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【新装版】子ども達の逆襲 魔王城で子どもを守る保育士兼魔王始めました。  作者: 夢見真由利
第五章 保育士魔王兼精霊女神 始めました。
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魔王城 国王会議と『神』と『精霊』

 翌日、魔王城での国王会議。

 大広間に臨時に設置された議場にて。


『神』は昨日、私達に説明したコスモプランダーと戦う為の方法について各国王、王族に説明した。ステラ様が力を貸したのか、薄ぼんやりとした人型の立体映像を出したので普段、『神』と言えば精霊獣のイメージが強かった国王陛下達はちょっと驚いたようだ。

『神』の威厳と威圧感に言葉もない。

 けれど、国王達が本当に言葉を失ったのは、彼の提示した対策方法に対してだった。


「星の海に飛び出し、宙でコスモプランダーと対峙する?」

「その為に、リオン殿とマリカ様を『神の戦士』として変化させる、と?」

「人の身体を作り替える? そんなことが……」


 魔王という言葉は明確に避けた。『神』が魔王を操っていたなんていうのはちょっと言えない事だから『神の戦士』という形にしたようだ。

 でも、リオンを『神の戦士』として力を与えて人外にする、という発言にはみんな言葉を失う。

 詳しいイメージは想像できないにしても、宙でコスモプランダーと単独戦闘するという時点でとんでもないことだと解るだろうから。


「身体を作り替える、とおっしゃるからには、終了後、元に戻るということは不可能なのですよね?」

『生身の身体を、戦闘用に強化、置換するのだ。私は『強化』『増幅』はできても変化させることはできない。一度火を通した食材は二度と生には戻らないだろう?』


 因みに、私はかなりはっきりと想像できる分、背筋が寒くなる。

 置換型のサイボーグ。

 強化ポリマー化された筋肉と肌、エリクスの背に付けられたような翼をさらに強化した人工翼と、方向変換の為のブースター。

 脳を守る為のヘルメット、ゴーグル、マスクを着脱式にすれば、頭部の改造は最小限にできるかも、と言われたけれど『魔王』と呼ばれるしかなかった人体加工はあまりにも辛すぎる。

 だからだろう。神は私に同じ改造を施すとは言わなかった。

 あくまで私に改造処置が施されるとしたら、宇宙空間で短期間、生存可能にする体内処理、そして宇宙船への接続をスムーズにする為の神経系の強化だそうだ。人間の形を外見上は保っていられる。

 まあ、それを嬉しいとはとても思えないけれど。


 お父様は無言。能面のように表情が見えない。

 昨日の夜から一言も口を聞いて下さらないんだよね。

 そんなこと許さん、とも、止めろ、とも言わない。言えないのかもしれないけれど。

 私にも、リオンにも。


 フェイやアルの方がまだ感情を露わにして『神々』に文句を言ったり、喰ってかかったりしていた。


「リオン一人に戦わせて、勝てるような安い相手なのですか! コスモプランダーは!」

「他に方法は無いのかよ! 二人にだけ全てを押し付けるようなのはオレは嫌だ!」


『勘違いするな。それが、一番。

 ありとあらゆる点において被害が少なくて済むというだけだ。この星の地表に奴らを降ろし戦うというのなら二人を使わずに戦う方法も、ないわけではない』

「だったら!」

『アースガイアの地表に、屍山血河を築く覚悟があるのなら、だがな』

「!」


 でも『神』レルギディオスは、もしかしたら表面だけかもしれないけれど、冷静で感情の無い文字通り『神』の顔で説明を続ける。


『コスモプランダーは、ありとあらゆるものに作用し、作り替える(ウイルス)を持っている。今、この地上においては『星』の守りがある故、その毒が人や大地を今すぐ汚し害を与える可能性は少ないが、絶対に無害とは言い切れぬ。今現在も、これからも。

 人の身に喰らいつき取り込みかけた事例もある。精霊の力による守りの少ない赤子に体調不良が出たという話もあるようだ』


 これは、嘘や脅しではなく被害調査が進むにつれて判明し報告されてきた事例だ。

 コスモプランダーの襲撃直後、大聖都で出産した数名の母子。

 その赤子の方に異常な熱が出たり身体の一部が腫れ上がったりすることがあったと報告された。

 出産所では手の施しようがなく、神殿で治癒を施してもらい落ち着いたそうだ。

 今は、大聖都内の孤児院で様子を見ているけれど、その話を聞いたアーレリオス様は、おそらくコスモプランダーが散布したナノマシンウイルスと、この星の『星』の精霊の力の競合であると、教えて下さった。

 コスモプランダーが先制攻撃としてしかけたナノマシンウイルスは、ある程度、防御壁を張った時に洗い流された筈だけどものがウイルスだし、目に見えないし。

 特に散布量が多かったと思われる大聖都には、もしかしたら今も残っている可能性があるという。


『大人にはある程度の免疫ができているが、生まれたばかりの子どもはその機能が十分ではない。私は詳しくは無いが、母親から受け取った免疫が切れて、熱を出す子どもの事例は普通の人間でもよくあるのだろう?』


 ある。

 普通にある。あと、保育園や幼稚園に行くようになって、周囲から風邪や感染症を貰ってくるとか。乳幼児は特に多い。

 それと同じような形で、今まで変な病原菌などが無かった世界で新型のウイルスに子どもや免疫機能が弱まった老人などがやられることは普通にありうる。

 それと同じように、コスモプランダーのウイルス散布の影響が今後出て来る可能性は考えるまでもなくかなり高い。

 ステラ様の『精霊の力』に守られているから、免疫があるからと、胡坐をかいてはいられない。


『繰り返すが、宙に座すコスモプランダーの元に選ばれし者が乗り込み、倒すのが星を最も傷つけず、被害も少なくて済む方法だ。

 マリカとリオンに処置を施せば、最悪、敗北しても僅かに生存の目が残る。

 死したとしても、後に肉体を再生させることも不可能ではない。

 魂を拾い上げ、バックアップした細胞から肉体を編み、人格データや記憶を継続させる。

 完全に同じに見えても微妙な所では別人となるだろうが『転生』と呼ばれる形で生まれ直させてやることくらいはできるだろう』


『神』の提案は、神々なりに、この星の被害を最小限にし、私達のことも考えて下さったものだと解っている。

 だから、昨日の夜、神々の会見の後、フェイもアルも、お父様ですら文句を言えなくなったのだ。


「しかし、それではあまりにも、マリカ皇女とリオン殿の負担が大きい。コスモプランダーとの戦いを全てお二人に任せるというのも……」

『勝利の可能性を上げたいと願うなら、船に王族や能力者が乗り込み、二人を補助することもできる。リオンにしか、マリカにしかできないこともあるが、他者にもできることを分担し支えることで、二人のリソースが空き、コスモプランダーと有利に向かい合えるかもしれん』

「なら……」

『ただその場合、コスモプランダーに敗北し、船が破壊された場合、乗り込んだ補助者達の生存確率はほぼゼロに等しい。

 さっきも言ったがマリカとリオンは改造を施せば、僅かながら生存の目が残る。だが同行者に同じことは不可能だからな』


 人間が、宇宙船に乗っているとはいえ、コスモプランダーの眼前まで行き、注意を引き付ける役目を受け持つということは、確実な死への片道切符だと『神』は言う。

 実際、今の科学レベルで宇宙空間でも生存可能な宇宙服を作ることは不可能だ。

 技術的なものもだけれど、素材が足りない。そもそも宇宙に投げ出されれば誰も救出に行けない。

 助けに行けるのはリオンだけで、リオンが敗北すれば助けることもできないジレンマ。


『まあ、二人が敗北した時点で防御壁は失われているからコスモプランダーの本格的な襲撃が開始されるであろう。宇宙船には私も同行するので『神』も消える。

 隕石の乱雨。毒の散布。星の精霊の助力を望めない地上で未知の怪物との戦闘。

 星の侵略者共との本格的な死闘の開始。

 そう考えるとどどちらの方が死に近いか、というだけの話になるかな』

「民を、最低でも宙に飛び立つ者をもう一度不老不死にして頂くことはできないのですか?」

『できないし、しない。意味もない。

 不老不死はあくまで身体が傷つくことを禁止する措置だ。

 宇宙空間のような空気の無い場所では、生存に必要な呼吸を行うことができないからむしろ呼吸奪われる苦しさが死という救い無しで永遠に続くことになりかねんぞ。

 加えて言うのなら不老不死を与える私自身が星を離れれば、その時点で星に生きる者達への不老不死は効果が無くなる。

 宇宙船に乗っている者に不老不死を付与しても私が失われれば以下同文だ』


 今の時点であれば、相手の情報があるから虚を突き有利に戦える可能性がある、と『神』はおっしゃる。でも、多分一度きりのチャンス。

 それを外せば、人々が生きるアースガイアにコスモプランダーが降りて来ての接近戦(クロスレンジ・バトル)。精霊神様達もいるし、人間もただ負けてはいないだろうけれど、戦いのルールが全く違う相手との戦いは、相当な泥仕合になる可能性が高い。

 コスモプランダーがアースガイアの文化などどうでもいいと思えば、巨大隕石を落として人類を全滅させる手だってあるのだし。


『神々は、この星と、大地に生きる子ども達を守護する者ではあるが、星に生きる命ではない。

 不老不死を奪った時とは違う。

 この星と生命の選択に関与しない。

 アースガイアの命運を決める権利を有するのは、お前達だけだ』


 ――どうする。


『神』から突きつけられた、容赦のない、けれど優しい宣告に、直ぐに答えを出すことができる者は誰も、誰一人としていなかった。

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