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皇国 七国オンライン会議 

 魔王城の島の探索から戻ってきた翌日。

 探索結果の報告会を兼ねた七国オンライン会議の会場で


『ほほう。いよいよ勇者の転生も覚悟を決めたか』


 面白がるような口調で問いかける火国 プラーミァ国王ベフェルティルング様を前に場の中央に立つリオンは、


「まだまだ未熟者でございますが『聖なる乙女』いえ、大神官と共に『神』と『星』と『精霊』。そして人を繋ぐ架け橋となれるように努力していく所存にございます」


 優美に恭しくお辞儀をする。

 純白に金糸の縫い取りも煌びやかな神殿騎士の正装に身を包んだ『勇者』。

 リオンは伝説のような金髪、緑の瞳ではないけれど、一つ一つの仕草は流麗でまるで流れる水のよう。闇色の髪、露を集めたような漆黒の瞳、

 端正な横顔は見る人の視線と心を奪わずにはおかない。


『魔王城の島と呼ばれていた場所は実は星の聖地であり『神』と『星』がおわし、我々に聖なる城と土地、そして任務を与えたと聞く。

 そしてリオン殿は『神』の依り代として選ばれたと』

「はい。『神々』は気高く別の次元に有りて、我々を見守っておられます。

 現世にて力を発揮するには依り代たる肉体と信仰の力が必要とのこと。

 私は、その為に力をお貸しするだけでございますが」

「『聖なる乙女』との婚姻後、神殿は『神官長』としてリオン殿を迎える予定にございます。『神』と『星』が依り代、代行者として信頼を預けるお二人が神殿を統べる事で各国の『精霊神』を含む神々の威光は今以上に輝き、大陸を遍く照らす事でしょう」


 どこかバツの悪そうな顔で、王族からの称賛を受けるリオンと違い、フェイは心底嬉しそうな顔で口上を述べる。

 魔王城の島でも思ったけれど、リオンを自分の上に仰げることがフェイは本当に嬉しいらしい。普段だったら式典以外では滅多に纏う事の無い正装をリオンに着せているあたり本気を感じる。

 私は自分のドレスを俯いて見やる。

 ……今日は会議だから、舞踏会程華やかな服を着てるわけじゃない。

 むしろシックで地味め。

 リオンと並んだ時、見劣りしないかな?

 じゃなかった。


「『神』と『星』の聖地たる元魔王城の島の開拓と、今後目覚めて来る『神の子ども達』の保護を条件に、『神々』は島に住まう許可と象徴たる城、そして『神の国』の英知の結晶たる図書館をお与え下さいました。

 新年より正式に島を開放、移住希望者を募っていきたいと思いますので、ご協力を賜れれば幸いです」


 二人の会話を受けて後、私が改めて各国王様達に『神々の意志』を伝える。

 魔王城の島を開墾し、住めるようにして十万人の子ども達を目覚めさせる。

 その為には受け入れる側の島にも万単位の人材が必要だ。


『フリュッスカイトの一部の研究者は新しく発見されたという図書館に興味津々だ。

 母上など、もう移住する気満々で荷造りを始めたぞ』

『父上も、話を頂いてから随分と若返ったようだ。不老不死前よりも元気な様子でな。

 移住した後何ができるかを、グアンやダーダンと論議している』

「移住者の第一陣はフリュッスカイトとエルディランドの技術者など各二千人でしたか?

 新年、春の訪れと足並みを合わせて開拓を開始。

 居住区画の整備を行い、麦や米の栽培を始めて、落ち着いたら少しずつ『神』の子ども達を起こしていきましょう」

『第二陣は秋の収穫期を予定しています。ヒンメルヴェルエクトで現在研究中の農業機械などを、技師と共に移動させ実用試験を行うという形でよろしいですか?』

「いいと思います。魔王城の島は冬が厳しいので室内でできる産業も用意していきたいですね」

『アーヴェントルクは人員派遣に関しては少し手心を頂きたい。

 その代わり鉄鋼やその他の金属などについては優先して回させて頂こう』

『シュトルムスルフトも同様ですね。石油の採掘は軌道に乗って参りましたので多少無理を言われても聞けると思います』


 事前に各国の調査員からの報告を受けて検討を進めていたのだろう。どの国も打てば響くような返事が返ってくる。


「プラーミァはどうなさいますか?」

『ヒンメルヴェルエクトの第二陣出発の時に人材と資源を送ろう。

 気候や温度差を考えると秋から冬は少しキツいかもしれんが』

「では夏にも船を出しますか? 春から夏の農業には人手がいくらあっても足りませんから。後は居住区の整備とかにも」

『解った。その方向で調整を進めよう』

「お願いします」

『アルケディウスはどうなさるのですか? 先ほどの計画には名前がありませんでしたが?』

「アルケディウスにはビエイリークという造船に長けた港町があります。

 先ほどの移民計画は機帆船を利用する国のもので、アルケディウスは独自に船を出し物資や人員を、確保出来次第送る様にしたいと考えています。

 時期的には第一陣と同じ春から開始して秋までに二千人の人員を予定。

 選定も開始しました」

『そういうことなら、第一陣は約五千人。

 十分な人数ですね。自国の元王がいるのであれば騒ぎも起こりにくいでしょう』

「最終的には、神の子ども約十万人とそれを補助する者二万人前後の居住を見込み、図書館を中心にした学業、研究を主とした新しい国、学園都市のような形で独立させられればと思っています」

「三人の指導者がいるので、集落を三つに分けることも考えています。

 精霊国時代も実際にそのような感じであったようです。魔王城に、島の廃墟となった集落に繋がる転移門がありました故」

『皇王陛下。

 その廃墟となった町と王城の位置関係など詳しくお知らせ頂けますか?

 こちらに届いた情報と照らし合わせて検討します。

 できるなら、海に近い町の方がフリュッスカイトの力量を発揮できるでしょう』

『我が国にもぜひ。農業国の力をお見せしたい。

 辺境でも広い耕地があると良い』

「解りました」

『王城のある王都をアルケディウスに譲ることにならないか?』

『転移陣での行き来が可能であるのなら、そこまで距離の差は問題ではないでしょう。

 集落の整備が整うまで、王族は王城に住まい各町に通って指示を与えるという方法も可能ではないかと』


 だんだん、話が具体的になるに従い、王様達の目の色も真剣さを増してくる。 


『より詳しい情報は三国以外にも共有を願おう。

 島の資源や神の国の知識を利用した統治を、初期負担が大きい三国が行うのは仕方がないが、他の国も支援を行う以上、投資に見合う見返りは欲しい。

 かの島には鉱山などは無いのか?』

「『神』より地図は頂きましたが、具体的にどこに何があるかなどは実際に入植し、調査してみないと解らないと思っております。

 初期は各国の支援に頼らないと、統治ができませんが落ち着いたら頂いた支援に合わせた形で島の資源、産業を各国に還元していきたいですね」


 実はアーヴェントルクを脅かす埋蔵量を誇るカレドナイトの鉱山があるけど、今回の調査では伝えていない。転移門も封印中。下手に知られると魔王城の財宝と共に利権問題で血の雨が降りかねない。


『頼む。ああ、アーヴェントルクももう少し後継者がしっかりしておれば、新天地に夢を見に行けるのだがな』

『父上、それは嫌味ですか?』

『それ以外に聞こえたか?』


 くすくすっと、忍び笑いが聞こえる。

 本人達には別の思いがあるのだろうけれど、なんだか微笑ましい。


『マリカ様の指示がありましたから、各国とも食料の備蓄にはかなり余裕があります。

 精霊に見放されていた我が国でさえ、比較的肥沃であった北だけでなく、南でも農業が可能になり小麦、大麦の栽培が可能になりました。

 不老不死が無くなり、食事が必須となった為、必要量は倍増していますが『精霊神』様の復活や肥料の改良、農業技術の進歩により収量も増大していますから、ぜいたくを言わなければ飢えに苦しむ者は出ないのではないでしょうか?』

「各国の食料を扱う商会は厳選していると思いますが、食料流通を寡占して私腹を肥やそうという領主、商人が出ないように監視は厳重にお願いします」

『無論だ。民に食事を摂らせることによる経済効果は、ここ数年で明らかな結果として現れている。どの国も最重要課題としている筈だ』

『神々と精霊の恩寵で、不老不死が無くなった今も、餓死や枯死は滅多な事では訪れないようですが、食を全く採らない者と、しっかり食事を採る者の能力差は歴然とした結果と数値が出ております。

 ご安心を。民に必要な食を与えることは元より国王として絶対の義務ですから』


『新しい食』の始まりから約五年。

 世界は大きく変わった。

 当初は七国の国交も最小限であったのに、今はこうしてオンライン会議で積極的に意見を交わし合うまでになっている。

 食と情報。

 この二つの力の大きさを、改めて私は実感していた。

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