第四十五話 教えてキフェルせんせー
「…まず、世界っていうのは魔力がおられてできた式でできている。
ここまではいいな?」
ヴェーゼンはうなずく。
モシアにもそんなようなことを言われた気がする。
「で、生来魔力っていうのを人は持ってないんだよ。
だが、お前らみたいな生まれつき魔力を持ってるのもいる。
そう言うのがどこから魔力を得ているかわかるか?」
ルシはフルフルと首を横に振る。
「…そんなの分かるわけないじゃん」
「つまるところ、お前らの魔力は借り物で世界の式の一部を流用している。
だから、魔力持ちは別名「世界保持者」。
で、モシアが言ってたように魔力持ちを暗殺したりすると保持していた世界式が消滅する。
ヴェーゼン。お前みたいな莫大な魔力を持っていると特にな」
と、キフェルはつらつらと得意げに語りだした。
「で?結局どういうことだ?」
あまり理解しないままヴェーゼンは問う。
「つまり――」
「つまり、パズルみたいなものだ。魔力っていうのはいわばそのピースの一つ。
それをお前らは何枚か持っている。
んで、お前らが死ぬとそのピースはなくなってパズルは完成しないつーこと」
”星降り”が、説明をカットインする。
正直分かりやすい。
「おい、俺様の一番おいしいとこ持ってくなよ」
「悪い悪い。こいつら理解できてなさそうだったからさ」
クックックック
そう、含み笑いをする”星降り”。
「…で?結局俺にどうしてほしいんだ?」
ルシがいまいちわからなそうに言う。
「”セカイホジシャ”ってのもなんとなくわかったけど…」
そう言いつつ、ルシは頬杖をつき半目で”星降り”を眺める。
「あぁ、それね。あなたたち、私達に協力してくれないかしら」
クラシュピカが言う。
「「協力?」」
「えぇ、五芒星筆頭に当代の聖女。それに強大な魔力持ちとなれば教会に取り入るのも、
教会を退けるのも簡単じゃないかしら?」
スッと目を細めて言う。
それに、キフェルは呆れたように言う。
「それは買いかぶりすぎだぜ?
教会にはまだシャスールの隠し玉がいる」
「あの、最強魔族様が現代の教会如きに負けるのかしら?」
涼しい顔で皮肉(?)を言うクラシュピカ。
キフェルの頬は引き攣っている。
「あのな?俺様だって伊達に魔に属するんだぞ?シャスールの専門攻撃食らえば消し飛ぶわ」
若干切れたように怒鳴るキフェル。
クラシュピカは顔色一つ変えない。
「ねぇ、トレーネ。あなたなら教会のシャスールとやらに勝てるかしら?」
「さぁ?代償魔法を使えば勝てるんじゃない?」
ひどく投げやりの返答。
「ねぇ、”星降り”あなたなら教会を滅ぼせるかしら」
「条件によるが、滅ぼすだけなら簡単じゃないか?」
そうそうたるメンツに、ルシは震えた。
「それで?あなたたちはどうかしら」
微笑み。一見するとただの笑顔。
それでも、ルシは蛇のような獰猛な印象をぬぐえずにいた。
「教会?シャスール?聖騎士どまりはないわよね」
「……なんで、俺様が協力しなきゃいけないんだよ」
キフェルが、答える代わりに忌々し気に抗議する。
すると、クラシュピカ、その他一同は首を傾げ。
そして、楽しげに笑った。
「あら?気が付かなかったの?天下の詐欺師様も堕ちたわね」
「なにがいいたい?」
ゴクリと、ヴェーゼンが生唾を飲み込む。
クラシュピカはそれを気に留める様子もなく物憂い気に呟く。
「私があなたを始末するのに何秒かかるかしら」
誰も何も言わない。
「聖女様は十秒もあれば、魔力持ち。あなたは二十秒。詐欺師さんは五分という所ね」
「俺様を脅すってのか?血吸い蝙蝠」
キフェルが眉間にしわを寄せる。
脅されているのにまるで動揺もしていない。
「…全くその通り。で?どうするの?詐欺師君だけでも逃げる?従う」
ぺろりと、舌なめずりをするクラシュピカ。
「こいつ、俺様以上に悪魔してやがる…!」
キフェルは唇をかむ。
仲間か自らの命か。
あまりにも悪魔らしい。
「あら、誉め言葉として受け取っておくわ」
女王様のような気品を感じる。
「シュピ姉…いいね。面白い」
モシアは面白そうに笑った。
「邪教団ももちろん協力するよ」
クラシュピカは満足そうにうなずくと、すぐにヴェーゼン達に視線を戻した。
一瞬の沈黙、刺さる視線が痛い。
「結局、シャスールってのを処分すればいいのか?」
それに耐えかねヴェーゼンが尋ねる。
「あ、ちょ。俺様はまだやるとは――」
それをキフェルが必死に制止する。
きっとヤバいことなのだろう。
「えぇ、そうよ。話が早くて助かるわ。そこの詐欺師とは違って」
「――なぁ、何でキフェルは詐欺師って二つ名なんだ?」
違和感をぬぐうようにヴェーゼンは話に水を注す。
「あ、そう。俺もそれ気になった。キフェルは確かに詐欺師みたいなものだけど。
二つ名って普通もっとカッコいいのじゃない?」
ルシも身を乗り出す。
これは恐らく条件反射のようなものだ。
「そうね…結論から言えば――」
クラシュピカはキフェルに目をやり、クスリと笑う。
「この人にそんなカッコいい二つ名を付けられるほどの偉業がなかっただけよ」
――確かに、キフェルらしい
「おい、お前。ヴェーゼン。失礼なこと思っただろ。俺様に謝れ!」




