46話 誕生パーティー
執筆が進まず投稿が遅れました。
お待たせしました、今週分の投稿です。
「そう言う事で、プリセラちゃんの誕生パーティーに招待されたよ」
午後はクエストを受ける日だったので、リンと合流してゴブリン退治をする為に、その住処に向かっている。その移動途中でプリセラに誘われた経緯をリンに説明した。
「へー、アミルや師匠って凄いね。普通わたし達は呼ばれないし、招待されても困っちゃうからごめんなんだけどね」
リンは話の内容を聞いて、どこか他人事のようにしている。
『何を言っているんだ。猪娘も誘われているんだぞ? まあ、こいつが行くと返事をしたから、お前も参加は確定だけどな。そう言えば父親に報告するって急いで帰って行ったから、今頃参加名簿に名前が入っているはずだぞ』
その言葉を聞いて、リンは立ち止まって驚愕していた。
「どうしたの、リンちゃん。なんか顔色が悪いよ?」
「な、な、な、な、なんでわたしもプリセラの誕生パーティーに参加する事になってるのよ!?」
「え? お友達の誕生日のお祝いだもの。あれ、もしかして何か予定が入ってた?」
「違うわよ! 誕生パーティーなんでしょ? しかも親から呼ぶように言われたって事は、そのパーティーを開くのは両親なのよ!?」
いまだ興奮が収まらないリンを見ても、アミルはのほほんと的外れな返事をする。
「そうだと思うよ。わたし、お友達の誕生日をお祝いするのって始めてだから、すっごく楽しみなんだ」
生まれて初めての事に満面の笑みで応えるアミルを見て、リンは頭を抱えて座り込んでしまった。
『どうしたんだ? 腹でも痛くなったか?』
「アミル……師匠……もしかして2人共プリセラの実家の事を知らないの?」
「そう言えば聞いた事がありませんでしたね」
『そうだな。まあ、わざわざ聞くような事でもないしな』
2人の知識不足にため息を吐くリン。雪兎とアミルは理由が分からず、顔を見合わせて不思議がっていた。
「プリセラの家はね。この町でも5本の指に入るほどのお金持ちの貴族なの」
『それがどうしたんだ? 別に金持ちの貴族って言っても、たかがガキの誕生日会だろ?』
日本での一般常識しか持たない雪兎にとって、貴族という言葉は知っていてもそれがどれほどの者かは分かっていない。
アミルの育った村では村長ぐらいしか偉い人は知らないので、貴族と言われてもピンとこなかった。
「まさか2人の世間知らずがここまで酷いものだったなんて……」
リンは今までで一番深いため息を吐いた後、キリッと雪兎達の方を見て説明を始める。
「いい! 貴族ってのは大小あるけど、わたし達一般人が逆らったり無礼を働いたら無条件で死刑に出来るだけの権力を持った人達なの。例えこっちが悪くなくて理不尽な行いをされても、権力者が証言した事が事実になる世界……それが貴族に与えられた権力の強さなの。もちろんその家の力の大きさによって無茶な事もあるけど、プリセラの家ぐらい大きいと少しの因縁でも町に住めなくなる程よ」
『そんな漫画みたいな横暴が通じる訳がないだろ』
「そ、そうだよ。それにプリセラちゃんがそんな事をする訳ないよ」
「確かにプリセラ本人がそんな事をするとは思っていないわよ。でもね、わたし達は両親主催の誕生パーティーに参加するの。つまり多くの貴族も参加するって事なの。もしそこで他の貴族に無礼を働いたら、下手すれば死刑って事もありえるわ」
真剣な目で話すリンはふざけているわけでもなく、冗談も言っていないと分かる。つまり学園でプリセラが恐れられていたのは、その実力の高さだけではなく、家柄も問題だったのだ。
「それに、わたし達ってパーティーに着ていくドレスなんてないわ」
「ドレス? え? この服じゃ駄目なの?」
「それはどちらかと言えば戦う時の服よ。それにアミルって数着しか服を持っていないじゃん。もうその服も綻びが見え始めてるよ」
今まではモンスターの攻撃を受ける事がなかったが、学園に入ってから訓練で怪我をする事もある。そんな状況で最初に買った服が綺麗なままであるわけがないのだ。
『まさかたかがガキの誕生日会で正装が必要になるとは……』
「わたし達……昨日の魔導所の閲覧にお金を使っちゃったから、そんな服を買うお金がないですよね?」
本来ならお金に余裕が出来てから魔導書の閲覧を行うのだろうが、早く魔法を覚えたくて雪兎の独断で昨日にしてしまったのだ。
もちろん全財産を使った訳ではなく来月分の授業料は残っているのだが、その支払いが3日後なので手を出す事は出来ない。
つまり今自由に使えるお金はほとんど無いと言えた。
『分かっている。金に余裕を持たせなかった俺のミスだ』
「違います。わたしも止めなかったし、何も知らないのにパーティーに参加するって言っちゃったから……」
「わたし、まだ貯めたお金を使ってないから貸すよ」
この学園に来てからのクエストでの収入は、アミルとリンで別けているので残りの残金を大体理解していた。高いドレスを買うのは無理でも、最低ランクの物なら何とか二着は買い揃えれるだろうと提案してくれたのだ。
その気持ちは嬉しく感じたが、自分のミスで他人に迷惑を掛けるのは雪兎のプライドが許さなかった。
『お前達、今週はランクの高いクエストを受け続けるぞ。誕生パーティーに行くのに必要な物はドレスだけではない。お祝いの品、プレゼントも用意しないと格好がつかないだろ』
「そうだ。高い物は無理でも、せめて変に目立たない物ぐらいは用意しないと」
リンもプレゼントの事は完全に失念していて、思い出したようにしていた。
「プレゼントってどういうのが良いんだろう。わたし、人にプレゼントってした事がないから、喜ばれる物って分からないよ」
『普通の金持ちの娘が相手ならたぶん宝石なんかが良いんだろうが、俺達に買うだけの資金はない。……そうだな、たしかクエストの中にダンジョンで現れるモンスターの素材を求める物があったな。授業で聞いた話では、ダンジョン内で得た宝は自分の物にして良い筈だ。そこでドレスを買う資金集めと、プレゼントをまとめて手に入れるぞ』
この地にアルティア学園が建設された理由の一つに、町の中心にあるダンジョンが上げられる。このダンジョンはモンスターが大量に生まれ続ける不思議な場所なのだ。
そんな危険な場所に町を建てるなんてと思うだろうが、ダンジョン内の生きているモンスターは何らかの力によって外に出る事が出来ない。だからモンスタートレーナーが仲間にする事も出来ず、単純にレベル上げと経験をを積む事が目的となる。
ただ極稀に自然に生まれる宝が転がっている。それは低い階層に行くほど生まれ易いが、モンスターも強くなるので危険度が跳ね上がっていく。
「で、でも、ダンジョンに入るのは2年生になってからって先生が……」
『授業ではそうだろうが、俺達はクエストを受けて向かうんだ。とくに問題はないはずだ』
クエストには学年の隔たりがないのだが、受付の先生の判断で決まる。ただ判断材料として学生証に記録されているクエスト達成率と内容を参考にするのだ。
「君達は何を考えているんだ。今年入学した生徒が、しかも2人のチームで<修練のダンジョン>に挑むなんて無謀すぎる。もっと普通のクエストを数多くこなしてからにしなさい」
翌日、早速ダンジョン関係のクエストを受けようとしたが、経験不足で駄目だと怒られてしまった。




