<第十三足>新しい約束
高校生活が始まって、一週間。
気が付けば私は、仁愛と夜海と一緒にいる時間が当たり前になっていた。
「ねぇねぇ、今度みんなで放課後遊びに行かない?」
「行きたい!」
「そういえば夢玖ちゃん、まだLINE交換してないよね。お昼休みに交換しよ!」
「……うん!」
移動教室へ向かう廊下を歩きながら、自然と笑顔がこぼれる。
今日は選択科目である簿記の授業。
商業実習室のある別校舎へ向かっていた。
「夢玖ちゃん、簿記は初めて?」
仁愛が尋ねる。
「学校では初めてやけど……舞姫姉が教えてくれてん」
「舞姫さんが?」
夜海ちゃんが少し驚いたように聞き返す。
「うん。毎日付き合ってくれてな」
そんな話をしながら歩いていると、商業科職員室前の掲示板が目に入った。
そこには数え切れないほどの賞状が飾られている。
「わぁ……」
思わず立ち止まる。
その中の一枚に見覚えのある名前があった。
『煌星 舞姫』
「日商簿記一級……!」
夜海が目を丸くする。
「一級って、合格率一割前後って聞いたことあるよ……」
「すご……」
私は少し照れながら笑った。
「教え方も、めっちゃ分かりやすかったで」
週末のことを思い出す。
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「仕訳は丸暗記じゃなくて、意味を考えるの」
舞姫姉はノートを指差しながら優しく説明する。
「会社のお金が増えたのか、減ったのか。それを考えれば答えは見えてくるよ」
「なるほど……!」
分からないところは何度聞いても、嫌な顔ひとつせず教えてくれた。
「(えぇ匂い…美人さん…それに…たわわ…胸…)」
気付けば夜遅くまで勉強していた。
でも正直、仕訳より舞姫姉の豊かな胸を見ている時間が微妙に長かったのは、言うまでもない─。
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「そのおかげで、日商二級レベルの問題も少し解けるようになってん」
「一週間で!?」
仁愛ちゃんが驚く。
「舞姫さん、すごすぎる……」
夜海ちゃんも感心したように頷いた。
「でも今週末は珠算と情報処理も教えてくれるらしいねん」
「えぇ!?」
二人は顔を見合わせて苦笑する。
「夢玖ちゃん、GW終わる頃には無敵になってそう」
その言葉に、みんなで笑った。
****
昼休み。
いつものように四人で机を囲み、お弁当を広げる。
夜海ちゃんがふと思い出したように聞く。
「夢玖ちゃんって大阪出身なんだよね?」
「うん。生まれも育ちも大阪やで」
「大阪の人って、お好み焼きでご飯食べるって本当?」
「ほんまやで」
私は笑いながら頷く。
「お好み焼き定食もあるし、たこ焼き定食もあるねん」
「えぇぇ!?」
仁愛ちゃんが驚いて目を丸くする。
「炭水化物と炭水化物じゃん!」
「関西では普通なんよ」
「すごい文化だ……」
夜海ちゃんも苦笑した。
その後も、
エスカレーターでは右側に立つこと。
丸いお餅を食べる地域が多いこと。
「マクド」と呼ぶこと。
関西ならではの話をすると、二人は何度も驚いていた。
「やっぱり地域によって全然違うんだね」
「まだ東北は慣れへんけどな」
私が苦笑すると、
愛先生が優しく微笑んだ。
「焦らなくて大丈夫。夢玖ちゃんのペースで、少しずつ慣れていけばいいの」
その一言だけで、不思議と肩の力が抜けた。
「そうだ!」
仁愛ちゃんが手を叩く。
「GW、お泊まり会しようよ!」
「いいね!」
夜海ちゃんも笑顔で頷く。
愛先生は少し考えてから微笑んだ。
「実は煌星家でお泊まり会をしようと思ってたの。二人も来る?」
「行きたい!」
「私も!」
私も思わず笑う。
「舞姫姉のご飯、ほんまに美味しいで」
「ますます楽しみ!」
窓の外では、桜が少しずつ若葉へ姿を変えていた。
もうすぐゴールデンウィーク。
高校生活で初めて迎える、大切な思い出が始まろうとしていた。
―To be continued.
第十三足(第十三話)をお読み頂きありがとうございます。
次回は、夢玖達が遊びに回ります。
久しぶりに希望登場します。
それでは次回またお会いしましょう。




