<第十九足>新入りな私①
ゴールデンウィーク明けの初の登校日。
世間は春から初夏へと変わっていた。
「……今日が初めて、か」
「夢玖ちゃん。今日はお店の人が迎えに来るみたいよ」
私は机に突っ伏し、蹴伸びをする。
「そうなん…?」
「えぇ。本当なら希望君が送り迎えなんだけど、急遽勉強会入ったみたいなの」
「お店の人……店長なんかな?」
そういえば、今日はアルバイトで初出勤の日。
今日どうお店に向かうか聞いてなかったが、放課後店の人が私を迎えに来るらしい。
「誰が来るとかは聞かなかったわね…ゴールデンウィーク最終日にアルバイト契約したから、アルバイト届けも提出済よ」
「行動早ない…?」
「効率的に動くためにはこうするものよ」
そういえば、ゴールデンウィーク最終日に書類を書いた。
私名義の通帳も、愛姉と院長が先を見通して作ったらしい。
「アルバイトか……怖いなぁ」
「大丈夫よ。周りの大人が守ってくれるから」
そして、気付けば放課後になっていた。
****
「夢玖ちゃん、今日初めてのアルバイト?」
「そうなんよ。店の人が迎えに来てくれるらしいんやけど…」
「絶対制服似合う!♡」
「まだ着てへんで…?」
昇降口で夜海と仁愛と話している。
こうしてみると放課後友人と話す時間は貴重なのかもしれない。
しかし、次第に昇降口がザワついていく─。
「ねぇ…あの人不審者かなぁ?」
「怖い…」
「先生呼ぶ…?」
ザワついてる原因に視線を移すと、校門付近で全身真っ黒で銀髪の男が立っていた。
しかも─サングラスして喫煙までしていた。
「ふぅ……来ねぇな」
「ねぇ…あの人怖くない?」
「うん……反社会的なアレかなぁ…?」
周りから怖がられるも、次第にこちらに気付いて、
近付いてきた。
周りは自然と道を開け、私の目の前に立った。
「お前が如月夢玖か」
「……はい」
「行くぞ」
私の手を引いて歩こうとするも─
「ちょ……あの、あなたは?」
「俺は目白福吉。スポーツ用具店店員だ。頼まれてお前に迎えに来た」
名乗る。目白福吉。
怖い雰囲気ではある。
「………」
夜海は一目見ては逸らす。でも仁愛は違う。
寧ろ福吉さんのことをじっと見てる。意図は分からない。
「友達も出来たようだな。時間も迫ってるから行くぞ……その、騒がせたな」
「また明日な、二人とも」
私は福吉さんと校舎を後にするも、周りにまた沢山の声が戻っていく。
車に乗り、スポーツ用具へと向かう。
****
店に到着し、用意された制服と鞄を身に付ける。
「おはよう、如月さん」
「おはようございます…」
「福吉さん、急遽なのに助かったわぁ…今度飯奢るよ」
着替えてバックヤードに戻ると、希望さんも来ていた。
店長も、制服が似合ってると言ってくれた。
「制服サイズ大丈夫そうだね。これが社員証で…これがネーム。店に立つ時は首から提げるように」
「…あ、ありがとうございます」
店長が、ネームを渡される。
それには、如月と、自分の苗字が乗せられていた。
「髪も…結ぼうか」
「?」
「ええと…関西ではなんて言うの?髪まとめるの」
首からネームを提げ、店長から髪をまとめるよう言われるのだが、方言なのか私は理解出来なかった。
「括る。紐を結ぶ時も同じです」
「そっか…なるべく関東と関西の言葉の違いを覚えていった方がいいかな」
「はい…」
それでも、今まで見てきた大人の目つきとは違う。
私を守ろうとしてる目だった。
ここなら、無理せず─そして私らしく、
色んな経験が私を待っている気がするから。
……To be continued
第十九足(第十九話)を見て下さり、ありがとうございます。
今回から夢玖のアルバイト初出勤をお送りします!
それではまた次回お会いしましょう




