幕間 君はきっと――
「それで?お前は何か知らないのか?」
俺様は少女に問いかける。
この空虚な場所に出口があるようには思えない。
「…エレベーターが一つあったと思う」
続けて、
「キフェルも、そこから落ちてきたから」
えれべーたー?か、
聞いたことのない名前だな。
「だったら、そこに行けばいいじゃねぇか」
「いけないの!」
食い気味だった。
まるでそれが当たり前であるように。
諦めて、それに違和感も抱かないような。
「エレベーターは地下二階からしか呼び出せない」
「俺様はそもそもえれべーたーってものが分からないんだが」
俺様は矢継ぎ早に話す少女に呆れた。
しかし、少女は俺様の言葉を気にする様子もなく、
「騎士が…アナタみたいな人を投げ出すとき以外あれは動かないの」
そう切羽づまったように言った。
「じゃぁどうすんだよ」
俺様が聞き返す。
このままじゃ堂々巡りだ。
「…確か、エレベーターの横に縄梯子があった…はず」
少女は、目を泳がせながら小さくつぶやいた。
尻すぼみになっていく言葉に不安を覚えつつも、
それなら脱出できそうだ。
「それを先に言えよ」
「もう…ずいぶん前の記憶だから…確証はないの」
困ったように少女は言う。
それでも、訳の分からない装置よりはましだと、
その時の俺様には思えた。
「それで?その縄梯子ってのはどこにあるんだ?」
「…こっち。ついてきて」
そう言って、少女はほぼ真っ暗な空間を歩き出した。
一寸先も見えない闇とはこれのことか。
妙に腑に落ちたのをよく覚えている。
「これ!」
「はァ?」
自信満々に縄の後を指す少女に俺様は戸惑いを隠せない。
だって、そこには縄梯子なんてなかったから。
「…ずいぶん前にね。エレベーターができた時に切られたんだよ」
だったら何で俺様を案内したんだよ。
そう、叫びたくなるのをこらえて縄の後を見つめる。
よく見ると、地面には縄が落ちていた。
「…この上には穴が開いている。キフェルならこれを登れるんじゃない?」
試すように、面白がるように。
少女は言った。
「不可能とは言わねぇがよ」
俺様はそう吐き捨てる。
”力”を使えばあるいは登れるのかもしれない。
しかし、今のキフェルに到底できるとは思えなかった。
「…それとも?次のエレベーターまで待つ?次は何百年後かなぁ」
楽しそうに少女は言う。
やっぱり、本当はこいつは脱出なんて。
「なぁ、お前いつから――」
ガガガ――ドーン
不意に衝撃のようなものが空気を揺らす。
そして、光が。
しばらくぶりの光が俺様の目を焼く。
それは、落ちてきた箱型の何かだった。
「…エレベーターが、落ちた?」
少女は膝から崩れ落ちる。
まるでそれが、どうしようもない現実を示すかのように。
「どうして?キフェルが来てからまだ数時間もたってないのに」
そこまで来て悟った。
これは…中にヴェーゼンの奴がいるのでは?




