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極悪令嬢ルミナ・ヴィクトリアは許さない。  作者: 二代目菊池寛


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販売詐欺に御用心!極悪令嬢は悪を殴る。{前編}

真夜中のルナジェント王国、1台の馬車が我が屋敷に向かって駆け出していた。ヴィクトリア家の翡翠色の馬車、車内にはヴィクトリア家令嬢のルミナ・ヴィクトリアと向かいには側近メイドのアリッサ・レストの2人が座っていた。


ルミナは今日、何時もながらに父がまたもや他家からの見合いの帰りなのである。


「………ふぅ。」


ルミナは退屈そうな表情をし、馬車の窓の外を見つめながら、一息だけ吹く、退屈そうな主の姿を見て苦笑いするアリッサはルミナに話しかける。


「た、退屈な、お顔してますね、お嬢様。」


向かい側に座るアリッサが、恐る恐る声をかけた。


「ええ、全くよ。如何にもつまらなそうな態度と愛想笑いだったわ。お父様ったら、またしても『家柄が良い』だの『資産が安定している』だのと、中身のない話ばかり並べ立てて。……もう少しマシな相手を選んでくれてもいいのに。」


「そ、それは……旦那様もお嬢様の将来を案じて……。」


「案じるなら、少なくとも会話が成立する相手を選んでほしいものですわ。」


ルミナは扇子を軽く開き、口元を隠した。翡翠色の瞳が、窓の外の闇をゆっくりと追う。

その時だった。


「…止めなさい。」


ルミナは何かに気付いたのか、御者に停める様に命じ、馬車を停車させる。


「如何したのですかお嬢様?突然と馬車を停めて。」


「__見なさい、あれを。」


ルミナは窓から身を乗り出さず、ただ視線だけで状況を捉えていた。荷馬車は2台。片方は木箱が積まれ、もう片方は布で覆われた荷物がびっしりと並んでいる。男達は手慣れた様子で箱を運び、建物の裏口へと消えていく。建物は一見、普通の倉庫に見えるが、窓がほとんど塞がれ、表通りからは中の様子がほとんど窺えない。


共に覗き込んでるアリッサは、一体彼らが何をやってるのか、ルミナに聞き出す。


「何でしょうか?あれ。」


「恐らく、商品の仕入れでしょうね。」


「仕入れ?」


アリッサの声に、ルミナは小さく頷いた。


「ですがお嬢様、この辺りに新たな商会が開店する情報は何も聞かされていませんよ?」


「ええ。ただし、正当な店舗だったらの話だけれどね。」


彼女は扇子を閉じ、窓枠に指を添えたまま、動かない。月光が倉庫の壁を淡く照らす中、男たちは手際よく木箱を運び続けている。布で覆われたもう一台の荷馬車からは、時折、金属が擦れるような鈍い音が漏れていた。


「窓が塞がれている。表通りからでは中が見えない。この時間帯に、しかも人目を避けた路地。正規の商会がやる仕入れではないわ。」


「では……密輸、でしょうか?」


ルミナの視線が、倉庫の裏口に立てかけられた小さな看板に止まった。夜闇に沈んでいて、普通なら見過ごす。だが、翡翠色の瞳はそれを逃さなかった。


「……アリッサ、明日の予定は確か、茶会があったわよね?急遽悪いのだけれど、明日の予定、キャンセルよ。」


「えっ、じゃあお嬢様、また…。」


「どうやらまた。退屈凌ぎとして私が動かなければならないようですわね。」


男達は出入り口付近に大きな立て看板を設置させる、看板には商会の名前と宣伝のキャッチコピーが書かれていた。


『用品雑貨ならヴェルナー商会!

色んな物が揃ってもう安心!』と。


「__ヴェルナー商会、ふぅ、出発なさい。」


ルミナは商会の名前を小さく呟くと、用を終えたのか、停車した馬車を出発させ屋敷へと去って行った。



*



翌日。

ルナジェント王国、商業街区域にて堂々とヴィクトリア家の馬車が急ぎが滑走し、ある建物の目前に停車した。


アリッサが扉を開き、ルミナが静かに礼儀正しく降りて来る。彼女は建物の上を少し見上げ看板の商会の文字を見上げる、看板には『フォルクス商会』と書かれていた。


ルミナはアリッサと共にそのまま堂々と商会の中へと来店すると、店内にいる商人達は、極悪令嬢であるルミナの姿を見て驚きを隠せなかった。


商会の入口で、店員の1人が慌てて駆け寄ってきた。若い男で、制服の襟元が少し乱れている。ルミナの翡翠色の髪と、ヴィクトリア家の紋章が入った扇子を見た瞬間、顔が一気に青ざめた。


「ひっ……ヴィ、ヴィクトリア家の……!?い、いらっしゃいませ!本日はどのようなご用件で……!」


「何を怯えてるのかは把握してるけれど、レイナは居るかしら?彼女に会いに来たのだけれど?」


「えっ?レ、レイナお嬢さんですか!?お、お嬢さんは今、仕事の書類整理の最中で__」


「一体何事なの?」


すると店員と同じ従業員服姿の長い黒髪の女が、階段で2階から降りて来て、ルミナを呼び捨てで話し掛けて来た。


「あら?誰かと思ったら、ヴィクトリアの極悪令嬢ことルミナ・ヴィクトリアじゃないかしら?相変わらずの態度の悪さね。」


「ご機嫌ようレイナ、そう言う貴女こそ、相も変わらずの偉そうな態度ですわね。」


ルミナは扇子を軽く開き、口元を隠したまま微笑んだ。レイナは腕を組み、店の中央に立つルミナをじろじろと値踏みするように見下ろす。黒髪は肩まで伸び、商人らしい実用的な髪留めにまとめられていた。目は鋭く、決して媚びない。


「偉そう?これは事実を述べただけよ。貴女がヴィクトリア家の極悪令嬢であることは、王都中が知っていることだもの。で、何の用?まさか私を『視察』しに来たわけじゃないでしょうね。」


「視察、と言えなくもないけれど。正確には、貴女とお話を伺いに来たのよ。」


「へぇ、それは奇遇ね、実を言うと今日の昼に貴女の屋敷に尋ねる予定だったんだけど、貴女が来たのなら好都合ね、来なさい、話は執務室で続けましょう。」


レイナはルミナとアリッサの2人を2階に上げ、執務室へと案内してから、扉が静かに閉まった。


レイナは机の向こうに腰を下ろし、腕を組んだままルミナを見た。部屋は質素で、壁には商品の在庫表と取引相手の一覧が貼られている。窓からは商業街の喧騒が微かに聞こえてきた。


レイナ・フォルクス。

エリーゼ・クラリスと同じく、ルミナの幼馴染で幼少の頃からの理解者でもある。

彼女は商業貴族『フォルクス家』が令嬢であると同時に『フォルクス商会』の総務部長、商会の従業員達はレイナの事を『お嬢さん』と呼び慕っている。


「それで、話とは一体何かしら?」


客用のソファー並び座るルミナとアリッサ、ルミナはレイナの話の内容を聞き求める。


「今から内容を話すわ。あれは先週の事よ__」


事の始まりは中級貴族『キハーダ家』の屋敷に3人の男が訪ねて来た。背広を着た礼儀正しい眼鏡の男とその連れらしき傭兵の男ら2人を引き連れてだ。


来訪の内容は、新規の商会の挨拶と商品の無料配布だとか。通常なら使用人を通して当主か夫人に会わせる流れだが、不味いことに対応した人物が前当主の奥方、キハーダ当主の母親だそう。


「最初は単なる商会と無料配布された商品の説明で話は進めたわ、キハーダ家の前当主夫人――今の当主の母親は、礼儀正しい眼鏡の男の言葉にすっかり気を良くして、そのまま応接室で話を聞いてしまったらしいの。」


レイナは机の上の書類を1枚めくりながら、淡々と続けた。


「男の名はヴェルナー。『ヴェルナー商会』の代表を名乗っていた。商品は生活雑貨、調理器具、布地、薬草類、食品……一見すると普通の品揃え。無料で渡された試供品も、見た目は悪くなかったそうよ。」


「試供品、ね。」


ルミナは扇子を軽く開閉しながら、静かに聞いている。


「問題はその後よ。翌日、キハーダ家に『本注文用のカタログ』が届いたの。これを気に前当主夫人は毎日、商会に通い様々な商品を購入しに足を運んだのよ。」


「……それで?」


ルミナは扇子を軽く開閉しながら、静かに促した。


レイナは書類の端を指で叩き、声を落とした。


「問題はその『カタログ』の中身よ。見た目は立派。価格も市場相場より少し安いくらいに設定してある。だが、実際に届いた商品は――」


彼女は机の1番下の大きい引き出しから、小さな布袋を取り出した。中から出て来たのは、錆びついた調理用の鍋と、色の褪せた布切れ、そして中身がほとんど空の薬草瓶だった。


「これが、キハーダ家が『高級調理器具セット』として受け取ったもの。鍋は薄くてすぐに穴が開き、布地は洗濯1回でほつれ、薬草は効き目などまったくない安物。それなのに、請求書には『特上品』としての高価な値段が堂々と記されていた。」


アリッサが小さく息を呑む。


「た、高いお金を払って、こんなものを……。」


「ええ。しかも前当主夫人は、息子の当主に相談せず、自分の判断でどんどん注文を重ねた。『良い物を安く買える』と信じ込んでいたらしいわ。結果、キハーダ家の私財からすでに金貨300枚以上が消えている。さらに、来週には『特別会員限定の大型注文』が控えているとか何とか。」


レイナは書類をルミナの前に滑らせる。


「これが、ヴェルナー商会の取引履歴の写し。私が独自に集めたものよ。キハーダ家以外にも、既に3家が同じ手口で被害を受けている。共通点は――対応したのが当主ではなく、高齢の夫人や後妻ばかりだったこと。」


ルミナは書類に目を落とした。翡翠色の瞳が、静かに細められる。


「……高齢者ばかりを狙った、典型的な販売詐欺ね。無料の試供品で信用を得て、カタログで欲を刺激し、蓋を開ければ実物は粗悪品。請求書だけは立派に作ってある。逃げられた時点で、被害者は『自分の判断ミス』だと諦めやすい構造。」


「その通り。しかもヴェルナー本人は、表向きは『正規の商会』を装っている。王都の商業組合にも仮登録してあるし、倉庫も表向きは借りているだけ。下手に動くと『商取引のトラブル』で片付けられかねないわ。」


レイナは腕を組み、ルミナを見た。


「其処で貴女に白羽の矢を立てたの、ルミナ、この事件を解決してくれる、まさか出来無いとは言わないわよね?。」


「お、お嬢様?」


書類を目に通し終えたルミナは、目を瞑り、一息だけ深呼吸する。


「__……ふぅ、高齢者ばかりを狙う販売詐欺、知ってますかレイナ?私、自身の身体に異物が出来ると、膿を絞り出すまで身体が痒いてしまうんですのよ。」


ルミナはわざと自身の左腕の肌を軽く右指で掻いた。爪の先が白い筋を残す。翡翠色の瞳は、すでに冷静な計算を始めている色だった。


「……つまり、貴方が『痒み』を我慢できない、というわけね。」


レイナは呆れたように息を吐き、机に肘をついた。


「ええ、この依頼の解決、受けさせて貰うわ。だって、こう言う膿の絞り出しは、害が出る前に絞り尽くさないと。」


「お嬢様、早速行うのですね。」


「アリッサ、一度屋敷に帰るわよ、膿を絞るには、準備が必要だから。」




*



中級貴族、キハーダ家の屋敷1階の来客室にて。現在、室内は重い空気に包まれていた。


「………。」


「うう…。」


方やキハーダ家当主のロベルト・キハーダ。向かいに座るは来客にして上級貴族ヴィクトリア家の令嬢、ルミナ・ヴィクトリアとそのお付きのメイドの2人のみ。


中級貴族であるロベルトは今、プレッシャーで押されていた。それもそうだ。いきなり何のアポイントもずに上級貴族の令嬢、極悪令嬢と恐れていたルミナの突然の来訪にロベルトは震えながら考えていた。


自(・)分(・)は(・)彼(・)女(・)や(・)ヴ(・)ィ(・)ク(・)ト(・)リ(・)ア(・)家(・)に(・)何(・)か(・)し(・)た(・)の(・)か(・)と(・)。


震えながらロベルトは、来客に対しての愛想笑いでルミナに対応する。


「お、驚きました…。ま、まさか上級貴族であるヴィクトリア家のルミナ様が、御自ら当家に来られるとは、些か何の準備もせず申し訳有りません。」


「謝罪は結構よ、それより、奥方様とお母君様は在宅では無いのですわね。」


「え?あ、は、はい…。家内と母は現在、家の用事で出掛けております。その、母があの様な事があって以降は、家内か使用人の誰かと付き添わないと外出は、させられなくなりました。母がまた『ヴェルナー商会』に通うのを、止められずに……。」


ロベルトは言葉を濁し、視線を泳がせた。額には薄い汗が浮かんでいる。


「止められなかった、ですか。」


ルミナは扇子を軽く開閉しながら、静かに繰り返した。翡翠色の瞳が、ロベルトを射抜くように見つめる。


「ロベルト・キハーダ様。貴女の御母君は、すでに金貨三百枚以上を、粗悪品のために費やしておられます。来週には『特別会員限定の大型注文』が控えているとか。その額は、さらに倍以上になる可能性が高い。」


「っ……!ど、どうしてそれを……!」


「私が知る必要があったから、知っただけですわ。それより、お聞きしたいことがあります。」


ルミナは扇子を閉じ、机の上に置いた。金属の感触が、静かな来客室に微かな音を立てる。


「御母君様が『ヴェルナー商会』に通い始めたきっかけ。そして、その商会の代表――ヴェルナーなる男が、どのような人物か。知っている範囲で、全て教えて下さいませんこと。」


ロベルトは唇を噛んだ。隣に座るアリッサが、小さく息を呑むのを感じる。主人の声は穏やかだが、その奥に凍てつくような意志が宿っている。


「……母は、父が亡くなってから、家のことに口を出せなくなりました。私が当主になってからも、母は『自分の判断で良い買い物をしたい』と、私や妻に内緒で動くようになったのです。ヴェルナーと名乗る男が来たのは、1週間前。礼儀正しく、商品の説明も丁寧で……母はすっかり気を良くしてしまいました。母からしたら、良き話相手だと思ったのでしょう。」


「試供品を受け取ったあと、カタログが届き、毎日のように通うようになった。それは把握しています。問題は、ヴェルナー本人の人となりですわ。」


「……確か、眼鏡をかけた、40代半ばくらいの男です。背は高くなく、物腰は柔らかい。だが、目が……。」


ロベルトは言葉を選びながら、続ける。


「母が注文を重ねるたびに、その目が、どこか満足そうに細められるのを、使用人が見たと申しておりました。『また引っかかった』というような、そんな目だったとか。」


ルミナの口元が、わずかに吊り上がる。


「『また』、ですか。すでに他の家でも、同じことを繰り返していると自覚しているわけね。」


「は、はい……。母を止めようとしたのですが、母は『ロベルトは私を信用していない』と逆上してしまい……。家内も、母の機嫌を損ねるのを恐れて、強く言えなかったのです。」


沈黙が落ちる。


ルミナは椅子の背もたれに体を預け、窓の外を一瞥した。午後の陽光が、庭の木々を淡く照らしている。穏やかな景色とは裏腹に、この屋敷の奥では、静かに膿が溜まっている。


「分かりましたわ。」


彼女は静かに立ち上がった。アリッサも慌てて立ち上がる。


「この1件、ヴィクトリア家令嬢たるこの私にお任せ下さいませんこと?」


その後、キハーダ家を後にしたルミナは、馬車の中で静かに扇子を開閉していた。アリッサが恐る恐る口を開く。


「お嬢様……本当に、お一人で?」


「ええ。レイナには『証拠を集めている』と伝えてあるわ。騎士団を動かすにはまだ材料が足りない。それに――」


翡翠色の瞳が、窓の外の夕暮れを捉える。


「高齢者を食い物にする連中のお顔がどんな顔なのか、逆に興味は湧きましたわ。」


アリッサは小さく息を呑んだ。主の口調は穏やかだが、その奥に昨夜の今までの悪徳貴族たちを沈めたときの、あの凍てつく意志が宿っている。


「さて、アレックス、エレン。」


ルミナは自分達2人の隣に向かい合いながら座ってる執事とメイドに声掛ける。


執事のアレックスと、メイドのエレン。

この2人はヴィクトリア家に仕える使用人にしてルミナ直属の工作員でもある、情報収集と追跡、偵察のエキスパートだ。


キハーダ邸に寄る前に、ルミナはこの2人にヴェルナー商会に関しての情報収集を命じ、偵察任務に向かっていたのだ。


「ヴェルナー商会の内部状況を報告なさい。」


アレックスが先に報告をする。


「はい、店舗の方は昨日のままで御座います。ヴェルナー商会は、品出しされた全ての商品は各限定数十で構成されており、商会が全て完売すると颯爽に店仕舞いを行い、別の空き店舗へと移動する仕組みとなっております。」


「移動店舗ね。」


ルミナは扇子を軽く開閉しながら、アレックスの報告を反芻した。


「店仕舞いのタイミングは?」


「完売から半日以内です。早ければ数時間で次の空き店舗へと移ります。現在の店舗は商業街の東端、旧織物問屋の跡地を間借りしている状態です。」


エレンが静かに続けた。


「倉庫の方は別です。昨夜お嬢様がご覧になった西市街地の路地裏倉庫が、実質的な拠点になっております。表向きは『一時保管用』とされていますが、実際には粗悪品の仕分けと、次の標的リストの作成が行われています。」


「はい。高齢の夫人や後妻で、当主の監視が緩い家を優先的に抽出しています。すでに次の候補として、中級貴族の幾つかリストアップされておりました。」


ルミナの翡翠色の瞳が、わずかに細められる。


「良く集めましたわね、ではお二人は引き続き、商会の監視と尾行を。」


『はっ。』


アレックスとエレンの2人は馬車から降りて、引き続きヴェルナー商会の監視へと向かったのだった。馬車内にてルミナとアリッサの2人だけになると、ルミナは御者に出発の命令と次の準備をアリッサに伝え命じた。


「出発を、アリッサ、到着までに支度の用意をなさい。」


「い、今から行うのですか!?しかしお嬢様、こう言う事は一度お屋敷にご帰宅をしたから__」


「アリッサ。」


瞬間、威圧の込めた呼び掛けが放たれ、アリッサの身体を瞬時に怯ませ、ビシッと姿勢を硬直させる。ルミナは続けて言った。


「私は一度命じた事は二度言う事は疎か、変える積りも曲げる事も一切無いわ、それに貴女も知ってるでしょう?極悪令嬢は何者にも化(・)け(・)る(・)事も出来ると。」


「か、畏まりました!!」


アリッサは瞬時に馬車内の窓のカーテンを全て閉めると、直ぐ様にルミナの着用してる愛用の深緑色の豪華なドレスを脱がし、旅行鞄から青のドレスと青のキャペリンハットを用意する、ガタガタと車輪が街道で揺れるも、アリッサは体勢を崩さずに素早く着替えさせる。


目的地であるヴェルナー商会の店舗が見えて来ると、ルミナの着替えを済み終え、仕上げとしてルミナの唇に口紅を細かく丁寧に塗り込む。


到着とすると、ルミナ自ら、首飾りとキャペリンハットを身に着け終えると同時に、アリッサが馬車の扉を丁寧に開け、青いドレス姿のルミナが降りて来る。


「さぁ、敵城視察と参りますわよ、アリッサ。」


「は、はいっ!」


蒼色の貴婦人へと化けた翡翠色の極悪令嬢は、商会へと向かって歩き出したのであった。

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