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第三十五話 脱出への道しるべ


「……聖騎士は疲れている」


ヴェーゼンは開口一番そう言う。


すると、キフェルが首をかしげる。


「疲れてたらどうにかなんのか?」


ヴェーゼンはうなずく。


「僕が通るとき名前や所属を聞かれなかった」


それに、キフェルが顔をあげる。


「……なら顔と服さえ変えればいいと」


「そう」


ヴェーゼンがそう言うと、キフェルは困ったように言う。


「けど、替えの服なんてないぞ?」


確かに、キフェルの白いローブはかなり目立つ。


汚れてはいるが…。


「俺も、これ以外ないよ」


ちりじりになりかけている服を見て言う。


それ以外にないのはかなりの問題だと思う。


「まぁ、教会に行けばこれと同じ服が七十着ぐらいある」


桁一個間違えてないか?


ヴェーゼンはそう思った。


恐らくキフェルもそう思ったことだろう。


「俺様だって宿屋に行けばあと五着はあるからな」


――それは誇張じゃないか?


ヴェーゼンはため息をつきつつ、キフェルに外套を渡す。


「ちょっと、俺の分は?」


「私の分は?」


そういえばウルティオ―も、ルシも必要だったな。


「ルシは…まぁ、いつもの逃げ癖で頑張れ」


ルシはポカーンとした後、


「え、ひどくない?」


それを華麗にスルーしヴェーゼンはウルティオ―に


「たぶんお前は閉じ込めた記録事態抹消されてるから大丈夫」


ウルティオ―は何か言おうと口を開きかけたが、


下を向いて黙る。


「なぁ、ヴェーゼン。さすがにひどくないか?」


キフェルは少しだけ憐れむように二人を見る。


「そうか?」


なんでもないように言うヴェーゼンにキフェルは一抹の不安を覚える。


「ま、ともかく脱出作戦開始だ!」


「「お、お~?」」


なんとも締まりのない掛け声とともにそれは始まる。





「スミマセン」


コンコン


シャッターをたたくと眠たそうな、聖騎士が出てくる。


仮眠をとったのか少しだけ元気そうだった。


「どうした?」


「…エレベーターが落下していたので報告に」


「え?」


それだけ言うと聖騎士は慌てたように、


エレベーターのほうに走っていく。


キフェル達には隠れるように言っておいたし…。


まぁ、大丈夫だろう。


ガシャン  バタン


「……んだ…ま…え…⁉」


もみ合う音が聞こえる。


ヴェーゼンはとても不安になった。


あのメンバーが無事に隠れ続けることなどできるのか。


ガチャ


「ふ~。なかなかに強かったね」


ルシがそうこぼしながら出てきた。


白い服が若干赤い気がする。


「まぁ、とりあえずでようぜ」


続けてキフェルとウルティオ―が出てくる。


少しだけ疲れているようだった。


「あぁ、そうだな」


ヴェーゼンもそれだけ言って同意しておく。


「…俺様の記憶だとここをまっすぐ側溝に出るぜ」


「じゃ、ライターつけるね」


準備のいいルシがライターを取り出す。


カチッ カチッ


「あ、あれ?オイル切れた?」


ルシが戸惑ったように小さなライターを振る。


ずっと灯りにしていたから確かに、


そろそろ切れてもおかしくない。


「どうすんだ?」


キフェルが戸惑うように言う。


依然として通路はほぼ暗闇のようなものだ。


牢屋からのランタンで僅かに石畳は見える。


「…壁伝いに行けばいい」


そう言ってヴェーゼンは一人進む。


障害物などはないと思う。


「うわ、ちょっと待てよ」


ルシが追いかける。


それにつられるように二人も壁を伝う。


カツ…カツ


しばらく、靴の音だけが反響する。


「…お?足場あったぞ」


石の足場をヴェーゼンが軽くつかむ。


その瞬間、粉のようになって崩れ去る。


やはり風化していたようだ。


「待って。来るときって飛び降りたよな」


ヴェーゼンは無言でうなずく。


恐らく、暗闇で彼に伝わってはいないが。


「どうすんだよ」


ルシは茫然としたように言った。


「は?そんなの壁を登ればいいだろ」


それに食い気味にキフェルは言う。


「は?さすがに壁は登れないでしょ」


ウルティオ―も不服そうに言う。


ガコッ


その数秒後突如光が差し込む。


どうやら壁を登ったキフェルが側溝を開けたようだ。


「…俺も大概だけどさ。キフェル、常識って知ってるか?」


ルシが呆れたように言う。


それにキフェルはため息をついて、


「失礼だな。そこのヴェーゼンと一緒にしないでくれ」


「怒っていいか?」


そういいつつ、裏路地に出る。


言っても数メートル。


誰かの助けがあれば登れなくもない。


「ちょ、助けて」


「ほらよ」


そう言ってキフェルがルシを引き上げる。


身体能力は高くないのかもしれない。


「ほら、あとは私」


ウルティオ―が声を大にして主張した。


「…じゃ、ヴェーゼン、キフェル。先に行こうか」


ルシが無視して二人に言う。


こくりとヴェーゼンはうなずく。


「え?ちょ」


キフェルは戸惑った。


「は?置いてくの?」


ウルティオ―は、キフェルを見上げて言う。


「ねぇ、助けてよ。私ずっとつかまってたんだよ?」


悲痛な叫びにキフェルは眉を顰める。


「なぁ、ルシ。これどうすんだ?」


「…まぁ、他の人が助けても面倒だしね」


ルシはそう言ってウルティオ―に手を伸ばした。


それを見て、とてもうれしそうに飛びつく。


「…ありがとう。こういうのはとても癪だけど」


そう言ってウルティオ―はゆっくり上がる。


朝日が差し込む裏路地に。


「あっつ!って、なにこれ」


日の光に触れた瞬間その箇所が薄くなっていく。


「…やっぱりそうか」


ルシが小さくつぶやく。


「どうした?」


キフェルがそう小さく問いかけると、


「どうもしてない」


そう言って笑う。


笑顔というよりは笑みというか。


にやりと言ったようなルシには似合わない笑顔だった。


「ねぇ、熱い。誰か。誰か助けて!」


叫び声だけが鼓膜を揺らす。

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