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第四十六話 まぁ、世界ってそんなもんだよ


「シャスール討伐かぁ」


ルシは、歩きながらつぶやく。


あれから、一晩泊まっていけと三人に言われたが丁重にお断りした。


そして、教会の総本山、聖教国に行くということで話をつけた。


まぁ…期限は一か月以内だが。


「ルシがいるしそんな、殺されたりは」


呆れ顔でキフェルが言う。


「…俺、これまでに百回ぐらい殺されかけてるんだけど」


「でもお前生きてるだろ?」


そう言われてルシが黙った。


やはり、夜の森というのは静かすぎる。


「…聖教国に行くには二週間かかる。魔法都市には寄れないな」


ヴェーゼンがはぐらかす。


「…え?マジ」


キフェルが反射的に言う。


よほど行きたかったのか歩くことさえ止めた。


「ま、先に聖教国ってのによってあとで、魔法都市によればいいんじゃない?」


ルシが気を取り直したように言った。


それに二人ともうなずく。


あの三人に歯向かうのは普通にコワイ。


「あ、そういえば聖教国ってなんだ?聖教都市と何が違うんだ」


「あ、それね。聖教国ってのは…」



聖教都市というのはいわば支部にすぎない。


聖教国こそがその源流にして総本山。



「ってわけ。教会のある場所を中心に発展したから聖教都市って呼ばれてるんだよ」


ルシが得意げに語る。


実際、このことを知っている人間も少ないのだろう。


「…で?なんで聖教国とやらにいるシャスールを討伐するんだ?」


キフェルがあくびを噛み殺したようにつぶやく。


「いやお前は分かってろよ」


ヴェーゼンは思わず突っ込んでしまう。


当事者すらわかっていないとは何事か。


「基本シャスールは世界各地に散っているんだよ」


「あのケフィアだかなんだかみたいなのは?」


となれば、昔遭遇したあれはどうなるのだろう。


少なくとも、一か所にとどまってる様子はなかった。


「あぁ、たぶん魔族狩りか、魔力持ち狩りの帰りなんじゃない?通報があればそこに行くって話だし。


そんな物騒なことが秘密裏に行われていたとは…秘密裏でもないのだろうけど。


ヴェーゼンは苦笑する。


「で、本題。

 聖教国には序列第一位シャイネ・クロイツェフっていう化け物がいるんだけど」

 

ルシは、苦虫をかみつぶしたような顔で言う。


「…俺のもと護衛だから実力は知ってる」


歯切れが悪い。心なしかルシの顔色も悪い。


「元護衛…なんで”元”?」


ヴェーゼンが首をかしげる。


「一回解雇されたんだよ。俺を放置して遊び歩いてたから」


苛立たし気にルシが言う。


「それ護衛の意味あるか?」


キフェルが首をひねる。


そばに居なければ護衛などできるはずがない。


「それがあるんだよ。アイツの護衛対象というだけ。

 それだけで馬鹿以外には襲われねぇんだよ」


――馬鹿は、俺が撃退できるし。


「雑魚の間違いじゃないか?」


「性格はともかくあいつの実力は正真正銘バケモノだ」


ルシが、げんなりしたように言う。


あのルシなら護衛なんかいないほうがいいに決まっているのに。


「…シャイネ・クロイツェフ?クロイツェフ…クロイツェフ…」


キフェルが物憂い気に呟く。


すくなくとも、ヴェーゼンには思い入れはない。


「つまり、俺たちはその序列一位の怪物の討伐を都合よく押し付けられたわけ」


いいつつ、ルシは渡された地図を広げる。


遠いというわけではないが近くもない。


そういう所に聖教国はあった。


「乗合馬車…こんな田舎じゃでてないだろうな」


歩きながらヴェーゼンはため息をつく。


「ま、気楽に歩いていこうぜ?」


気を取り直したようにキフェルは言う。


「…凍死なんてまっぴらだぞ」


足元を白く染める雪を見やり、ヴェーゼンが言う。


「さすがに、凍死はないでしょ。面倒ことの方が俺は嫌だよ」


「そうだな。小生もお前のこと心配していた」


ルシの背後から声がした。


気配なんて全くなかったのに。


「っ…!?」


ルシも目を見開く。


そして、条件反射的に振り返る。


「よう、坊ちゃん」


乱れた碧い髪に吊り上がった緑の目。


気崩された神官服とショートソードを携えた男。


「俺はお前のことなど呼んでいない。失せろ」


珍しく殺気だったルシが言う。


「そんな言うなよ坊ちゃん。教会のお偉方に言われて渋々ついてきただけだぜ?」


ひょうひょうとした態度で男は相対する。


威圧感や殺気は感じないものの妙に圧力がある。


「よく言う。シャスール如きが」


吐き捨てるようにルシは呟く。


「にゃはは。坊ちゃん。よく言うようになったじゃねぇか」


パチパチと二度ほど瞬きをしてから男はそう笑った。


「それは、五歳の時のことだろ?お前がいないから俺も絡まれるんだよ」


「そうか?確かにそうだった気がするな」


さして気にする様子もなく男は言う。


そして、息を一つ吐く。


「で?坊ちゃん。そこの魔法使いと魔族。どう説明するんだァ?」


にやりと、意地の悪い笑みを浮かべて男は言う。


その視線で二人はたじろぐ。


「……シャスール筆頭序列第一位シャイネ・クロイツェフ。貴方の主として私は命令します」


長い沈黙の末ルシが小さく。でも確かに言う。


いつもの砕けた口調でもない聖女としての威厳を纏わせて。


「護衛義務契約の破棄、および不履行。

 目に余るほどの犯罪行為の数々を教会聖女の名において審判します」


機械的だった。


人間味の欠片もないイメージする通りの聖女様。


「…それらの行為によって生まれた業はあなたの強さで賄うにはあまりにも重い」


「で?どうするんだ?坊ちゃん」


ルシの動きが分かりやすく一瞬止まる。


そして、やや機械ばった動きでシャイネを指す。


「シャイネあなたの罪状は――」

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