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裏話 アミルの気持ち その2

 ついに冒険者ギルドに着いてしまいました。案の定、わたしのせいで争いが起こってしまいました。でもビクビクするわたしとは違い、ユキトさんはドンと構え、少しも引かずに手を出して来た男の人を返り討ちにしてしまいます。トドメを差そうとするユキトさんを抱き上げたので、これ以上の血を見ないですみそうです。争いはギルドマスターが間に入ってくれたので、無事に収まりました。

 ギルドマスターにはその実力を認められたので、無事にわたしが冒険者になる事が出来ました。


 

 さっそく依頼を受けます。ファイアフォックスの討伐ですが、ギルドマスターに準備がないのに無謀だと、勉強をしてから依頼を受けろと怒られてしまいました。確かにわたしにはモンスターの知識がありませんし、怒られても仕方がありません。


 でもユキトさんに余裕だから受けろと言われ、受ける事になりました。



 道のりは厳しかったけど、ユキトさんは言葉通り次々とモンスターを倒していきます。少しも危険を感じません。

 本日最後の狩りと決めていた場所に着くと、1匹のファイアフォックスが他のファイアフォックスに苛められているように見えます。なんだか自分を見ている……そんな気がします。



「なんだか可哀想。ユキトさ……」



 ユキトさんはやっぱり優しい方です。モンスターとはいえ苛められている子を見て怒り、逃げ出したファイアフォックスを追いかけて行きました。わたしは傷付いた子の看病をしませんと。


 傷は酷いです。ユキトさんから預かっている薬草が効けば良いのですが……。少しするとユキトさんが戻ってきました。この子もモンスターだから、無警戒に近づくのは危険だと怒られました。でも治療を行う行為には何も言わずに認めてくれました。


 この子も意識も戻ったので、わたし達は帰路につきました。でも、あの子も着いてきます。



『もしかして、お前の事を主として認めたんじゃないのか? 一応、お前はモンスタートレーナーだからな』


「え? ……そうなの?」



 手を差しだすと、優しく舐めてくれました。すると不思議な現象が起こります。ユキトさんと主従契約を結んだ時に感じた、何かが繋がる感覚。たぶんこれが契約したと言う事なんでしょうね。



 名前もユキトさんがタマモと名付けてくれ、怪我も魔法で治してくれました。凄いですね。わたし、魔法って始めて見ましたよ。それに感動していると、更に凄い事が起こりました。


 ユキトさんがブレスレットをプレゼントしてくれたんです。男性から女性に渡す腕輪は、結婚の約束をする意味があります。わたしが思い、愛し愛されたいと願っていた夢の1つが叶いました。一生一緒だとも言ってくれました。


 わたしは疲れも忘れて浮かれてしまいました。宿に戻ると、汚れているタマモちゃんの為にもすぐにお風呂に入ります。ユキトさんも一緒です。少し恥ずかしさはありますが、主で夫でもあるユキトさんに裸を見られるのを気にしてはいけませんね。

 まだ子供のわたしに手を出す事はありませんでしたが、関係が1歩前進したので嬉しいです。


 タマモちゃんもお風呂が気にいったようで、気持ちよさそうにしています。わたし達って皆お風呂好きなんですね。たぶんこれが幸せな家族の形なんでしょう。一緒にいるだけでとても安心出来て、とても心が落ち着く不思議な気持ちです。




 翌日はわたしとタマモちゃんの実力を見たいとの事で、ブルーウルフと戦いました。


 ……とても不甲斐無い結果でした。モンスターの敵意を間近に感じ、噛みつかれると感じると、もうまともに考える事も出来ないほど緊張して震えが全身を襲います。タマモちゃんを避けてわたしと向き合ったら、もう立ってはいられません。


 このままではユキトさんに見限られてしまう。そう頭で分かっていても、体が言う事を聞いてくれません。



 帰り道、わたしは怖くて仕方がありませんでした。こんなわたしを鍛えても先が見えないので、見捨てられるかもしれないからです。そうなったらタマモちゃんともお別れをしないといけません。あんな生活にこの子を巻き込む訳にはいかないですから。


 でもユキトさんはそんな事はしないと言ってくれました。それどころか一生俺のものだとも言ってくれました。やっぱり昨日の事は夢ではなかったんですね。わたしもその優しさに甘えていないで、少しでも早く戦闘になれないといけません。妻として、夫の支えになれるようになりたいです。




 今度の依頼は少し遠出になるようです。洞窟での戦いを終え、目的地の湖に着くと他の冒険者の方々に会いました。全員女性の5人組だったので、少し安心しました。


 リーダーはリニアさんと言い、面倒見の良い優しい方でした。夜は交代での見張りをするようで、前日、ユキトさんがずっと番をしていたので申し訳なかったので、これで少しは寝てもらえると思うと良かったと感じました。


 目的のモンスター。キルアリゲーターをリニアさん達も狙っていたようで、その討伐方法を見学させて貰える事になりました。その間のわたし達の役割は、ユキトさんのスキルで周囲に他のモンスターが近づいて来ないか監視する事です。

 実質、わたしの仕事はありません。



 1匹目のキルアリゲーターとの戦いが始まってしばらくすると、離れた所からもう1匹が近づいて来ました。

 リニアさんも困っていたので、ユキトさんの指示でタマモちゃんに目隠しの火の壁を作ってもらいます。その間にユキトさんがあっさりと倒して吸収してしまいました。5人組の冒険者より、ユキトさん1人の方が強いって凄い事ですよね。


 そしてそのキルアリゲーターに追いかけられていたモンスターに気付きました。どうやらユキトさんの強さに感動したようで、仲間になりたそうに可愛くハシャイで後ろを着いて歩いています。


 あ、転んじゃった。


 わたしはすぐにその子のそばに駆け寄り、少し血が出ている場所に薬草を当ててあげました。なんだかタマモちゃんが仲間になってくれた時のような目でわたしを見つめている気がします。



『今度はお前の仲間になりたがっているようだな』



 わたしの仲間になったら苦労するよ。そう告げてあげても、この子は悩む素振りも見せずに真剣な目で見つめています。わたしの手と触れあうと、契約の光と繋がる感覚が感じられました。



 この子はエンペラーペンギンと言うらしく、水を放つ事が出来るスキルを持っているようです。名前もユキトさんにつけてもらい、ミズチちゃんに決まりました。

 ミズチちゃんも気にいったようで嬉しそうにしています。


 その後のリニアさん達との話で、わたし達のモンスタートレーナーに対する知識不足が露呈しました。リニアさん達はその日の内に町に向かい始めるとの事でしたが、わたし達はもう一泊して翌日に町に帰る事にします。次に行うのは情報収集らしいです。知らない事が多すぎる状態で旅を続けるのは危険なのは分かりますので、わたしも反対をせずに素直に頷きました。


 それともう1つ。わたしとタマモちゃん達のレベルが上がらない問題が出てきました。ミズチちゃんも加わり戦いにも安定感を感じられるようになったのですが、町に帰るまでの3日間、レベルが2のままで一向に成長する様子が見えなかったのです。


 ユキトさんの話ではもうレベルが上がってもおかしくない程のモンスターを倒しているようなのですし、タマモちゃん達に原因があるとは思えません。……そうなると悪いのはわたしだと思います。ユキトさんは明確な理由があるのだろうと言っていましたが、自分のせいかもしれない事でタマモちゃん達の足を引っ張ってるかもと考えると、申し訳なくてこの子達の顔もまともに見てあげる事が出来ませんでした。



 町に着き、ギルドマスターに話を聞くと、モンスタートレーナーのスキルの影響で経験値を分散してしてしまうので、どうしても他の人より成長が遅いみたいです。強い相手を倒せばレベルも上がりやすく、それを行う方法がモンスタートレーナーにはあるようなのですが、ギルドマスターも詳しい方法は知らないようです。


 そこで1つの希望が差し出されました。国が運営している冒険者を鍛える学校があるようです。そこに入学出来れば戦う技術を教えてもらえそうなんですが……わたしは怖いんです。


 もし、そこに入学しても成長出来なかったら。お金はユキトさんに頼りっきりなのに、学費まで出してもらって何も得る事が出来なかったら。今は優しいユキトさんでも、一生俺の物だと言ってくれたユキトさんでも、呆れて捨てられるかもしれない……わたしは自分が一番信用できないのかもしれません。



『そんなお前にも着いて来てくれたモンスターが2匹もいるんだぞ。ビビって何もしないで、そいつ等も路頭に迷わすつもりか?』



 それも分かっています。でもこのままFランクの依頼を受け続ければ、最悪タマモちゃん達の食費は稼ぐ事が出来るはず。


 駄目です……やっぱり考えが後ろ向きになってしまいます。こんな自分は嫌で、変えて行きたいと思っているのに。



『俺は前世の自分に対する記憶がほとんど失っている』



 ユキトさんは前に進めるように話をしてくれます。



『━━記憶を呼び起こすキッカケになるかもしれないんだ』



 俯き、立ち止まって泣く事しか出来ないわたしにユキトさんは、学校に行くのは自分の為でもあると言ってくれました。だからどうなっても責任を感じる必要はないと。

 半分以上はわたしを励ます為の言葉ですが、その中に自分の前世の記憶はやはり気になっている様子が見え隠れしました。


 わたしは思い出しました。わたしはユキトさんの妻として、支える者として立ち止まっていては駄目なんだと。ユキトさんが記憶を取り戻したくてその協力が出来るなら全力で力を貸しますし、町中で見たい物があったらわたしはその横をずっと着いて行きます。

 たとえわたしの力不足でユキトさんに必要ないと言われても……ううん、きっとわたしなんかじゃユキトさんの相応しい相手にはなれない。だってユキトさんは凄く早いペースで強くなりますし、とても優しい方です。だからもっと相応しい人が必ず現れるに違いありません。


 だからその時が来たら笑顔で別れます。ユキトさんの迷惑になりたくはありませんから。……でも、その時が来るまでは一緒に歩かせてくださいね。




 わたしは笑顔でユキトさんの顔を見て、一緒にギルドマスターに学校の情報を聞きにいきました。



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