大聖都 精霊女神の目覚めと後悔
コスモプランダー襲撃の後、私は防御壁を張って直ぐ意識を失って地面に落下した。
幸い、リオンが一緒にいてくれたので、地上激突前に転移術を使って、大神殿の中庭に移動。事なきを得た、らしい。
その後、私は昨日、目が覚めるまでの六日間。完全意識喪失。気絶していた。
私の中にいたアーレリオス様が精霊獣として姿を現し
『力を使い果たして、眠りについているだけだ。ゆっくりできる所で休ませてやってくれ。ただ、魔王城には連れて行くな。
ステラとマリカを今、会わせると良くない事になる可能性がある』
とリオンとフェイ、アルに言い残して消えてしまったので、そのまま大神殿の自室に寝かせておいたのだって。
アルケディウスからお母様と、フォル君、レヴィーナちゃんが私の為に来て下さった。
何かがあって意識を失う度に、お母様に面倒をおかけしているようで申し訳ないな、と思えたのは意識が戻ってからの事。
はっきり言って、今までの気絶人生、最大レベルで力を使い果たした私は意識も取り戻さず、そしてほぼ、夢も見ないまま眠り続けた。
目を覚ましたのは昨日の朝の事だ。
正直寝ぼけていて今一よく覚えていないのだけれど。
「マリカ!」「マリカねえさま!」「ねえさま?」
「…………あれ? お母様? ここ、アルケディウス?」
ぼんやりした頭で、でも私の寝台を覗き込むお母様達を見て、私はそんなことを口走ったらしい。
「私が解るのですね? 良かった。本当に良かったわ」
私の頬に当たるお母様の手がひんやりと冷たくて、でもどこか暖かくて。
首元と、お腹の上にぎゅっと、しがみ付く双子ちゃんの体温が熱くって。
少しずつ、頭の中の靄が解けて意識も覚醒していく。
「あっ! コスモプランダーは? あの後、どうでしたか!」
「大丈夫。防御壁が張られて、ひとまず危機は乗り越えたようです。貴女のおかげですよ」
「私の……?」
「ええ。私の知っている限りの事は話します。
まずは服を着替えて食事をしなさい。貴女は約一週間、ずっと飲まず食わずで眠り続けていたのですから」
で、食事と着替えの後、ゆっくりと身体を動かして寝台から降りた私はお母様から、今の大陸の現状を伺ったのだった。
「もう少し、ゆっくりと休んでいて欲しい所だけれど、緊急事態なので仕方ありません。
各国、災害対応をしながら貴女の目覚めを待っていたの。
貴女の意識が戻り、動けるようになり次第緊急国王会議が招集されることになっているわ。元々予定されていた新年の国王会議と、日程はほとんど変わらないですが」
「あ、そうか。成人式の日からもう一週間になるっていうことは新年が過ぎちゃったってことなんですね?」
「ええ。各国細やかな式典と、国民に対する災害報告は行ったようよ。
これから、皆で力を合わせて宇宙からの攻撃に立ち向かっていかなくてはならないから」
お母様の話によると、私が防御壁を完成させた一週間前から、情勢は大きく変化してはいないそうだ。コスモプランダーの襲撃による隕石の落下によって、各国少なくない被害は出たが、危惧されていた、人間が宇宙から散布されたウイルスに感染し、死亡するような事例や、魔性化などの報告は無く、ほぼ純粋な隕石落下による物理的被害に留まっている。
「ただ、ね。
各地の魔性が一部凶悪化し人を襲っているそうです。
これについては、後で皇子と話をして頂戴。ノアールから相談と連絡があったそうだから」
「ノアールから?」
ノアールからということは、今、魔王城(真)で人類の脅威としての魔王役をやっているエリクスからということ。ノアールはエリクスの伴侶にして魔性達の女王だからね。
この星における魔性は『神』が作り上げたナノマシンウイルスを加工した『気力』の集積装置。それが、もしかしたら、コスモプランダーのナノマシンウイルスの影響を受けて暴走とかしているのかもしれない。
そうだとしたら、かなり問題だ。
早めに連絡を取り合わないと。
「それから、アルケディウスとプラーミァとエルディランド。
あと大聖都で落下した隕石が変異、活性化して被害を出したという報告もあります」
「隕石の活性化?」
「そうです。カマラから聞いたけれど、貴方達が大聖都に来た時に、隕石から怪しい物体が生まれたのでしょう?」
「はい。直ぐにフェイが凍らせてしまいましたけれど」
「それと同じと思しき現象が、複数国で起きたのです」
「アルケディウスと大聖都、プラーミァにエルディランド、ですか?」
「ええ、一番被害が大きかったのは大聖都ね。大神殿にも落ちたけど、街での方が大変だったの。プラーミァも少し人的被害が出たわ。
ただ、お兄様が精霊神様の命令で警戒していたので、比較的軽微なものでした」
「人的被害、ですか?」
焦る私にお母様は、少し困ったような微笑みで口を開く。
「大聖都ではね……、ラールが死者を除けば一番の被害者よ」
「え? ラールさんが、被害? 一体何があったんですか!」
「……これに関してはフェイとアルが仮説を出したので、今の所、続く被害は起きていないわ。どうやら、コスモプランダーが私達人間に対して仕掛けてきた攻撃のようね」
「答えになってません! ラールさんに何が!?」
「後で、本人かアルに聞きなさい。命に別状はないからその点に関しては心配しないで」
正直な所、ラールさんについては後で話を聞いて、めっちゃ落ち込んだ。
今も苦しいし、辛い。
もし、私がもっと早く、的確な対応をできていたら、って思わずにはいられないんだけど、当のラールさんは。
「落ち込むの無し!
マリカちゃんのせいじゃないんだから。泣いたりしたらせっかくの綺麗な女神さまが台無しだよ」
って逆に慰めてくれた。
私は全然、女神なんかじゃない。
星を守る為の『精霊』で。それさえちゃんとできない。
みんなを守り切れなかった不出来な存在だ。
でも、私以外にできる者がいなくて、やらないと世界に大きな傷がついてしまうのなら、やるしかない。
それくらいしか、罪滅ぼしにはならないのだから。




