火国 四番目の選択
いろいろ悩んだ結果、私は四番目の手段をとることにした。
二番目の方法の変形亜種とも言えるけど。
「お父さん、一緒にステラ様の所に来て下さい!」
『防御壁を張った後の報告も私への気遣いも無しにいきなりそれか!』
まあ、我ながら甘えているとは思う。
お父さんなら優しいから、きっと聞いてくれると思ったから。
アルケディウスから戻った私は、兄王様に連絡をとり、プラーミァの精霊石への面会(?)許可を取り。
そして多分、私が来るのを待っていたであろう火の精霊神 アーレリオス様にそうお願いした。ラス様と違って、直ぐに精霊獣を出して下さったんだよね。
疲れているのは同じだと思うんだけど。
ありがたい。
「勿論、お父さんには感謝しています。
防御壁を張る時も、その後も出来る限り力を貸して下さっていたんですよね。
ありがとうございます。
ピュールが一度消えちゃったのは、力を使い果たしてしまったから?」
『それが解っているなら、まあいい。
ほぼその通りだ』
ピュールは私の肩にぴょんと飛び乗ると褒めるように頭を寄せてくれた。
『何の予備知識も無しに見事な防御壁を張り巡らせた度胸と力は見事だった。
あそこまで立派にやりおおせるとは思わなかったぞ。
よくやった。
流石は真理香の娘だな』
褒めてくれたのは嬉しいけど、ちょっと引っかかる点もあったり。
「私にはできるって自信満々におっしゃっていた割には半信半疑だったんですか?」
『そういう意味ではない。
何の予備知識も練習も無しにやりきったことを褒めたのだ』
「それはきっと私一人の力ではなく、リオンやお父さんや、みんなの力を借りたからですね。きっと」
私も、正直あの時、どういう風な理論とやり方で防御壁を張ったのか覚えていない。
もう一回やれと言われてもできるだろうか?
難しい気がする。まあ、それはさておき。
「アーレリオス様。
現在、大聖都で国王会議が開催されています。
今年は主にコスモプランダー対策が主題です。
各国の皆さん、コスモプランダーとどう対処するべきか、精霊神様達の御指示と意見を仰ぎたいんだそうです」
『確かに……話し合ってもらわなくてはならないな』
「それで明日からは魔王城で会議を行うでいいですか?」
『仕事が早いな。お前はまずラスに頼みに行くと思ったから指示はしておいたが……』
「今は皆様、大神殿に来てますから。ここに来る前にベフェルティルング国王陛下にラス様の要請を伝え、各国への通達をお願いしたので皆様も都合を合わせて下さると思います」
はっきりと『神様』がいる世界で、その要請を断れる筈がないよね。
議題としても皆さん気になる事の筈だし。
「それで、お願いです。
私、これから魔王城に行ってステラ様とお話して来ようと思っています。
付いてきて下さい」
『だからいきなりそれか、と言っている』
「だって、私だって気になってるんです。防御壁を張る時のお二人のトラブル」
実際問題として、あの時、何が起きていたのか、私はよく解っていない。
防御壁を張れと言われて、そうしようとしたら、なぜかステラ様が止めに入った。
それをアーレリオス様が怒って追い払った。
解っているのはそれだけ。
「なんでステラ様は、私が防御壁を張ろうとしたのを止めようとしたんですか?
防御壁を張らないとコスモプランダーが一気に攻めて来る可能性もあったんですよね?」
『多分、直ぐに降りて来ることは無かっただろうが、隕石をさらに大量に落とされたり、奴らのナノマシンウイルスをばら撒かれたりして、良くないことになった可能性は高いな』
「なら、ホントにどうして?」
『それは……ステラの事情で、我々の事情だ』
「皆様の間で意思統一とか、共通理解とかはされていないのですか?」
『『精霊神』同士の間では意思疎通ができている。ただ、『第二世代』の二人は孤立した空間の中にいるからな。向こうから出て来るか、向こうから入れてくれるかしないと我々の声は届かない。ここ数日は自国関連で忙しかったし、コスモプランダーの襲撃そのものも、実際に来るまで半信半疑だった』
この星の中枢とも言えるステラ様が万が一にもハッキングなどの攻撃を受けないように、というセキュリティなら仕方ないかもしれないけれど……。
「ラス様、こうもおっしゃってたんです。これからの対コスモプランダー戦で私とリオンに負担がかかるって」
『……ああ、そうだな』
アーレリオス様も頷くってことは神々の間では、もう共通理解できているということなのだろうか?
私とリオンがやるべき『役割』について。
『この星を守る、という意味での最短、最良の方法はある。
だがそれには、お前とリオンの犠牲が不可欠だ』
「犠牲?」
『今回に関してはお前達、特にリオンにかかる負担が尋常ではない。
犠牲と言う言葉が一番相応しい。
星の守護と引き換えにライオットがお前達に望む、人間としての幸せは完全に消し飛ぶ』
「……だったら、会議の前にちゃんと話をして、心の準備をさせて下さい」
私個人であるのならそれが多少きつい事でもやる覚悟はできている。
リオンには、できれば人間としての幸せを掴んで欲しいけれど多分、リオンも同じ選択をするだろう。
私達はどうしようもない似た者同士だから。
ラールさんのような被害者をもう可能な限り出さない為にもきっと。
「ラス様は言いたくないから、ステラ様かアーレリオス様に聞けっておっしゃいました。
でも、どちらか片方からだけ話を聞くのは不公平だと思うのです」
アーレリオス様にはアーレリオス様の。ステラ様にはステラ様の言い分があるだろう。
どちらかにだけ、話を聞いて判断するのは違う気がする。
トラブルは両方から聞いて先入観なく判断するのが大事と保育士の記憶の中で叩き込まれている。
「だから、教えてください。
何があろうと逃げません。星の精霊としてのやるべきことは、必ず成し遂げて見せますから」
『我が子に。そう思わせてしまうことそのものが、私達の未熟、そして罪。解ってはいるのだがな……』
「お父さん……」
私の頭の上に逃げてしまった精霊獣の表情は見えない。
でも、言の葉のあちこちに憐憫や後悔、愛情の匂いがする。
私、いや、私達に向けた……。
『解った。今、ステラに向けてメールを送った。
共に行こう』
「お父さん」
『お前達には知る権利と選ぶ権利がある。自分達のことだからな。
最終的には道が定められているとしても。
お前達に責任を押し付けている、ともいえるが』
「それでも。自分の選択権があり、意志で決めさせて頂けるのなら、幸せです」
『ああ。そう言って貰えるのなら、少しは救われるか』
小さく息を吐き落とした精霊獣は、そのまま私の肩に場所を移した。
『ステラから受け入れると連絡があった。魔王城に行くぞ』
「一緒に来て頂けます?」
『ああ。リオンにも声をかけて一緒に行け』
「解りました」
精霊石の間から、火の精霊獣を連れ出し、私は大神殿に戻った。
大聖都に戻って打ち合わせをしているリオンに声をかけたら……
「僕も行きます!」
話を聞きつけたフェイに、とんでもない勢いで迫られた。
「二人に何かを強いる可能性がある案件だというのなら、僕は絶対に同行します」
「フェイ……」
「止める存在がいないと、二人は神々の言うままに己を犠牲にしかねない。
それは断固阻止しなくてはいけないので」
さらにはフェイはアルとお父様にまで連絡。
二人も速攻、やってきた。
お父様なんて襲撃の事故処理で絶対にお忙しいのに、全てを投げうってきた感じ。
「連絡を感謝するぞ。フェイ。
また話の外側に置いて行かれるところだった」
「いえ。神々の悪どさには慣れてきたつもりなので」
「ライオ……」
「コスモプランダーを倒すには全面的に同意、協力するがお前達を犠牲にすることについて俺は絶対に許容するつもりはない。
お前達は絶対に幸せになるんだ!」
お父様の言葉にリオンの表情が曇ったのが見えた。
もしかしたら、リオンはもう何かを察しているのかもしれない。
私達の運命について。
「行きますよ」
国境越え転移魔方陣であっという間に魔王城へ。
到着した、と思った瞬間。
私達は純白の空間にいた。
「待っていました。
話をしましょう。この星と、貴方達のこれからについて」
二人の神々と、逃れられない結末が待つ、疑似クラウドに。




