↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透ける約束は片結び  作者: 檻 依舞 (おりーぶ)
【第一章】はじまりの片結び

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/46

<第六足>温もり

「大阪って……あの大阪?」


「そこ以外、あるん?」


思わず聞き返してしまう。


昨日出会った少女──如月夢玖。


彼女は、大阪から福島まで歩いて来たという。


「……宿とかは?」


「最初はホテル泊まっててん。でも、お金なくなってからは……カプセルホテルとか、公園。」


「……え。」


思わず言葉を失う。


「ご、ごめん。」


夢玖は小さく首を振った。


「ええよ。」


その笑顔が、かえって胸を締めつけた。


ホテルに泊まれなくなり、公園で夜を明かす。


それを当たり前のように話す彼女が、どれだけ過酷な日々を送ってきたのか。


少しだけ想像できた。


「……今夜、俺ん家来る?」


夢玖は目を見開く。


「なんで?」


「変な意味じゃない。」


慌てて手を振る。


「恋人と同棲してるから安心して。」


夢玖は黙る。


「……今日、行く場所ないべ?」


少しの沈黙。


やがて、小さく頷いた。


「……うん。」


「よし。」


俺はスマホを取り出し、舞姫へ電話をかける。


「もしもし?」


『もしもし、希望君?』


「あのさ……女の子を家に連れて帰ってもいい?」


数秒、沈黙。


『……浮気?』


「違う違う!」


思わず声が裏返る。


「家出してきた子なんだ。事情があって……今日だけでも、ご飯食べさせたくて。」


舞姫は少しだけ考えてから笑った。


『そっか。分かった。連れておいで。』


その一言に、肩の力が抜ける。


『今日は茄子のお味噌汁に、鯖の塩焼き、だし巻き卵、それとほうれん草の胡麻和えだよ。』


「最高じゃん。ありがとな。」


* * *


車の中。


夢玖は窓の外を眺めていた。


「彼女さんって、どんな人なん?」


「舞姫?」


少し笑う。


「料理が上手で、優しくて、看護学生。」


「看護学生……。」


夢玖は少し考えてから首をかしげた。


「怖くない?」


「え?」


「なんか……厳しそう。」


「ははっ。」


思わず笑ってしまう。


「全然。むしろふわふわしてる。」


「ふわふわ……。」


そんな話をしているうちに、マンションへ到着した。


「ただいま。」


「おかえり、希望君。」


玄関には舞姫が立っていた。


夢玖を見ると、にっこり微笑む。


「初めまして。煌星舞姫です。」


夢玖は少し緊張しながら頭を下げた。


「……如月夢玖。」


「夢玖ちゃん。」


舞姫は自然に笑う。


「遠くから来たんだって?」


「……大阪から。」


「えっ!?」


舞姫は目を丸くする。


「歩いて。」


その一言で、空気が静かになった。


舞姫は驚きながらも、それ以上は何も聞かなかった。


「まずは、お風呂に入ろっか。」


その言葉だけだった。


* * *


「着替えはこれ、どうぞ。」


舞姫はパーカーとタオルを差し出す。


「ありがとう……。」


「ゆっくり温まっておいで。」


夢玖は小さく頷き、浴室へ向かった。


* * *


しばらくして。


「お風呂ありがとう。」


髪を乾かした夢玖が、少し照れくさそうに出てくる。


頬には赤みが戻り、表情もどこか柔らかい。


「さっぱりした?」


「……うん。」


舞姫は嬉しそうに笑う。


「じゃあ、ご飯にしよっか。」


食卓には温かい料理が並んでいた。


「今日は夢玖ちゃんもいるから、とんぺい焼きも作ってみたの。」


夢玖は料理を見つめたまま動かない。


「……食べて、ええん?」


「もちろん。」


舞姫は優しく笑う。


「みんなで『いただきます』しよう。」

第六話(第六足)「温もり」読んで下さり、ありがとうございます。


今回は、夢玖と舞姫が対面、そして夢玖が希望達のマンションで一夜明かすシーンを描きました。


次回またお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。