表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/52

第三十四話 真実は嘆きを想起する


「それってなんだよ」


ヴェーゼンはためらうことなく口を開く。


するとルシは少しだけもったいぶるように言う。


「ここで言っても意味ないよ」


「だったらどうやって出るんだ?」


それにルシはすこし口籠った後、


ウルティオーを指す。


「ね、お前の力を使えば出られるよな?」


ルシは、誇るように言う。


「力?」


ウルティオ―は首を傾げた後、困惑しつつも地面を軽くなでる。


「これ…のことかな」


ガラララララ


その瞬間、すさまじい音とともに何かが組みあがっていく。


地の底から、あるいは過去の果てから。


「死霊術師ってことか」


ヴェーゼンは呟く。


それは――すさまじい数の白い骨だった。


それこそ、ここでなくなったすべての人の遺骨であるような。


「そーだね。私は死霊術師だけどこれが何になるの?」


確かに、所詮は人骨を組みなおせるだけの力。


脱出の役に立つとは思えないが…。


「いやさ、それを足場にして登ればいいじゃん」


「「え?」」


キフェルとウルティオーが同時に声を出す。


流石に先人たちを足蹴にする発想はなかったのだろう。


「ほら、足の骨とか梯子に適してるんじゃない?」


なんでもないようにルシは言うが、


――正直怖い。


「お前、意外と怖いな」


キフェルがドン引きする。


対するルシは――


「え?そんなおかしい?」


イマイチ実感がないように言っていた。


正直ああいうのが一番危ない。


「ともかく、はやく俺は日の光が浴びたい」


そういって、あくびをしてみる。


恐らくもう深夜、ひょっとしたら早朝かもしれない。


「というわけで、ライン。後は頼んだ」


――出来たら起こしてくれ


そう言ってルシはふて寝した。


なぜふて寝したのかはわからない。


「聖女様も飽きっぽいね」


そういいつつ、ウルティオーは骨組みをくみ上げていく。


実際、骨である。


「しょうがない。やりますか」


ふっと息を吐くと、地面をなで、何かを呟く。


「――地に眠る死者の魂よ。今一度力を取り戻し世に顕現せよ。《悪霊召喚》」


地表に、数十、数百の骨が湧き出てくる。


空虚な眼窩には暗闇が詰まっている。


「あ、悪霊なんだ」


隣でキフェルが呟く声が聞こえた。


ヴェーゼンがちらりと見ると気まずそうに眼をそらした。


「――愚かなアンデッドどもよ。永遠にわたり罪におびえるものよ。我に服従せよ」


そう、ウルティオーが唱えた瞬間たくさんの骨が一気に崩れる。


そう、まるで最初からそうであったかのように。


「おぉ!」


足元まで転がってきた頭を拾い上げると目が合った。


となりで、キフェルが変質者を見るような目でこちらを見ていた。


「むぐぅ?…むにゃ」


コツン


気持ちよさそうに寝るルシの顔に、


骸骨の手が落下。


「いったぁ、だれが俺の顔を――」


ルシが止まり、骨の音だけが響き渡る。


長きの沈黙の後ルシが呟く。


「…軽いホラーじゃね?」


ヴェーゼンとキフェルは激しく同意を示す。


暗闇に骨はホラー以外にならない。


それは流石に周知の事実だった。




「よし!できたよ」


あれから数分、満足の言う梯子を作れたらしい。


鼻息荒くウルティオ―が言いだす。


「…ねぇ、おまえ。梯子ってみたことあるか?」


「…うーん。一回ぐらいかなぁ」


それならこの出来もうなずける。


足場は外れかかり、強度は不安がある。


「これでも、頑張って上までつなげたんだから感謝して!」


確かに、数メートルそこらなら気にも留めない。


しかし、今回は数百メートルはありそうだった。


「とりあえず、誰から登る?」


シーン


怪我なんて誰もしたくないよな。


ヴェーゼンはそう言いつつ、骨のはしごに足をかける。


骨が不気味にカタカタ言ってるのが少し怖い。


しかし、意外にも頑丈だ。


「おーい、大丈夫か?」


百メートルを上ったあたりでルシの声が聞こえた。


出来ればもうちょっと早い段階で言ってほしかった。


「……」


ヴェーゼンは何も言わずに梯子を上る。


たまに見えるほのかな青い光が不気味だった。


「よいしょっと」


そうこうするうちに、地下二階の牢獄までやってきた。


ガコッとタイルをあげると死のにおいが充満していた。


「ここにつながってたんだな」


そう呟くと、少しだけ昔を思い出した。


「おーい、こっちは登り切ったぞー!」


そう叫ぶと、わずかに鎖が擦れる音がする。


鉄の足音がする。


でも構わず叫ぶ。


「…わ…た」


どうやらわかってくれたみたいだ。


骨の梯子がわずかに揺れていることからも登りだしたのだろう。


「少年兵。聖女ルシは無事に収容できたか?」


先ほどの聖騎士が走ってきた。


地表が近いということはそれだけ警備が厳重ということだ。


「いや、それなんだが。そこの牢に入れる直前に抵抗したんだけど」


そして、ヴェーゼンは穴の中をのぞき込む。


ほぼ暗闇だ。


「この中に落ちていき、途方に暮れていた。規定通りならエレベーターがあるのだが」


そして、扉を開かずにいるエレベーターを軽く指す。


「僕には使い方が分からなくてな」


すると聖騎士は少しだけ困ったようにうつむいた後、


「まぁ、とりあえずこの穴はふさぐ。聖女様は収容場所の規定はなかったから気にしなくていい」


少年兵への配慮だろうか。


それとも手柄を横取りしようという野心だろうか。


だが、ヴェーゼンにはありがたい。


「なら、少しだけ、ここでエレベーターをいじってもいいか?」


「あー。まぁ、少しなら構わない」


聖騎士はそういうと、ふらついた足取りで扉の外へ歩き出す。


「危なかったね」


そのタイミングでルシが顔を出す。


埋まられたタイルを窮屈そうに外しながら。


「とうっ」


と、子供っぽく着地して見せる。


「………ねぇ、ヴェーゼン」


少しあたりを見回したルシ。


ルシはヴェーゼンを見つめてこういう、


「二人が出る前に地上に出ない?」


それは悪魔のようなお願いだった。


ルシは顔をしかめ、牢屋を見回す。


「…俺はここが好きじゃないんだ」


そう少しだけ悲しそうに言ってから、


「それで?」


ヴェーゼンは少し間をおいていう。


「それで?どうやった警備を掻い潜るんだ?僕だけなら可能だがルシは聖女だ」


その言葉にルシは唇をかみしめる。


「まぁ、強行突破…かな」


一番ダメな奴を真っ先に言う。


「まぁ、協力してよ」


「また、俺様を置いていこうとしたのか?」


ルシの背後からキフェルがあらわれる。


結局キフェルが先に上ることになったみたいだ。


「………キフェル」


「部外者が、俺様の相棒を連れて行くなよ」


キフェルがそう切羽ず待ったように言う。


しかし、ヴェーゼンはキフェルの相棒になった覚えはない。


「まぁ、かってにやれ」


そう言いつつ、穴をのぞき込む。


いま、もう一人の仲間(?)が昇ってきている。


「俺は部外者じゃない。一緒に旅するってやつにひどいな」


「…え?」


キフェルが驚いたようにヴェーゼンを見る。


ルシも、伝えてなかったのかよというように、


呆れの雑じった目を向ける。


「キフェルと会ったのさっきなんだぞ」


ヴェーゼンはため息をつく。


あの瞬間で伝えられるのは超人にほかならない。


「ちょっと?私はどうなるのよ」


ウルティオーが昇ってくる。


その瞬間骨の梯子は崩れる。


「うわ、すご」


ルシは目を輝かせて穴の底を除く。


そこからは骨の転がる音がした。


「で?どうするの?」


そんなルシを差し置きウルティオ―は、


作戦会議を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ