表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/52

第四十三話 キフェルというナニカ


「悪友ってなんだ?”星降り”…でいいか?」


ヴェーゼンが腰を浮かせ、男に話しかける。


黒いフードをかぶっていて顔すらわからない。


「それは…そのうちわかる」


クラシュピカと話す時とは打って変わってぼそぼそと自信なさげに話す。


しかし、不思議な威圧感のようなものが漂っていて、


弱そうには見えなかった。


「それで?君は何者?」


わずかに覗く黒い髪と青い瞳。


それが、テーブルを挟んで真っすぐ二人を見据える。


「この子は、ヴェーゼンでそっちがルシよ」


クラシュピカが、ヴェーゼンとルシを指して言う。


「…なんで僕の名前知ってるんだよ」


「あら、名前を呼びあってるのは誰かしら」


頬に手を当てすっとぼける。


ヴェーゼンはため息をつき、


「僕はヴェーゼン」


そう開き直って名乗る。


「…こっちのルシは――」


「聖女。聖女か。当代の聖女…俺の顔に見覚えはないか?」


目の前にいた”星降り”の声が背後からした。


気がつけば、椅子に座るルシの顔をのぞき込み笑みを浮かべていた。


「…人間じゃないと思うけど。史実にも残らないような木端魔族は知らないね」


「ま、俺。そこのシュピと違って五芒星じゃないけどね」


ルシの興味なさげにそっぽを向く。


声色は穏やかだが、表情は邪悪そのものだ。


「…じゃぁ、早く祝杯を――」


どこからともなく取り出したワインが注がれたグラスを手に呟く。


「待ちなさい。”星降り”」


と、クラシュピカがそれを制す。


「まだ、二人。来てないわよ」


「え?二人って誰」


「…トレーネと教祖モシアくん」


ヴェーゼンが、驚いたように目を見開き、


勢いで椅子を倒す。


「モシア?あの邪教団の?」


――嘘だろ。


脂汗を流しつつ問う。


「そうだね。もしかして知り合い?」


ヴェーゼンは忌々し気にうなずく。


あんな、危険人物に会いたくない。


「キフェル~。キフェル起きろ」


――困ったときはキフェルだ。こいつなら何とかしてくれる。


「う…ん?って、ここどこだ?」


キフェルが慌てたようにあたりを見回す。


その勢いで椅子からずり落ちる。


キフェルがこんなに焦るなんて珍しい。


「落ち着けキフェル。モシアが、あの狂祖が来るらしい」


「何でお前こそ落ち着いてるんだよっ!」


椅子に座りなおしつつキフェルが言う。


確かに、この状況で落ち着けというのも筋違いだ。


「…って、シュピカに――誰だテメェ?」


”星降り”を指してキフェルが言う。


「おぉ、これは大将殿。俺は”星降り”にして%6&”%”!*$です」


「なんて?」


「俺の名前。異国語だから」


哀し気に”星降り”は笑う。


「って、それよりキフェル。やっぱ知り合いなのか?」


トレーネといい、キフェルは五芒星とやらと顔見知りだ。


そのことをヴェーゼンとルシには隠しているようだが…。


「い、や。その」


キフェルはうつむき口籠る。


「……俺様は――」


長い沈黙の末、途切れ途切れにそう呟く。


「俺様は――キフェル。悪魔族元族長にして五芒星筆頭詐欺師キフェルとは俺様のことだ」


なぜだろう。


すごそうな称号なのに詐欺師という二つ名で全くかっこよく感じない。


「いーの?キフェ君。この子たちには隠してたんでしょ?」


「もう潮時だ。面白そうな奴らだったんだが」


哀しそうにキフェルは微笑む。


「魔族の俺様と居ると怪しまれる。こいつは嘘が苦手だからな」


そう言ってルシを指す。


「そもそも!」


ルシが苛立ったようにテーブルをたたく。


「悪魔ってなんだよ。俺も知らねぇよ」


教会の上層部だったルシも知らないとなると相当だ。


「そりゃそーだ。俺様含め三人しかいない欠陥種族だからな」


「「三人⁉」」


ルシとヴェーゼンが口をあんぐりと開いて固まる。


「説明すると長くなるが。とにかく俺様は製作コストが高いんだ。性能は高いんだがな」


「製作コストって?まさか人造魔族とかいわないよ――」


「そうだぞ」


キフェルは真顔だ。


少なくとも嘘はついていないと思う。


「それと、お前らに大切なことを伝えておく」


キフェルは、顔に影を落とし悲しげにつぶやく。


「俺様はこの旅をやめる」


一瞬、思考が飛んだように思えた。


もしかしたら本当に時間が飛んだのかもしれない。


もはや、言葉も出ない。


「え?そ…れは。どういうこと?」


ルシが、よくわからないというように尋ねる。


と、


「簡単なことじゃない」


クラシュピカが話に水を注す。


「おい。今は俺様とこいつらが話して――!」


「魔族は目立つ。魔族というだけでその仲間は罪人なの」


――キフェルみたいな忘却者は特に


その意味が、よく分からない。


「いや、でも。俺、聖女だし」


「忘れかけてたけど僕も魔力持ちだ」


必死に、二人は弁明する。


椅子から腰を浮かせ、目をしきりに泳がせながら。


「…お前らはいいよな。ルシはつかまってもそれだけだし。

 ヴェーゼンだって人間として生きられる」


心の底からうらやむように、呪うように。


「だから、俺様はここまで。まさか、五芒星二人と会うなんて思わなかったが」


キフェルは椅子に座りなおし、


「よく聞け。そして覚えろ。俺様達五芒星は代償魔法を主に使う。

 字面通り、代償を捧げ魔法を使う奴だな」


キフェルは、ルシとヴェーゼンの返答を聞くことなく続ける。


「トレーネは善悪の曖昧化。クラシュピカは理性の崩壊。俺様は記憶が抜けていく」


「なんで――!」


――なんでそんな魔法使うんだよ


「キフェル」


上唇をかみしめる。


諦めたようなその表情が、


――僕はとても、不愉快だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ