉……。男の人って感じ」
「お前は俺をなんだと思ってるんだ?」
少し、拗ねたような顔で彼は私に再び覆いかぶさる。
今まで、リオンを男性として意識していなかったわけじゃない。
恋人として、結婚相手として、幾度も彼のカッコよさを実感する場面もあった。
でも服を着ていたし、ここまでリアルに男『性』を感じたことは無かったと思う。
全体的に細身ではあるけれど、鍛え抜かれた固い腰。
厚く余分な脂肪など一欠けらも付いていない胸板。太腿も腕も鋼のようだ。
「俺は『男』だぞ。
戦う為に最適化されて作られた生き物、そう思っていたけれど、今は違う、と解る」
「リオン……」
「お前を、こうして抱く為に、俺は男に生まれてきたんだ」
「あうっ!」
リオンの両掌が、私の胸に触れた。
昔に比べたらけっこう大きくなった方だと思っていた胸は、それでもリオンの長く、細く、でも鍛え上げられた大きな掌と指にすっぽりと包み込まれてしまう。
「ああ……柔らかい。そして暖かいな。
俺の身体とは、全然違う……」
「リ、リオン……」
「ずっと……夢にまで見た女の……マリカの身体だ」
「や……。待って……」
やわやわと揉みしだかれる度、私の喉は上を向き息を吐きだすしか、できなくなる。
気持ちいい、気持ちいい。
どうしようもなく気持ちいい。
優しく、ゆっくりと、でも無遠慮に触れて来るリオンの指は、私の胸の先端にはなかなか触れてはくれない。
だから、先端はもう痛いほどに固く張り詰めている。
ふつふつと、腰の中央から身体全体に何かが染みだしてくるようだ。全身に麻痺を起こす毒が染みだしているのだろうか?
リオンの指が動くごとに、頭と身体の感覚が奪われて行く。そんな気がした。
「うっ!」
突然、リオンの指が左胸の先端に触れた。
タイミングを合わせるようにリオンが私の胸に顔を寄せ、唇で、先を食む。
「あ、ああっ!」
私の右胸の先端を唇が吸い付き、舌が転がし押しつぶす。
両方の胸に同時に与えられた刺激は強烈で、初めて知る感覚で。
意識の全てが真っ白になる感じがした。全身に電流が奔り動けなくなる。
「イヤなのか? ここは女性が悦ぶ場所だとフェイが言っていたが……」
登りつめてしまった私がなんとか息を整えようとしているのを見て、ぺろり、と舌を動かしながらリオンが上目遣いで嗤う。
「フェイに女の悦ばせ方を教えられたのは不老不死後の最初のプロポーズの後だ。
あの時はどういう意味か解らない事も多かったが……」
フェイ! 何をリオンに教えてるの!
理不尽な怒りをここにいない人物に八つ当たりでぶつけるけど、もう声を出す事さえままならない。
「ち、違う。違うけど……でも……。う……ああっ」
嫌ではない。むしろ気持ちい。
身体は間違いなく喜んでいる。でも気持ちいい、以外の感覚が解らない。
そもそも、北村真理香の記憶時代はともかく、この身体になってから自分を慰めたことさえなかったのだ。初めてぶつけられる男性からの性的感覚は正直、強烈に過ぎる。
「イヤでないのなら……もう少し、味あわせて欲しい。
ああ、女の身体というものは、こんなにも甘く魅惑的なものだったのか……」
先端からつつ、と銀の糸を引きながら舌を舐めたリオンはそのまま、私の胸に口先を戻す。
本当に美味しそうに味わっている。
人の肌と汗の味しかしないと思うのに私の胸の中には麻酔薬か、媚薬でも混入されているのだろうか?
リオンが吸い上げ、転がし、キスを落とす度、私の頭もリオンの身体も昂って熱を帯びていく一方だ。身体から色々なモノが溢れ出していく。
荒く吐き出された吐息、必死に堪えても零れ出る嬌声、じわじわと染み出る汗。目元から滲む涙。
そして……溢れ滴り落ちる水滴。
「ん?」
リオンが何かに気付いたように身を起こした。
ふいに軽くなった身体。
重さと、熱と、刺激から解放されて私は懸命に呼吸を整える。
以前、ノアールが男性を知る前の女と、知った後の女は全く違う。別物だと言っていたけれど、確かにこの情報量は凄すぎる。
今まで全く経験した事の無い類のもので処理落ちしそう。
「マリカ……。悪い」
「きゃああ!」
気を緩めていた私の両足首をリオンが太い掌で掴んだ。
私の足の上を跨ぐようにして覆いかぶさっていたリオンが、身体をずらして場所を変えた。両腿を大きく開きその股座の中央へと身体を滑り込ませる。
「やっぱり……濡れている」
「ひゃあっ! ちょ、ちょっと……」
くちゅ、っとリオンの指が、私の中央に触れた。
足を開かれてしまった為に、リオンの前に完全に晒されてしまった秘所。恥ずかしい。
そこは、彼が言う通り、滴り落ちる液体で溢れる程に濡れていた。
リオンに触れられたことで私の中から生まれてきた愛の水。
絡めとったそれを彼は躊躇いも無く唇に含み舌に乗せる。
「甘いな……。カエラのシロップなんか目じゃなくらいだ」
「……嘘」
「嘘じゃない。後を引く、もっと、もっと欲しくなる。癖になる……」
そういうとぺろりと舌なめずりしたリオンは、今度は躊躇いなく私のアソコに口を寄せた。
「止め……汚……な……ああっ!」
「汚くなんかない。透き通っていて穢れも無くって、澄み切っている。
お前そのものだ……」
「あうっ!」
体液が甘いとか無いとか。さっきの刺激でまだ終わりじゃないのか?
とか思っていられたのはほんの少しの間だけのことだった。
リオンが自分の肌に触れている。
それだけで、身体が痺れるくらいに気持ち良くって、生きていた間に感じていた全てを塗り替えるくらいだったのに。
人生最高がどんどん更新されてしまう。
彼が舌を転がし、音を立てて雫を啜り、秘所を堪能していく度に、身体がどんどん登っていく。
止まらない。
愛液も、快楽も……。
「今まで、キスをする度にマリカから力を貰っていたけど段違いだ。
身体全体に、力が漲っていく……」
「リ、リオン……待って……」
「ダメだ、止められない。止める気も無い……!」
「あああっ!」
一際強い刺激が、脳を突き抜ける。
周囲の全てが真っ白に塗り染められ、高く突き抜けていくような感覚。
さっきの胸で感じたものと、似ていて非なるモノ。
これが、絶頂というものだろうか?
彼の唇と歯が、自分の真中にある芽を見つけ食らいついたのだろうと、気付けても思う事はできなかった。
「……マリカの身体は、凄いな。
どこをとっても、俺の身体を奮い立たせる。
力を意思を、そしてお前を愛しいと思う気持ちを燃え上がらせる」
強すぎる刺激に簡単に上り詰めてしまった私は、その後も続く容赦のない愛撫に荒い呼吸を吐き出すしかできない。
弄ばれかき乱される。
心も身体も。
こんな時にどんな言葉で返したらいいのかも、反応の仕方も解らない。
リオンが指で私に触れるだけで、達した後の敏感になった肌は熱を帯び跳ね上がってしまうのだ。
頭も目も滑ってぼやける私の前に、結ばれる像はただ一つ。
リオンだ。
彼しかもう見えない。感じられない。
「もう止められない。お前の中に入りたい。
マリカと一つになりたい」
「うん。いいよ。リオン……」
伺うような目で私を見つめるリオンの背中に、私は手を回した。
ぴくんと身体が爆ぜる。
彼の身体をひき寄せたことで、彼の芯と私の秘所が触れたからだ。
燃えるように熱く、固いそれはこの体型からは見えないけれど、張り詰めているのが解る。
多分、私を求めてくれているのだろう。
「来て……」
呼吸を整えそう囁いた。寄せられた彼の耳朶に口づけする様に。
「頂戴。リオンの全部。
……一番奥まで来て私に、リオンを刻んで。
私の全てで貴方という存在を記憶するから」
リオンという存在が変わってしまうというのなら。
私が愛した彼の全てを、私の中に刻み込み、保存する。
例えリオンという存在が変わろうと消えようと、この思いは揺らがないという自信はあるけれど。
それでも、私と共に歩み、支え、愛してくれたリオン・アルフィリーガという存在は私の中に残り続けるのだ。
「ああ。俺も、記憶する。
他の誰にも見せないお前の全てを。
作り替えられようと決して忘れない、消さない。
記憶中枢の奥に刻み付ける」
「うん」
軽い口づけ。唇に触れるだけのバードキス。
それが最後の合図になった。
リオンの掌が、私を縫い留め、固定された身体に、熱く滾った彼の先端が近づく。
私の入り口に触れ……微かな水音を立て
「ん……う……あああっ!」
貫いた。
初めて女の身体を知る少年に、相手を想う気持ちは十分にあっても気遣う余裕は実は、どこにもなかったのかもしれない。
一気に、躊躇もなく、押し込まれてしまう。
ゆっくりと見る余裕も無かったので、大きさも何も解らないけれど、今まで何も知らずにいた私のナカは一瞬で、限界まで押し広げられリオンで埋め潰されてしまった。
大きい。熱い。
内部から伝わる熱と質量に息ができない。
「!」
「……! ひっ……っ! っ……、あっ、ああっ!!!」
リオンが止まったのは、一度、一瞬だけ。
微かな柔らかな、絹のような抵抗が彼の行く手を阻んだから。
けれど、そんなもので彼はもう止まらない。
私を縫い留める掌に力が伝わり、次の瞬間
ぷつっと。
微かな音を立てて処女膜が破られた。
「ーーーっ!」
身体の内側から、切り裂かれるような苦痛はリオンに気取られないように。
懸命に押し殺していたのだけれど。
「あ……ああっ!」
リオンの先端は容赦なく進み、やがて最奥に辿り着いた。
私の閉ざされた子宮の入り口にリオンが触れた、と思ったと同時。
身体がのけぞり電撃がナカを奔る。
ナニカを感じた。
圧倒的な存在感。
下手をしたら胎内を埋めるリオンよりも。
身体全体に奔る痛みと、それに倍する快楽に翻弄される中
「マリカ!」
リオンの中から一際強く滾る熱が注ぎ込まれる。
脳を叩きつけられるような、圧倒的な快感が全身に広がり、呼吸の仕方を忘れてしまったかのように 私はパクパクと口を開けた。
その間にもどろりとした液体が、入り口をこじ開け中に入っていく。止めようはない。
自分の中の事だ。
勿論、見える訳ではなし。
ただの幻覚だと解っているけれど、まるで、金の水を湛えた泉に、白と赤の液体が混ぜられたような感じ。
今まで完全に閉じられて、澱んでいた金の水は、開けられた入り口から外に流れだそうとしている。ナニカと共に。
「あ……っ」
何故か理解した。
終わった。
何かが、変わる。出てくる。目覚める。
今までの私。
子どもで何も知らなかった『私』はここで終わるのだ、と。




