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四十四話 僕は魔法使いで――


「なんで、僕がそんなもの覚えなきゃいけないんだよ」


わずかな沈黙ののち、ヴェーゼンは吐き捨てる。


「…俺様の師匠の言いつけでな。この魔法は継承しなければいけないと」


「なぜだ?」


ヴェーゼンはキフェルの目を見据えて言う。


その師匠とやらにヴェーゼンは面識がない。


「…七英雄を封印し続けるため」


「はぁ?」


ルシが、声をあげて言う。


あまりにも面食らった態度にヴェーゼンはたじろぐ。


「ま、そこらへんは知らなくてもいい。とにかく、俺様も早く弟子を決めなきゃいけないっつーことだ」


投げやりにキフェルが言う。


しかし、ヴェーゼンにとってはそれが一番わかりやすい。


「ほら、貴方達も決めないといけないわよ」


クラシュピカが、ワインを片手に言う。


「そーだな。魔法都市に行って魔法適正ぐらいは見ておきたかったんだが…」


「そういえば、魔法都市って何なの?」


ルシが、二人の話に水を注す。


ヴェーゼンも椅子に座りつつうんうんとうなずく。


「あら、いってないの?魔法使いの隠れ里。私達の共犯者を」


「共犯者?」


意外なようにつぶやくクラシュピカ。


頭を抱えるキフェル。


「あぁ、そうだよ。我ら、悪だくみ連合の同盟国だ」


”星降り”が手を広げ高らかに言う。


「悪だくみ連合?」


ガチャ


「シュピカ…突然呼びつけて何の用?」


モシアの声だ。


それだけで、ヴェーゼンの背中には冷や汗が噴き出る。


「お、シュピ姉。しっかり、大将たち届いたでしょ?」


悪戯っぽい笑みを浮かべてトレーネが言う。


「扱いが雑じゃないかしら?」


それを意にも留めずクラシュピカは返す。


「で?ヴェーゼンだっけ。久しぶりだね」


「っ…?」


モシアが一歩踏み込んだかと思うと、ヴェーゼンの目の前に立っていた。


「――やっぱり、勧誘するべきだったな」


そう呟く。


「まぁ、二人とも積もる話はあるとおもうけれど。先に座ってくれるかしら?」


すっと、静かな殺気が場に満ちる。


肌を刺すピリピリとした気配。


「わかったよ。わかりましたシュピ姉」


トレーネは呆れたようにルシの隣に腰かける。


ルシはわずかに肩をはねさせる。


「…チッ」


モシアは舌打ちしつつ木製の椅子に腰かける。


「モシア」


クラシュピカが笑顔で言う。


目は全く笑っていない。


「はいはい」




「というわけで、乾杯」


「「乾杯」」


全員にグラスがいきわたったところで、”星降り”が掛け声をする。


もちろんヴェーゼンの飲み物は水だ。


「…で、僕はなぜ怪しい館で怪しい人外と怪しい宴会をしてるんだ?」


一息ついたところで、そう聞いてみる。


「これを見てわからないか?」


キフェルが首をかしげる。


目の前に置かれたオードブルをつまみながらキフェルが言う。


その馬鹿にしたような顔に嫌に腹が立つ。


「コレだけで分かったら預言者か何かだよ。なぁ、ルシ」


「むご…ふぇふえふぁふ?」


「何言ってるかちょっとわからない」


のどに詰まらせたらしく涙目のルシに水を手渡す。


「…お前が、こちらの人間になるから」


キフェルはにやりと笑みを浮かべ、他の三人と目くばせする。


パチン


乾いた指のなる音が響く。


それと同時に、ろうそくの炎が消え暗闇が出来上がる。


「は?」


古びた壁、そこにぼんやりと映る一枚の絵。


ぼんやりと青い空、剣を持った何人かの人間ということはわかった。


「…世界の神話はこんなキレイじゃない」


パッと、絵が切り替わる。


投影している場所が悪いのかやはりぼんやりとしか見えない。


「……魔法使いは危険なんだ」


赤い空…赤い地面…空を飛ぶ人…。


「特に、お前みたいなろくに教育を受けてないのは特にな」


キフェルが困ったように言う。


そちらを向くが、やはり暗すぎてキフェルの顔すら見えない。


「お前が町を歩く野犬だとすれば、俺様達は鋭い牙を持つ猟犬。そんなもんだ」


「え?じゃぁ、モシアが僕を殺そうとしてきたのも?」


「まぁ、そんなとこ。キフェルにはとめられけど」


モシアが肩をすくめるのも手を取るようにわかる。


「それを、命令したのは私よ」


クラシュピカが薄明りの絵のまえに立つ。


「あなたには素質がある。だから――私たちと一緒に悪だくみしてみない?」


口元だけの微笑み。


目元は暗く見えない。


「怪しい」


「怪しいな」


二人は、顔を見合わせてうなずきあう。


「ま、いいわ。灯りをつけて頂戴」


呆れたようなため息をクラシュピカがつく。


その瞬間、誰も手を触れてないのに蝋燭がひとりでにつく。


「まずは――」


「教会は嫌いか?」


”星降り”が会話に割り込む。


「”星降り”――」


「そうだよ。俺は教会なんて大っ嫌いだよ」


モシアがたしなめる。


しかし、それに被せるようにルシが叫ぶ。


グラスを豪快に倒し、机をたたく。


空気が凍り付く。


誰もが、ルシを見つめている。


その目はどこか優し気で、同類を見るような鋭さが確かにあった。


「……ゴメン。取り乱した」


ルシが力なくうつむく。


その、目は微かに震えていた。


「ま、聖女だもんな」


そう言って”星降り”はケタケタ笑う。


「俺たちはな、教会を打倒するための集団なんだよ」


その瞬間、ルシは息をのむ。


目は、輝いて口元が歪に吊り上がる。


「ただ、利害が一致しただけだよ」


今まで様子をうかがっていたトレーネがため息をつく。


「魔法都市の魔法使いは教会に迫害されている。

 邪教団は教会が邪魔。

 私たちは教会に狙われてるしね」


教会って色々なところで恨みを買っている。


立ち上る殺気からもそれが手に取るようにわかる。


「いいねぇ。異端の聖女に強力な魔法使い…世界保持者」


「なぁ、世界保持者ってなんだ?」


ヴェーゼンが”星降り”に聞く。


「あら。モシアが伝えたのではなかったかしら」


コテンと首をかしげるクラシュピカ。


あいにくながらその覚えはヴェーゼンにはない。


「聞いてない」


「あら、詐欺師。説明してあげなさい」


詐欺師――あぁ、キフェルのことか。


「詐欺師は流石にひどいだろ」


キフェルが、苦笑いする。


「あら、あなたにお似合いよ」


「そりゃどーも」


こちらももちろんのこと皮肉で返してくる。



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