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第四十七話 貴方の罰は――


「――護衛義務契約の破棄、および不履行。

 目に余るほどの犯罪行為の数々」


なんてことないただの街道。


肌が凍るほどの寒さ。


一面を染める銀世界。


場違いなほどのただの裁き。


「その業は、あなた如きの強さで賄うにはあまりにも重いのです」


そのために、目の光を失って。


そのたみに人間性を失っていく。


「シャイネ。貴方に聖女の名のもとに罰を与えます」


わずかに強く、わずかに寂し気に。


「へぇ?で。臆病者の坊ちゃんはどんな罰を与えてくれるんだ?」


そんな言葉を意図してかせずか、シャイネは軽薄に言い放つ。


「…シャイネ・クロイツェフ。自害しなさい。これは命令です」


「はぁ。坊ちゃん。そろそろ”起きて”くれないすか?」


呆れるように、不本意だとでもいうようにルシを揺さぶる。


「被告人の判決に関しては決定したものであり俺に覆す権限…は」


そこではっとしたようにルシが目を覚ます。


いや、目を覚ましたのか?


目は輝きを取り戻し人間的な動作で周囲を見渡す。


「…俺…寝てた…のか?」


「あぁ、そうだよ。小生に自害を言い渡した」


ルシは取り乱しているようだった。


「おい、大丈夫か?」


キフェルが、遠慮がちにルシに声をかける。


「で?坊ちゃん」


それをあえて遮るようにシャイネが言う。


「わざわざ、小生を呼ぶってことはそれ相応の用事があるんだろ?」


「俺はお前を呼んでない」


ルシが、確認するようにそう呟く。


そして一人でうなずく。


「冗談だよ。教会本部にお前の捜索を頼まれたからな。

 魔力を追ってついてきた」


シャイネがどうでもいいことを説明するように言う。


「…やっぱ、指名手配中のお前すら使うって相当腐ってるな」


ルシが、首をすくめていう。


指名手配犯が捜索隊?


「指名手配…か」


ヴェーゼンが考え込むように言う。


「と、とりあえず。立ち話も何だからどっかの町にでも行こうぜ」


キフェルが、挙動不審に言う。


怪しい。例のごとく、何か隠してるのではないだろうか。


「……」


ルシは無言でうなずく。


シャイネに先頭を歩くように指す。


「坊ちゃん。それでは護衛として成り立たないのでは?」


「知らない。お前に背中を刺される可能性の方が高い」


その後ろをヴェーゼンとキフェルが歩く。


正直、何が何だかよくわかっていない。


「なぁ、キフェル。これどうなってるんだ?」


「しらねーよ。俺様も教会に関してはよく知らねぇんだ」


キフェルは首をすくめる。


「教会ってのは基本プロパガンダしか配らねぇからな」


そういって、カバンの底から一枚の紙を取り出す。


派手な色と見出しで書かれたポスターだ。


お世辞にも、あの聖教都市とやらには似つかわしくない。


「…そうか」


ヴェーゼンはそれを特段気に留める様子もなく歩き出す。


「あ、ちょ」


それに一拍遅れてキフェルも追いかける。


「…てゆーか。なんでルシあのシャスールと知り合いなんだよ」


キフェルが追い付いてきたのを確認して、


ヴェーゼンがキフェルに耳打ちする。


「まぁ、聖女だしな。めんどくさい戦力を押し付けられていたんだろう」


そういって、キフェルはルシとシャイネをちらりと見る。


言い争う様子は護衛と主というより、


仲のいい兄弟のようでもあった。


「結局どうするんだ?このまま背後から闇討ちするか?」


ヴェーゼンが真顔で恐ろしいことを言った。


片手にナイフを携えているから笑えない。


「それが最適な気がする」


キフェルも軽くうなずく。


「このまま泳がせて、下手にルシに取り入られると面倒だ」


キフェルも武器を構え先回りして罠を張る。


「ここで、しとめる」


キフェルは、いつの間にかヴェーゼンの横に立っていた。


相変わらず気配を全く感じさせない。


「じゃ、合わせろ」


ヴェーゼンはそう言うと、


十メートルほど先を歩くルシとシャイネに向かって、ナイフを投げる。


「…世界式への接続。攻撃威力の調節。対象攻撃の威力を500%に増加」


『こいつの魔法っていうのは、いわば無茶苦茶なバフ魔法よ』


クラシュピカは含み笑いをこぼして言っていた。


『単純な上乗せと違う。前提を書き換える魔法よ――』


――それは、魔法のように。


「ぶっとべ!」


キフェルのその言葉が合図となるように、ナイフが着弾する。


本来なら、威力減衰して大したダメージにもならない。


魔力強化されただけの素人の攻撃。


「ぐ…は!?」


二十メートル弱。


飛ぶというより転がるというような表現が正しい。


白い神官服を土色に染めながら。


「ちょ、坊ちゃん。これは、どういう?」


動揺を見せたのも一瞬だけ。


すぐに、狩人のような鋭い瞳へと変わる。


「…魔族か」


ショートソードに魔力が集まっている。


ついでに、殺意も肌を刺す。


「っ…?ッキフェル避けろ!」


「いわれなくてもっ」


倒れこむようにキフェルが避けた後をシャイネの刃が通る。


正確に首があった場所を狙っているから恐ろしい。


「物理演算を逆算。魔力流から攻撃予測地点を――」


キフェルが、走りながら詠唱?をする。


「…隙だらけ」


とはいえ、単調な移動では攻撃を回避することはできない。


詠唱に意識が持っていかれてるなら尚更。


「っ!って、ヴェーゼン。こいつ投げナイフ効いてねーぞ」


器用に回避しながらキフェルが叫ぶ。


「しら、ねーよ!」


投げたナイフを拾って、シャイネの腹を遠慮なく蹴り飛ばす。


「魔族!まずはお前からつぶす」


ピッ ピ―――


あ、こいつキフェルの罠踏んだな。


ビシャァ


いかにも体に悪そうな紫色の液体があたり一面を染める。


仲間ながら趣味が悪い(頭がいい)


「…魔族らしく、小賢しいじゃねぇか」


足取りがわずかにふらついている。



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